『ビッグ・アイズ』|毎日映画 Day6

映画を連日観るようになると、一作品を観始めるまでの抵抗があきらかに減っていることに気付いた。観ようと思ってから実際に観るまで一年以上かかることもざらだったから、かなりの成長。

ティム・バートン作品はそんなに数を観ていないけど、『フランケンウィニー』が好きで何度も観てた。不気味だけど怖すぎない、むしろちょっと可愛い、の塩梅が個人的にツボらしい。


『ビッグ・アイズ』(Big Eyes)

監督:ティム・バートン、脚本:スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー。アメリカ映画。2014年公開。

1958年、夫と別居して似顔絵描きを始めたマーガレットは、社交的な画家ウォルターと出会い結婚。やがてウォルターは瞳の大きな子供の絵「ビッグ・アイズ」シリーズで一躍時の人となる。だがその絵は、一枚残らずマーガレットが描いたものだった…。

作品紹介ページより引用)


ティム・バートンの映画を検索していた流れで発見。
タイトルに惹かれて解説を読んで、事実を基にしたというストーリーに「なんか聞いたことある気がする」と思い、軽い気持ちで鑑賞。

ティム・バートンで元ネタがノンフィクションということは『エド・ウッド』的なこと??と思ったのも観ることにした決め手。
(※ちなみに『エド・ウッド』は未見)


●「報われない人」への敬意と愛

まず、伝記映画であることに興味を惹かれた。よくある海外の昔のゴシップやスクープを検証したTV番組みたいな感じで、わくわくしながら観られた。

途中までは美しい流れのドラマなのに、後半、唐突で滑稽な展開が次々襲ってくる。これが完全フィクションだったら「は?」ってなるぐらい。どこからが脚色(演出)かはわからなかったけど、こんな人生を送った人がいたらそれは映画にもしたくなるよな…と妙に納得感があった。

主人公であるマーガレット氏・ご本人のカメオ出演があると知って、後からそれもチェックした。このシーンで出すか…!とつい唸ってしまった。エモーショナルが半端ない。

夫・ウォルターはかなり最悪だけど、ティム・バートンの(弱い人間への)愛ゆえなのか、滑稽な悲哀すら感じられて最終的に嫌いにはなれない。

マーガレットを主人公に描きながら、実のところはウォルター・キーンという人物を描いていたような印象。


●「ビッグ・アイズ」の絵力

そもそもティム・バートンが「ビッグ・アイズ」の絵の大ファンだそう。それもあってか、ティム・バートンの作品に通じる“ちょっと怖いが可愛い”雰囲気が、マーガレットの描く絵を映すことによって既に実現されているのが面白い。幸福な恋愛ドラマをやっている時も、常にうっすら不気味さの影を感じるような…

演出も面白かった。絵の世界が現実に侵食してきたような不思議な感じ。


●娘の恰好良さ

娘・ジェーンの毅然とした態度!はちゃめちゃに恰好良い。

幼い頃もティーンになってからも一貫して大人っぽく聡明な少女で、夫に抵抗できなくなってしまうマーガレットや娘を子ども扱いして言いくるめようとするウォルターとは対照的。常にふたりよりも先を歩いているような印象でめちゃ魅力的だった。

まちがいなくこの映画の中でいちばん好きなキャラクターだった。次点は語り手のディック・ノーラン。第三者の皮肉な目線で夫婦を見ている無責任さが好き。


「ビッグ・アイズ」が可愛く見えてくる度
★★★★☆


小さい頃母親が「怖くて嫌い」と言っていたイメージしかなかった「ビッグ・アイズ」の絵だけど、映画を観た後だとつい愛着を感じてしまう。単純。


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