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薬価、来年度引き下げ・・・なぜ引き下げることが少子化対策になるのか解説

2024年度に薬の公定価格(薬価)が引き下げられる。医療の対価として医療機関が受け取る診療報酬を厚生労働省が改定し、患者負担を軽減する。
浮いた財源を少子化対策や医療従事者の賃上げに回すなど、どう使うかの議論を進める。

医療費の4分の1は国費で賄うため薬価を下げれば国費が浮く。厚労省は本体部分の引き上げに活用する考えだ。一方、財務省は24年度予算案で計上する社会保障費の圧縮や少子化対策の拡充にあてることをめざす。

日本医師会は物価高などに対応するため医師の技術料をあげるよう要求している。医療費への切り込みが甘くなれば少子化対策に回すお金が不十分になる恐れがある。

そもそも、薬価とはどういったものなのだろうか。

薬価とは

医薬品は、医療用医薬品とOTC医薬品の2つに大別される。医療用医薬品とは、医療機関などで医師から処方される薬のこと。

一方、OTC医薬品とは、処方を必要とせず、ドラッグストアなどで購入することができる薬のこと。

保険医療で用いられる医療用医薬品は、国が価格を定め、「薬価基準」に収載される。2018年3月時点で薬価基準に収載されている医療用医薬品は、約15,000品目となっている。

一方で、OTC医薬品の価格は製薬企業が定めることができ、薬価基準には収載されないため、OTC医薬品の価格を薬価とは呼ばない。メーカー希望小売価格や販売価格など、一般的な商品と同じ呼称となる。
このように、薬価基準に収載された医療用医薬品の価格を薬価という

ここで気になるのが、薬価の改定についてである。

薬価改定と頻度

一度定められた医薬品の薬価は不変ではなく、定期的な見直しが行われる。この価格の見直しを「薬価改定」と呼び、原則として改定の度に薬価は引き下げられる。

薬価改定は、以前は2年に1度の頻度で行われていたが、2021年度からは中間年度改定も開始されたため実質毎年行われることになった

過去にも消費税の増税などを理由とし、1年で改定されたことがある。

診療報酬の中にある薬価

医師らの技術やサービスの評価にあたる「本体」部分と、医薬品の代金にあたる「薬価」の2つからなる。医療機関は人件費や医薬品などの購入、医療機器や施設の維持にかかる費用を診療報酬で賄う。

国が全国一律に定める公定価格のため、医療機関はコスト増を価格転嫁しにくい。

2021年度に薬価改定が予定通り実施された。この年は「毎年改定」の初年度に当たり、市場価格との乖離率が大きい品目の薬価を引き下げた。財務省によると、それによって国費ベースで1,001億円を節約できる見通しだった。

新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われる中、医療現場や医薬品の流通が混乱しているとして、関係者からは改定の見送りや延期を強く求める声があったが、政府は実施の方針を曲げず、都市部などで高齢化が急激に進行し始める22年を手前に控え、財政健全化を進める姿勢を強く印象付けた。

医師会の見解

医療の高度化、物価高騰、人件費上昇など医療費を上げなければならない必要性は多々あるが、現行では医療費の上昇は高齢者の増加分しか認められていない

ここ数年は医療費本体部分を上げるために、薬価を下げることで、財源を捻出してきた経緯があるが、薬価を下げることにも限界があり、あまりにも薬価が安くなってしまった中、原材料費の高騰などで製造を中止してしまった薬剤もある

本来であれば、社会保障費全体を増やすことで医療費も増やすことができれば、このような問題は起きないが、政府の財政規律維持のためにこの方法は取りにくい状況だ。医療費本体部分を増やすためには、新たな財源を探すか、医療費の効率化によってどこかの医療費を減らす必要がある

調剤報酬の国際比較 薬価差益は英独の3倍

わが国の薬局の技術料と薬価差益のGDP比は0.43%と、イングランド(同0.14%)、ドイツ(同0.16%)と比べて突出して高い。こうした違いが生じる原因として次の3点が指摘できる。

第1に、人口当たりの薬局数・薬剤師数の過剰ともいえる多さである。第2に、一人当たりの薬剤数の多さであり、家庭医制の不在に伴うわが国の外来受診回数の多さが関連している可能性がある。第3に、1剤当たりの調剤コストの高さである。手間のかかる計数調剤、IT化の後れなど、わが国の薬局業務に非効率な部分があり、コストを押し上げている可能性がある。

薬価制度のメリット・デメリット

薬価が引き下げられる理由は、新薬が発売された後に類似の新薬が薬価収載されたり、ジェネリック医薬品が薬価収載されたりすることで、希少性が低下し新薬としての価値が下がるため。

日本では、国民皆保険制度により、国民は公的医療保険で保障されている。そのおかげで、私たちは公平な医療を受けることができ、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現しています。この保険医療に使用できる医薬品とその価格を定める制度が、薬価制度だ。

これに対し、薬価制度のない諸外国は、製薬企業が医薬品の価格を定める自由価格制度となっています。製薬企業が価格を定め多くの利益を得られるようになると、数千億円とも言われる莫大な費用がかかる新薬の研究開発に取り組みやすくなります。患者さんの立場から考えた場合、新薬を使用できるようになり、治療の選択肢が増えることにつながります。

一方で、自由価格制度においては、それまで低価格であった薬が何倍にも高くなった事例や、薬が高額なため治療が受けられない事例などが発生し、問題視されている。自由価格制度は、負担する医療費が高くなることで治療を受ける患者が減少し、結果として製薬企業にとっての不利益につながりかねない。しかしながら、薬価制度にも問題点はある。

2013年度に40兆円を突破した年間国民医療費は、人口動態最大である団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を控え、更に増大し続けると言われている。国は、ジェネリック医薬品の普及やセルフメディケーションの推進などの医療費抑制のために対策を行っているが、効果は十分でなく、このままでは国民皆保険制度の存続も危ぶまれる状況。

そこで、新たな対策として薬価を毎年改定する案が検討されようとしている。これまで2年毎に行われていた薬価改定を1年毎にすることで、薬価を引き下げる回数を増やし、医療費を抑制することが狙いだ。

しかし、薬価改定の調査にかえってコストがかかる点や、製薬企業における新薬研究開発のイノベーションを萎縮させるという問題などが指摘されており、今後の議論の行方が注目される。

今回は、日経新聞の記事から「薬価」について学んだ。

現在は国が薬価を全国一律で決定しており、医師会からは反対の声が上がっている。誰もが平等に医療を受けられるこの制度はメリットもあるが、製薬企業が新薬開発のための費用が不足するというデメリットもあることがわかった。

各自治体の高齢者比率によって、薬価を変動させるのはどうだろうか。各自治体は、高齢者比率が上がらないよう、出生率を上げる対策や働き世代の流入に更に力を入れるのではないだろうか。

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