本当にあった、路上で気絶していた話

皆さんこんにちは

  映画ライターの森田真帆です。ときどき映画ライターのお仕事で出稼ぎしながら、ふだんは彼氏のひろきくんと別府に住んで、大分県別府市にあるブルーバード劇場という映画館で90歳の現役館長をお手伝いしてます。

 先日アウトデラックスさんに呼んでいただき、たくさんの方からポジティブな応援メッセージをいただいたのですが、その中で「note」やってみてほしい! というご提案をしてもらったので今日からやってみることにしました! 記事を有料化してみなよ!とも言われましたが、それはビビってできません。サポートシステムっていうのがあるそうなので、面白いなって思ってくれたら森田の記事にチャリンチャリンしてみてください。そしたら、それがもりたとたじりが食べる鍋の具となります!!!

 今日はそんな私が経験した、とある出来事のお話

 ある夏のとても暑い日のこと、私は地元の住宅街の路上で気絶しているところを通りがかりのおばあちゃんに発見されました。

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★写真はイメージです

 頭には打撲の痕があって、即座に救急車を呼ばれた私はそのまま病院に搬送され、レントゲン撮られ、CT撮られ、いろんな検査をされました。なんで自分が路上で気を失っていたのか、そこはすっぽりと記憶が抜け落ちてしまっていて全く思い出せず、とにかくガンガンに頭だけは痛え。救急のベッドで寝ていたら、当時の様子をお聞かせくださいと警察の方がやってきました。

映画みたいに警察官が登場

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★画像はイメージです

 脳しんとうってこれまで一度も体験したことがなかったのだけど、実際に経験すると本当に怖いもんで、マジでなんの記憶もなく、頭の打撲にもまったく記憶がないのです。こんなに記憶飛ぶんだったら、どうせなら人生で起きた嫌なことを全部消し去ってくれりゃあいいけど、もちろんそんなに都合よく記憶は消えず、自分が路上に倒れてしまっていた前後の記憶だけがすっぽりと消えちまっている。ゴーンモリタ。 

 警察官の方がまるで映画のように「当時の状況を聞かせてもらっていいですか? 何か覚えていることはありますか?」って質問してきて、私も「目を覚ました時は救急車で名前呼ばれていて・・」とこれまたドラマそのまんまのセリフみたいな頼りない返事。刑事さんはやっぱり映画みたいに、ふんふんと話を聴きながらメモを取られていて、「やー、映画のこういうシーンて見るたびにありきたりだわーって思っていたけれど、実際もだいぶありきたりなんだわな」と映画小僧っぷりを発揮してしまったりしていました。すると刑事さんが帰りがけに

「実は同じエリアで通り魔が出ています。もしかしたら通り魔の可能性もあるので、こちらでも少し調べてみますね」

と神妙な顔で捨て台詞を決めていった。

 え? いまめちゃくちゃ大事なことを、帰りがけにふとおっしゃいましたね刑事さん。それ、結構大事なことだから3回くらい言って欲しかったよ! 

「通り魔!」って! めちゃ怖いじゃん! 誰かに後ろから殴られたんだろうか、私。本当に恐ろしくて、思わずガタガタ震えているのがわかる。でも命だけでも助かって本当によかった・・・。

通り魔疑惑に妙な湧き方をする森田家の皆さん

 それから森田家は「真帆が通り魔にあった!」とてんやわんや、上を下への大騒ぎとなりやした。昔から「刑事コロンボ」にあわい憧れを抱いていた父ちゃんは、娘を心配しながらも「白昼堂々襲ってくるとは相当凶悪なやつだ。やはり近所の男かもしれん!」と勝手な推理を繰り広げ、母ちゃんは母ちゃんで「あんた、知らないうちに恨み買うタイプだから、もしかしたらストーカーとかの可能性もあるからしばらく家から出るな」と軽く娘をディスりながら脅してきて、言われれば言われるほどビビり倒していました。

 1週間後、「〇〇警察のXXです」と先日病室を訪ねてきた刑事さんから神妙な声で電話がきた。

「先日の件で、少しお話を聞きたいので警察署まで来てもらえますか?」

 キターーーー! これは犯人が捕まったに違いねえ! もしかして現行犯で捕まって面通し? それか写真を見せられて心当たり聞かれる系!? いや、もし知り合いだったりしたら、どうしよう。おかんの言う通り、わたしは知らないうちに恨み買うタイプなんだよなー。

警察署にて・・・

 だいぶ緊張した面持ちで警察署に行ったら、通されたお部屋に刑事さんがやってきて当日のお話をもう一度振り返った。そして、おもむろにパソコンを出すと「実は、付近の防犯カメラがありまして。これがご本人かちょっと一緒にご確認いただけますか?」と防犯カメラの映像を一緒に確認することに。ドキドキしながら映像を見ていたら、確かにあの日あの時の私が映像の中におりました。

