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シロクマ文芸部 ガラスの手

ゴミ捨て場にガラスの手が落ちている。
しとしとと降る雨粒がガラスの手に乗り、流れ、滴る。
ガラスでできたこの手のひらは、不思議と私の心を強く掴んだ。
あおい、ラムネの瓶のような涼やかな色をしている。
雨の日のゴミ出しほど億劫なことはないだろうと沈んでいた心はたちまち「手」への強い興味に塗り替えられる。
人によっては不気味に感じるであろうリアルなサイズ感の「手」
私の手より少し大きいそれを、無意識に拾い上げ、家に持ち帰った。

ガラスの手はデスクの上でキラキラと輝いている。
曇りのないあおは何も知らない無垢さを感じさせ、また、何でも見抜く鋭さを感じさせた。
私は少し緊張しながらガラスの手を握った。握手をするように。
ひんやりとした「手」は次第に暖かくなった。

私はその日から度々ガラスの手と握手をした。
己の体温がガラスの手に伝わると心がスッと軽くなる。
日々握りしめたその手は少しずつ手に馴染んでいき、握り返されているような心地さえした。

ガラスの手に手を振って外出し、帰宅してただいまと伝える。
毎日、毎日、まいにち

今日もガラスの手が手を振って私を送り出す。


どうにかイメージした雰囲気を表現できまいかと画策したのですが、かなり迷走している気がします。
ガラスの手って結局なんなんですかね。

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