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SNSで傷ついた人の駆け込み寺になりたい。裁判例・体験談共有サイト「TOMARIGI」をつくりました。

SNSトラブルにおける裁判例と体験談の共有サイト「TOMARIGI」を、株式会社カヤックさんと一緒に作りました。ネットで誹謗中傷にあった被害者の方が、過去の裁判例のなかから自分が言われた言葉と似た裁判例を探すことができるサイトです。(例えば、「ブス」、などと言われたとしたら、同じ言葉を言われた人に対し、裁判所がどう判断したかがわかります)それを通して今後の対応の参考にしていただくのと、「裁判所が侮辱行為と判断したようなことを今回やられたのだから、傷ついた自分が悪いのではない」とわかっていただき心を癒やしてもらうことを、主な目的にしています。また、誹謗中傷にあたらなくても、LINEグループを外された、Twitterで友達に悪口を言われた、などの悲しい体験を匿名で書いて共感しあえる掲示板機能、無料で相談できる経産省や法務省掲載の窓口などの駆け込み先を一元化した対応例紹介ページも作りました。

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■開発の経緯

数年前よりSNSやコミュニケーションサービスを開発してきた立場から、SNSの誹謗中傷問題に対して何か自分にできることはないかとずっと考えていました。そんな折、Twitterで私に対しての誹謗中傷が、同じ匿名アカウントから複数回書き込まれているのを見つけました。あの、心臓がぎゅっと冷たくなるような痛みはなかなか忘れることができないものだと思います。画像を無断転載されているので消してほしかったのと、いつまで続くのかもわからず怖い気持ちもあり、どうしたらいいのかネットで色々と検索すると、その多くが「まずは弁護士に相談」するよう書かれていました。

私は訴えたいわけではなかったのですが、このような場合に他の方がどうしているのかを知りたい気持ちがあり、勇気を出して弁護士事務所さんに連絡をしました。すると、相談には当該ツイートを印刷したうえで直接訪問する必要があると言われ、もう見たくない書き込みを印刷し、時間を作って足を運ぶ過程でどんどん悲しい気持ちになってしまいました。

弁護士さんに相談した結果、過去に似た裁判例(画像の無断転載+同じ文言での容姿への侮辱がTwitterに複数回書き込まれた事例)に対し、裁判所が侮辱行為と認め、情報開示請求が認められた(先方の住所氏名などが開示された)事例があり、今回もかなり似た内容なので同じ結果になるであろう(おそらく相手の本名や住所が開示されるので、そこから慰謝料請求などの裁判に持ち込める)という説明を受けました。

このとき私は、「私がされたことというのは裁判所が侮辱行為であると判断したようなことなんだ」とわかり、傷ついた自分が悪いのではないと感じることができました。そんなことをされたのだから悲しくなってしまうのは当然だとわかって、少し救われた気持ちになりました。
しかしその情報を知るためには色々調べ、書き込みを印刷し、弁護士事務所さんまで出向かなければならず、手間と心労が大きかったです。
あとになって裁判例というのは本来、私たち一般人にも見る権利のあるものなのだと知り、それをわかりやすくまとめたサイトを作ろうと考えました。

■加害者になってしまう人を減らしたい

木村花さんの事件のあとで、「自分のせいで亡くなってしまったのかもしれない」「逮捕されるのが怖い」といった「加害者からの相談」が増加したという報道がありました。誹謗中傷の書き込みに対して複数の裁判例があるのだということ。結果的に自分の住所や氏名が相手に開示される場合があるのだということなどが広まれば、こういった加害者は減らせていたと思います。裁判を見据えてまで誹謗中傷を書き込みたい人はめったにいないはず。TOMARIGI立ち上げの背景には、加害者になってしまう人を減らしたいという思いも込めています。

■機能紹介:裁判例

弁護士事務所さんにご協力いただき、過去5年間を中心にSNSでの誹謗中傷に関する裁判例を抽出し、個人情報の特定を避ける表記にて要約して掲載しています。絞り込み機能によって、自分が言われた言葉と似た裁判例を探すことができます。専門用語をクリックすると解説が表示されます。

裁判例紹介

■共感しかできない掲示板機能

誹謗中傷にあたらないことでも、日々SNSを利用するなかで傷ついてしまう出来事はたくさんあると思います。LINEグループを外されたとか、誰かに悪口を言われたとか。部活動のみんなでTwitterをフォローしあって楽しんでいたある高校生は、部長の先輩に自分だけTwitterでフォローを外されてしまったことで、先輩に嫌われたんだと思い、部活に行くこと自体怖くなってしまったと語っていました。


実は私自身、仲の良い友だちにSNSでフォローを外されていたというだけのことで、とても傷ついてしまった経験があります。SNSの使い方は個人の自由ですし、たいしたことではないのかもしれない。でも辛いものは辛いのでどうしようもない。そんなときネットで色々と検索していたら、似た経験で傷ついている人の相談や書き込みがいくつか見つかり、「同じ思いをしている人もいるんだ」とわかると、少し心が癒やされるのを感じました。その人達にも「その気持ちわかるよ!」と言いたくなりました。しかし一方でQ&Aサイト等においては、そういった投稿に対してコメント欄で、投稿者を責めるような書き込みがついたりすることも少なくありません。
そこで、共感しかできない、コメントのできない体験談広場を作りました。

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他の人の書き込みに対して、その気持ちわかる、私は味方だよ、同じ経験をしました といった共感ボタンでのみリアクションができます。

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(現在の投稿は事前にアンケートで収集し、許可をいただき掲載しています)
書き込みはユーザー登録などナシで匿名でできます。つらい気持ちを乗り越えるきっかけがほしいときに、自分の気持ちを整理する意味でもここに書き込んで気持ちを少し落ち着けてほしいと思っています。
書き込みをしたときと共感ボタンを押したときにどうぶつが寄り添う数種類のアニメーションが流れます。私は猫が特にお気に入りです。

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■無料の相談窓口をまとめた対応例
その他、対応例紹介ページには、無料で相談できる経産省や法務省掲載の窓口など、駆け込み先を一元化しました。メールやLINE等で無料で相談でき、話を聞いてくれたり、投稿の削除方法などについて相談に乗ってくれたりする窓口がちゃんと存在しています。こういったものを知らずにひとりで抱え込んでしまう人がひとりでも少なくなるよう掲載しています。

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SNSで傷ついた人がまずまっさきに駆け込んで、羽をやすめる止まり木のような存在になりたい。
悲しい思いをしている人の心が少しでも休まりますよう、願っています。

TOMARIGI

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