「あ、これ私ですね」(森田)
「はい」(刑事さん)

 映像の中のわたしは、ながらスマホどころか、スマホの中にそのまま入ってくんじゃねーかってくらいの勢いでスマホを覗き込みながら歩いている。ノートルダムの背虫男並の猫背な姿勢で、テクテクと。そして次の瞬間、ものすごい勢いで前方の電信柱に脳天を真正面から激突させた私はそのまま後ろに倒れ、今度は路上に後頭部をぶつけて気絶。映像ではその数十秒後におばあちゃん駆け寄ってきて私を見つけるというところで停止しました。


・・・・・・。


・・・・・。


いや

うそだ!うそだうそだうそだー!


恥ずかしすぎる。

 残念ながら実際の映像を撮影することもできなかったので、お見せできないのが残念極まりないのですが、私は正直なところあんなにも間抜けな映像を見たことがなかったよ。モノクロ映像の中の私は、マジでリアルチャップリン。こんなに綺麗に脳天クリーンヒットして、ものすごい勢いで後ろに倒れて気絶する人間の姿、初めて見た。ゲロ最悪すぎる!!!!!!

 あんなにも通り魔だと思い込んでいて、とんでもない残虐なシーンを見せられると思って覚悟して赴いた警察で、こんな辱めを受けようとは! ある意味残虐! このっ、この・・ものすっごい勢いで携帯を覗き込みながらテクテク歩いてそのまま電信柱に頭激突して路上に倒れた信じられんくらい間抜けな女は、、この私だ! この私です! 刑事さん! 犯人は私ですうううう! と、ラップトップの画面を半ば放心状態で見つめていた私の口から絞り出すように出てきたのは

「あ、すみませんでした」の一言でした。

もはや謝罪の言葉しか出ない私。

「はいはい。まあ、映像見ていただいた通り、電信柱にぶつかっちゃったみたいだねー。うんうん、それでその後おばあちゃんすぐ見つけてくれたみたいだから、変なひとに何かされたとか、そういうこともないみたいでね。はい、まあご本人ってことで、事件性ないってことで安心してくださーい」

 もはや笑ってくれ。刑事さん、そんな事務的な話し方しないでいいから。笑ってくれよ! 私を! 笑えってば! 笑えよ! わたし、実はこの瞬間からどうやって警察署を後にしたのか逆に記憶が曖昧なのです。人ってさ、嫌なことあると記憶消すっていうじゃない。自分の抜け落ちていた記憶をまざまざと映像で見せられた瞬間に、また記憶が消えていったよ。刑事ドラマどころか、事実は小説よりも間抜けすぎたよ。ほんとにアラフォーだぜ私。憧れの松坂慶子は、寅さんのヒロインで超大人な女の色気を振りまいていた頃よ。30歳になったときは私もあんないい女風になる!って言ってたじゃないか。マジでTシャツに短パン姿で電信柱に頭をぶつけてぶっ倒れるはずじゃなかったんだけどね。ゴーンモリタアゲイン。

ロイホにて、家族に報告

 過去最大級に恥ずかしい思いで警察署を出ると心配していたおかんからメールが。大事なことがあったら必ず行く、近所のロイヤルホストで家族でご飯を食べようとのこと。「報告は、ロイホで聞くわ!」というなぜか、人生で大事なことはだいたいロイホで報告するという森田家のおかしなルールにのっとり、トボトボとロイホへ。神妙な顔で「どうだったの? 犯人捕まったん? やっぱり通り魔だったん?」と聞いてきたおかんたちに、「いや、なんか近くの防犯カメラに全部映ってまして。なんか私スマホ見ながら電信柱に激突して、そのまま倒れてもう一回道路に頭ぶつけて気絶してた」と最高に恥ずかしい告白をする羽目に。かむいは「死ぬー死ぬー!」ってひいひい言いながら爆笑し、おかんは「スマホのながら歩きはやめろって言ってるでしょう!」とすでに怒りの炎に着火し、おとんは「でもお前、そのまま死ななくてよかったよ。お前、そのまま死んでたら葬式で最悪だよ」とニヤニヤ笑い続け、私は軽く涙を浮かべながらオニオングラタンスープを啜るという地獄の時間に。

 電信柱にぶつかっただけでも最悪なのに、まさかこの歳で今度は家族の前で悔し泣きするとは思わなんだ。ロイホで泣くだなんて、本当に悔しくて悲しかった思い出なのでした。

ちょっとおすすめしたくなった映画 

「アフタースクール」(内田けんじ監督)
「エターナル・サンシャイン」(ミシェル・ゴンドリー監督)
「メメント」(クリストファー・ノーラン)


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