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最初の記憶

1番古い記憶は赤ちゃんの時だ。
仰向けのままだったから寝返り前だろう。

私はベビーベッドに寝かされていて母親が上から話しかけている。
「ママは○○だから、ちょっと待っててね」と優しく微笑んでる。
その笑顔のまま、ふすまを閉めて出ていってしまう。

私は心細くなって、行かないでほしいと強く願うがもちろん何もできない。
一体いつ戻ってきてくれるのか。
待つしかないというもどかしさ。

仕方なく頭上を見るとベビー用のモビールみたいなものがぶら下がっている。
オルゴールが鳴ってクルクル回るやつだ。
もう、とっくに見飽きている。
緑や赤のセルロイドでできた、ペラペラした鳥や動物が紐にぶら下がっているやつ。
何も面白くない。
こんなので喜ぶと思われてるんだなぁ、と言葉にならない感想を抱いていた。

永遠にも思える時間のあと、ふすまから母が顔を出した。
たちまち喜びと安堵感が湧いてくる。
母がそばにいてくれて初めて自分が完結するというような感覚だった。

ああ、それを安心と呼ぶのかもしれないな。

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