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私の見たかった伊藤大海

こんなもんじゃない。
こんなもんじゃないはずだ。
私はそう思いながらマウンドに立つ伊藤大海を見つめていた。

3月7日札幌ドーム

ルーキー伊藤大海のオープン戦初登板の日に初めて袖を通した背番号17のレプリカユニフォーム。試合前に札幌ドームのコンコースを歩いていたら、ちらほらと伊藤の背番号を背負った人を見かけた。
若い子たちの集団は、もしかしたら大学時代の友人たちだろうか。
上沢以外のローテーションが確定していない中で、即戦力と言われるルーキーに寄せられる期待は大きい。
過去のnoteを見てもらえればわかるように、入団前から伊藤大海には注目していた。しかし、試合で投げる姿を生で見るのはこの日が初めて。
やっと待ち望んでいた日が来たとワクワクしていた。

この日ルーキーバッテリーが挑んだ巨人は、スタメンにほぼ一軍メンバーを揃えていた。
初回こそ無失点に抑えたが、2回は2失点、3回は1失点。毎回フォアボールを出し、ピンチを背負う。失点はどちらもツーアウトからだ。
しかも3回終了時点でひとつも三振がなかった。

おかしい。伊藤大海という投手はこんなもんじゃないはずだ。どうして。なんで。
そんな気持ちでマウンド上のルーキーを見つめていた。

そして4回。松原、秋広を連続で三振に取ると、梶谷を2球で仕留めて三者凡退。
そう!私が見たかったのはこの伊藤大海!なぜこれを!最初から!やらないの!!!!最初から!!やってよ!!
翌日のスポーツ紙によると、4回にそれまで封印していた縦スラを解禁したとのこと。まだ開幕前、情報はできるだけ隠しておきたいということなのか。
あんなに幾度もピンチを迎えながら、それでも強力な武器を使わないなんて相当に図太い。前回の広島との練習試合では1人4球という目標を掲げていたが、今回もまた自分自身に課題を課していたのだろう。本当に君はルーキーなのか?
少しだけ気が楽になったが、それでも3回までの伊藤大海のピッチングがどうにも咀嚼できずに消化不良を起こしていた。

3月14日、マツダスタジアム

オープン戦2回目の先発。相手は練習試合でも対戦した広島だ。
初回、またしてもツーアウトを取ってからヒット、そしてフォアボール。札幌ドームの嫌なイメージが蘇ってきた。迎えたバッターは練習試合でホームランを打たれた松山。しかしここはセカンドゴロでピンチを切り抜ける。
縦スラも初回から使っていたが、今日はチェンジアップが良かった。菊池を三振に仕留めたのも、松山を打ち取ったのもチェンジアップだった。

2回は三者凡退。
そして3回。ワンナウト1塁で迎えた菊池はピッチャーゴロ。球がグラブに入らず、一瞬焦ったように見えたが落ち着いて一塁に送球してツーアウト。
次の長野はファーストゴロで、自身がベースカバーに入ってスリーアウト。フィールディングも問題なさそう。

4回も三者凡退。そして5回にこの日最大のピンチを迎える。
メヒア、磯村に連続でヒットを許しノーアウト1、2塁。続く高橋大樹はサードライナー。樋口ナイスプレー。ちょっとだけ今日のサードが樋口で良かったと思った。
しかし次の田中広輔にフォアボールを与えてワンナウト満塁。
菊池は初球、甘く入ったスライダーを叩く。
あっ!やられた!
と思ったがボールはまた樋口のグラブの中へ。そしてすかさずサードベースを踏んだ。飛び出していたメヒアが戻れず三塁フォースアウトのダブルプレー。
この回、樋口が全てのアウトを取ってくれた。ありがとう!本当にありがとう!!

5回のピンチを乗り越えて、楽になったのか逆に燃えたのか。続く6回、7回はどちらも三者凡退、しかも2三振ずつ計4三振を取る力投を見せた。
7回92球、4安打2四球7奪三振。文句のつけようがない結果を残してマウンドを降りた。

今日、やっと先週の試合を振り返ることができた。
本当は7日の試合が終わってすぐにnoteを書きたかったのだけど、その試合を振り返るとモヤモヤとしたものが心の中に広がって、書くことができなかった。
4回はとても良かった。でも1回から3回までを振り返って冷静に書き記すことができなかった。
でも今日のピッチングを見て、ツーアウトから崩れないという課題を与えてくれた先週の試合も、開幕前には必要だったと思うことができた。
自分に課した課題をきちんとクリアすることで、彼はどんどん成長していくのだろう。今日も無失点とはいえ課題はある。4安打のうち2安打が初球だったこと、初回にツーアウトから四球を出してピンチを拡大してしまったこと、あるいは5回に満塁のピンチを作ってしまったこと。
開幕まで投げるチャンスはあと一回。
次はどんな課題をクリアし、新たにどんな課題が与えられるだろうか。

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