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わるいおとこ

「女がカラダを求めてもいいでしょ」
割り切ってないとやってられない
私を好きじゃないと知ってて
それでも会わずにいられないんだから

「ずるい男だね
最低だね
あんた可哀想」
そう友達に言われて
それでも好きだった

白く形の良い歯
無駄な肉のない背中
張りのある低い声
大きな瞳
あの人を形作るパーツはどれもたいそう美しくて
中身にそぐわない
無邪気な笑顔が
とりわけ残酷なくらいに綺麗

終わったらいつもすぐ寝ちゃう
横顔を
ずっとずっと見ていた
瞬きもしないで

夜だけ呼ばないで
頬をすり寄せないで
ひどい思い出百個は言える

ただひとときのシアワセが
私の理性を馬鹿にした
大嫌いなタバコも
許してしまうほど

馬鹿だな
馬鹿だなぁ
可哀想とか言われて
虚像に惨めにすがりついて
何になるって言うの
自分の腐った傷口抉り取って
正気になるように
熱湯消毒でもする?

愛されたわけじゃない
毒のように
体を回っていった思い出は
脳まで達してしまったから

取り返しがつかないんです
そういうことなんです




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