それは伏線回収ではなく


私は一時期ガチのミステリオタクだった。若い頃は月60時間超の残業をしながら(そのへん緩い時代だった)、年間100〜120冊読んでいた。今考えたらかなりおかしい。
そんな元ガチオタは昨今のドラマで『伏線回収』と言われてる事象に疑問を持っている。伏線とはその時気づかないから伏線なのである。匂わせて「これは伏線なのでは?」と思われた瞬間に負けだ。それはもう伏線とは言えない。
終盤の謎解きまで来て「あぁ!あの時のアレは伏線だったのか!くっそぉぉぉ!気づかなかった〜!!」ってのが伏線なのだ。

だから今日の今川優馬の活躍は伏線回収ではない。

昨日20日の楽天戦。
0-4で迎えた9回表、ツーアウト1、2塁から石井一成のタイムリーで2点を返し、今川優馬に打席が回った。この試合ここまで3打席ノーヒット。それどころか13打席ヒットがない。
ここは代打か、と思ったがBIGBOSSはそのまま今川を打席に立たせた。
ここはBIGBOSSの気持ちに応えたいところだったが結果は空振り三振。ゲームセット。

そして今日21日、BIGBOSSはまた今川をスタメンに置いた。
1打席目は空振り三振。何があっても自分のスタイルを崩さないのは今川の良いところだ。
2打席目、レフトスタンドに豪快な一発。第2号ホームランを打った。

昨日の結果を受けた伏線回収だという人もいる。
でも元ガチオタから言わせてもらえば、これは伏線回収とは言えない。まず昨日の結果は伏線ではない。
伏線とは謎解きがあるまで隠されていた情報、うっすらと気づかない程度にほのめかされた情報のこと。
昨日打てなかったことは私たちの見ている前で繰り広げられていたことであり、隠された情報ではない。打てなくて悔しい思いをしたことも、見てる方に充分伝わっている。伏線ではない。

今日のホームランはこれまでの練習の積み重ね、経験の積み重ね、悔しい気持ちの積み重ねが生んだホームランだ。
キャンプ中、彼(を含む若手たち)が夜間練習していたのを私たちは知っている。一軍でたくさんの経験を積んでいるのを知っている。代打を出されて悔しい思いをした日も、代打に立って悔しい思いをした日も、代打を出されなかったのに打てなくて悔しい思いをした日も私たちは見ている。

だから3打席目でヒットを打ったのも伏線回収ではない。
その裏の守備で見事なバックホームを見せたのも伏線回収ではない。
今まで頑張っていた結果、練習していた結果が出ているだけだ。

そしてこれからも見ている。今日のような活躍をした日も、悔しい思いをする日も。伏線ではなく、明らかな実績を経験を積み重ねていくことを。

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