アーモンドアイ 2020安田記念 振り返り

単勝オッズ1.3倍で負けたわけですから、本来なら『敗因』という言葉をタイトルに入れるべきなんでしょうけど、そうすると2馬身半もの差を付け快勝したグランアレグリアが少々霞んでしまうような気がしまして、ここではアーモンドアイの今回の走りを昨年の安田記念および前走のヴィクトリアマイルと比較して、『敗因』ではなく端的にレース内容を振り返ってみたいと思います。

それにしてもグランアレグリアは非常にレベルの高い走りを見せてくれました。過去の安田記念と比較してもトップレベルの内容と言えるくらいで、マイル戦1分30秒切りが現実味を帯びてきたとも感じました。過去に何度か「マイルで1分30秒を切るには」と質問を受け、その条件として「サクラバクシンオーがレースを引っ張れば」といった表現で答えてきましたが、そんなペースに対応できるのではないかと感じさせるほどの快走劇でした。


さて本題となりますが、今年の安田記念における馬場差をベースに、風の影響および斤量を補正した形で、昨年の安田記念と前走ヴィクトリアマイルの個別ラップを表にしてみました。ご覧ください。

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昨年の安田記念と前走ヴィクトリアマイルはこの時期特有の南寄りの風。一方、今年の安田記念は東寄りの風が吹きバックストレッチは向かい風。レースラップは前後半45.7-45.9でしたが、値以上に前半のペースは厳しかった形です。後手を踏んでしまったアーモンドアイは、出遅れ分をスムーズに取り返したように見えたものの、その内容は赤字で示してあるように厳しいラップを刻みました。過去2レースでの補正値との比較では、前半200~1000m区間で1.2秒、200mに付き0.3秒絶えず速いペースでの追走状態。刻一刻と余力を削られる形となり、過去2レースで見せたような爆発的末脚を披露するのはさすがに難しい状況だったと言えるでしょう。

この厳しい追走状態となったのは、当然完歩ピッチの推移でも明らかとなります。前半1000m区間における比較表をご覧ください。

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スタート直後の不利によって前半200mのラップを落とした昨年の安田記念でしたが、アーモンドアイ自身の走るリズムとしては、前走ヴィクトリアマイルとほぼ同じ状況。しかし今年の安田記念は前半200mを過ぎてから終始速いピッチで走行。道中何度か鞍上ルメール騎手が促すシーンがありましたが、スプリンター数頭の参戦によって緩みのない厳しいレース、いかにも安田記念といった流れに飲み込まれてしまったようです。陣営、そして競馬ファンがイメージしていた末脚を発揮できなかった理由はココにありました。

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後半1000m区間の完歩ピッチの推移も見ていきましょう。ルメール騎手が追い出しに掛かった残り400mから、アーモンドアイはピッチを上げて懸命に走っていました。しかし残念ながら大きく削られた余力の影響で、ストライドを伸ばすことができず一気のスピードアップとはなりませんでした。初の中2週での参戦とか、稍重発表の馬場とか、そういった部分にいわゆる『敗因』を求める気持ちはよくわかりますが、アーモンドアイ自身の走りはそう悪くはなかったと思います。得意の『ネガティブスプリット』とは異なる、しかも純粋なスピードレンジの高い戦いの場では、グランアレグリアが優れていた、という結論が妥当だったかと私は考えます。

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