競馬オタク『歴代ダービー馬最強決定戦』あとがき

競馬オタクさんの『歴代ダービー馬最強決定戦』をご覧いただきありがとうございます。まだご覧になっていない方はこちらをどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=uXfhrjUYRUQ

それでは、あとがき的なことを書いておきますので、少々お付き合いくださいませ。

当初は実際の走りを基にした補正走破タイム・ラップを算出した後、このメンバーでの戦いならこうなる、という視点で想定着順を決めようと考えておりました。過去数回見直していた各馬のスピード指数を改めて算出しながら、あれやこれやと考えていたのですが、推測できるレースパターンというのが果てしなく頭に浮かんでくるわけです。これはもう「キリがない」なと。

できる限り客観性を保てるようなスピード指数を算出しているつもりなのですが、ちょっとした後先の違いまで明確にできるほどの値を出すのは困難であり、その上で幾つもの想定レースパターンを一つに絞るというのは、さすがに客観性からほど遠くなり過ぎるという想いが強まってしまいました。これはいっそのこと、端的に補正走破タイムで後先を付ける方が良いな、という判断に至りました。

今回算出した補正個別ラップは、私が計測した個別ラップでの200m毎のバランスを、補正走破タイム上で忠実に当て嵌めて弾き出した値です。1800m地点、即ち残り600m地点において、とある3頭が横一線に並んだ状態になったのは、まさに偶然の産物。そんな状況を目の当たりにした瞬間、我ながら「これは実におもしろい」と微笑んでしまいました・・・。

動画本編の中では前半800m地点から順を追って紹介しましたが、ここでは上がり補正ラップをまとめた表を見ていただきましょう。まずはラスト200、400、600mの値です。

画像5

ここではオルフェーヴル、ウオッカの2強というようなイメージです。残り400m辺りまでの進路に問題があったオルフェーヴルはラスト400mが断然速いという、ある意味非常識なラップとなっていますが、ラスト600mトータルで見るとウオッカの爆発力は実に素晴らしいです。私が計測した実際のレースでのラスト600mは33.0:11.00-10.80-11.20。緩い流れの中、2着馬に0.5秒、3着馬には0.8秒もの差を付けた勝ちっぷりは、間違いなく非常に価値ある内容でした。

次はラスト800、1000、1200mの値です。

画像5

この区間だと、ディープインパクトとオルフェーヴルが抜けた存在。先代の三冠馬たちとはタイプが大きく異なります。これが日本競馬の変遷の縮図だと言えるかもしれませんね。ディープインパクトは翌年、3200m戦となる天皇賞・春でも斤量58kgを背負い、後半1000mを56.4程度で走破。この補正ラップの妥当性をある程度わかっていただけるかと思います。

続いて、ラスト600m区間における100m毎の平均完歩ピッチ(単位:秒/完歩)をグラフにしてみましょう。4コーナーでの実際の位置取り順で3グループにわけてみました。

画像3

画像4

画像5

厳しいペースで追走している馬は、ラストスパートでピッチを大きく跳ね上げるのが難しくなるので、スロー追走馬とのピッチ差はこの値より若干少なくなりますが、旧東京競馬場の時代はピッチが遅くトビが大きい馬、現東京競馬場ではピッチが速くトビが小さい馬という傾向は感じられます。過去にサラブレで取り上げたスピルバーグはピッチ走法ながらも瞬発力に乏しくエンジンの掛かり具合がスロー。一方イスラボニータは雄大なストライドながらも瞬発力に長けていた、という例外的な存在がいるものの、基本的にはピッチが遅い馬はペースの上げ下げが少ないレースに強く、ピッチが速い馬は瞬発力レースに向きます。そんな中、昨年の日本ダービー馬ロジャーバローズは近年の中では異質の存在と言えそうです。また、動画の中では触れなかった馬で言えば、レイデオロの実にキレイな曲線が目に付きます。これはルメール騎手の技術力の賜物。2番手で4コーナーをクリアし、このようなラストスパートを敢行すれば、後ろの馬はほぼチャンスがありません。

この完歩ピッチの推移から各馬の特徴や、どのようなスパートだったか推し測ることができるわけですが、やはり力強いなと思わせるのは2頭。延々とリズムを崩さず、ゴールを過ぎても地の果てまで伸びていきそうなナリタブライアン。そして3~4コーナーの中間点辺りでは後続馬ほぼ全頭が追い通しになり追走に苦労している状態ながらも、自らは残り400m辺りからピッチを上げてラストスパートできるという、強靭なスタミナを持ち合わせたミホノブルボン。レース映像を見ても伝わることですが、このようなデータからも、その走りの凄さがイメージできるのではないかと思います。


昔の馬が現代の高速馬場で走れるのか、また、その逆についても諸説あろうかと思います。また、結局アーモンドアイのレコードには及ばなかった点についても然り。この辺りに関しては山ほど話したいことがありますが、それはまたの機会に。ここでは一つの例としてミホノブルボンの新馬戦個別ラップを書いておきます。旧中京競馬場芝1000m戦です。

58.1:13.4-11.6-11.4-11.0-10.7

残り300mからは完歩ピッチを0.422秒/完歩まで跳ね上げていました。ラスト200mをちょうど25完歩で走破。平均ストライド超は8m。旧中京競馬場のコーナーを速く走れるタイプではありませんが、デビュー前の坂路調教でも快速ぶりを見せていたように、最後の直線に向くと爆発的なスパートを披露。スピード・スタミナ兼備の見事なる優駿でした。


では最後に日本ダービーの指数表を貼っておきましょう。今年は皐月賞組が多数出走するのであまり意味はありませんが。

画像6

前掛かり的な馬が少ないので緩く流れそうな気配がしますが、その一方、ガチガチに抑え込み一瞬のキレで勝負するタイプも少ないです。レース後半、比較的早めに各馬が動き出す形になるのではないかと考えています。残念ながら無観客競馬での日本ダービー開催となりましたが、レース映像からアツさを存分に感じさせてくれるような迫力ある戦いを期待しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?