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12月32日という少し変わった大晦日でも、私は普段と同じくコンビニの深夜アルバイトをしていた。
シフトが被った高橋氏に「いやー、結局普段と変わらないですよ」と愚痴をこぼした。彼は壁にかかっている時計をみて「あ、1 月1 日になってる」と呟いた。「今日32 日だから、31 日にした方が良いですかね」と時計を直そうとしたら
「待て。直さない方が良い」
高橋氏は続けて「新年迎えても日にちがずれている原因は12 月32 日のせいだろ」と言った。
「確かにこの時計は32 日に対応してないですし」
「だから1 日早い日にちを見て大大晦日を思い出す。僕は、普段と変わらなくてもずっと記憶に残る日の方が良いと思うんだ」
「ふむ。この日にリア充共のように特別なことをする必要性はない。いつでも記憶に残る手段を持っている時点で我々の勝利ということですか」
「そうだ」高橋氏の目は生き生きしていた。
翌日シフトに入ると店長が「時計直しといたよ」と年越しそばを廃棄しながら言った。

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