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母の日に

どうしても見たかった

見たかった。生で見たかった。
塁上にいる五十幡選手が見たかった。

ファームの試合はたくさん見てきた。
平凡な内野ゴロもヒットにしてしまう五十幡選手。
一塁にいたと思ったらいつの間にか二塁に、三塁に進んでいる五十幡選手。
浅いフライでもタッチアップでホームに戻ってくる五十幡選手。
塁に出た五十幡選手にはいつもワクワクさせられた。
だから。
どうしても生で見たかったのだ。

新型コロナウイルスの陽性者や濃厚接触者が続々と出て、チームが大きな衝撃に包まれる中、5月7日に五十幡選手は特例2021で抹消された選手の代替選手として一軍昇格した。
たまたまその日の試合のチケットを持っていた私は、ドキドキしながら札幌ドームに向かった。
しかし7日の試合では9回に守備につくものの打席はなし。

8日には一軍初スタメンで出場したものの、ノーヒットに終わる。
9日は夫の予定が空いている(=子供の面倒をみてくれる)ということで「母の日だから!」とゴリ押しして、急遽観戦に行くことにした。
2日連続でスタメンになるかどうか……という不安を抱えながらも席を取った。
センターに限りなく近い席を。

センター五十幡の背中

9日。札幌ドームに向かう途中で、スタメン発表を見た。
一番センター五十幡。

今日の試合はこの席から五十幡選手だけを見ていようと思った。

守備ではほかのポジションのバックアップに走り回っていたのが印象的だった。
普段ファームの試合はテレビ(やネット)で見ているため、そういった細かい動きを見れるだけでも嬉しかった。

先日淺間選手がテレビのインタビューで、「センターは両翼に指示を出すが、西川選手や大田選手といったベテラン選手だとやりにくい(でもそれに慣れなきゃいけない)」と言っていた。
しかし今日の外野は王選手と万波選手。ファームで一緒に試合に出ていた2人だから、五十幡選手もやりやすかったのではないかと思う。
イニング中の投手交代の時にも笑顔で談笑する様子が見て取れた。

一方、打撃の方は

1回の第1打席はセカンドゴロ
3回の第2打席はショートゴロ
五十幡選手の足でもさすがにそれは内野安打にはならないなぁ……という当たりだった。
しかし5回。ツーアウトランナーなしの場面で回ってきた第3打席、打球はサードとレフトの間に落ち(捕球したのがショートなので記録上はショートへの内野安打)、一塁に出た。

これは走る……左の早川投手からでも絶対走る……
と思いながら五十幡選手の背中を見ていると、2回牽制のあとの初球から走って、初盗塁も決めた。
初安打、そして初盗塁。五十幡選手は札幌ドームで、あるいはテレビで中継を見ているファイターズファンを一気に虜にした。

次の打席は7回。1アウト一塁の場面で回ってきたが、打球はショートへ。完全なゲッツーコースだったが一塁はセーフ。ドーム内は五十幡選手の足の速さにどよめいた。
そしてゲッツー崩れで今井選手がいなくなったことで、逆に先の塁が空く。これはむしろ五十幡選手にとってはチャンスだ。邪魔されずに走ることができる。
果たして杉谷選手への2球目で盗塁成功。そして杉谷選手は3球目をライトに運ぶ。
並の選手ならば三塁ストップの当たりだろう。しかしランナー五十幡選手はあっという間に三塁を蹴りホームに向かった。
ボールが帰ってくる前にホームを駆け抜け、追加点。

ファームの試合でも「あれで帰って来れるの!?」という場面を何度も見てきたが、今日も五十幡選手でなければホームには帰ってきていないのではないか。足の速い選手というのは、敵にいると厄介だが(例えばホークスの周東)、味方にいると何と心強いことか。

母の日に最高の活躍をした五十幡選手。
天国のお母さんもきっと喜んでいることだろう。母の日に捧げる初安打初盗塁だった。

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