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ルーキーバッテリー

ファイターズのルーキーである伊藤大海と古川裕大。
私が初めてその2人が組むのを「見た」のは2019年8月26日のU-18日本代表と大学日本代表の壮行試合だったらしい。

らしい、というのは2人の記憶が全くないからだ。でも確実に見ていた。
私が注目していたのはU-18日本代表。応援する星稜高校から選出されていた奥川恭伸と山瀬慎之助だ。
この日の試合で習志野高校吹奏楽部が奏でる星稜コンバット(この年、星稜高校と習志野高校にはちょっとしたトラブルがあった)に感動しながら、山瀬の打席を見つめていた。

このスリーバントスクイズを決めたのが山瀬。決められたバッテリーが伊藤と古川だった。
まさかこの時、見ていたけど目に入ってなかった2人をこんなにも熱烈に応援することになるとは。
2年前の私に教えてあげたい。その打たれたピッチャー、推しになりますよ。

ドラフト1位とドラフト3位で入団した2人。新人合同自主トレの中で、ブルペンに入った伊藤の球を受けるのは古川だった。「思っていた以上にボールが来ていた」「ミットが動かない。レベルが上がっている」とお互いを褒め称える2人。本来ならば、去年も大学日本代表でバッテリーを組んでいただろう2人。1年以上の空白期間を経てお互いの成長を確かめ合った。

3月7日の巨人とのオープン戦。
初めてそのルーキーバッテリーを生で見た。結果はいまひとつ(「私の見たかった伊藤大海」参照)だったが、ピンチを背負い、失点しても崩れずにひとつひとつアウトを重ねる2人にルーキーらしからぬ落ち着きを感じた。

3月14日の広島とのオープン戦。
伊藤が組んだのは宇佐見だった。この日はテレビで見ていたのだが、解説は達川光男。広島のホームゲームだったため広島寄りの解説となったが、少し気になる発言があった。
「ファイターズのキャッチャーは右(ピッチャー)対右(バッター)でインコースを要求しない」
「肩に自信がないからなのか、前からみんなそうだったからチームの方針なのかはわかりませんが」
と。ホークスのバッテリーコーチだった達川氏が言うのだから、少なくとも彼がコーチを務めていた頃のデータではそうだったのだろう。
そしてこの日、途中からマスクを被った梅林のリードについて
「この2試合で右対右でインコースに2球続けた捕手は梅林だけ」
と言っていた。
えっ?本当に?と思って調べてみると、実際は13日の試合で4回金子(捕手宇佐見)が鈴木誠也に、7回西村(捕手石川亮)がクロンに、2球続けてインコースを投げている。
がしかし、13日は池田、金子、西村、14日も伊藤、村田と右ピッチャーしか投げてないのにこれは少なすぎるのではないか。

3月24日イースタンリーグ、ロッテ戦。
伊藤が31日の先発に向けた調整登板のため二軍で投げることとなった。捕手は古川。ルーキーバッテリーがまた見れることになった。
達川氏の解説が気になったのでリードにも注目していたが、2回裏にバッター西巻の打席で2球続けてインコースに構える古川。そしてその要求通りにズバッとインコースに投げ込む伊藤。本当にこの2人はルーキーなのか。
この日の伊藤は初回に1失点したものの、4回66球2安打6三振1四球という上々の結果で開幕前の登板を終えた。

3月7日、14日、24日の伊藤の投球データから達川氏の解説について考えてみた。
右対右に絞って見ると、右打者に対する投球のうちインコース(ストライクゾーン9分割で右列に入ったボール)の割合は以下の通り

7日 28%
14日 11%
24日 24%

ちなみに左打者に対してのインコースの割合は

7日 14%
14日 8%
24日 27%

対戦相手も違い、サンプル数も少ないため達川解説が正しいかどうかはわからないが、それにしても14日は右に対しても左に対してもインコースが少ない。映像までは確認しておらず、要求していてもそこに来なかったという場合もあるから一概に「要求していない」とは言えないが、少ない。
もしこれが達川氏の言う通りファイターズの捕手全体の傾向なのだとしたら、古川にはこのままインコースを要求できる捕手でいてほしい。
建山氏のツイートの通り伊藤は「インコースに投げ切れる」ピッチャーなのだから、インコースを要求できる古川と組んで欲しい。

ファイターズは投手との相性でスタメン捕手を選ぶ傾向がある。
ダルビッシュには鶴岡、大谷には大野、有原には市川(石川亮)、上沢には清水……その時々のエースには対になる捕手の存在があった。
今はまだ無理でも、数年後には「伊藤には古川」と言われるようになってほしい。
まだ私の中には「クローザー 伊藤」の希望もあるのだが、伊藤がこのまま先発をやり続けるのならば、古川がドラフト後の指名挨拶で語っていたようにこの2人で最優秀バッテリー賞を取るのも夢ではないのかもしれない。

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