デアリングタクトの調教

オークス以来ぶっつけで秋華賞出走となるデアリングタクト。ひと夏越してからのレースぶりを見られなかった以上、調教の様子から状態面等を探らなければならないので、追い切り時の完歩ピッチデータを採ってみました。今回は細分化して50m毎の平均値とし、コース調教、坂路調教と分けてみました。また、コース調教のグラフには参考値としてオークスのデータも入れてあります。

コース

坂路

オークス(コース調教ピンク)を簡単に振り返ってみますと、残り600mから既に前段スパートに入っており、4コーナーを回ってから全開スパートに移ろうとしています。しかし残り500m辺りでは進路がなくピッチを落としています。その後は狭い進路を何とか突き進み怒涛のスパートを見せました。デアリングタクトは何度か手前を替えており、その中で1回だけ大きなアクションとなったのが残り250~200m区間。そのためこの区間でピッチが少し緩んだものの、残り100mまでほぼピッチを維持した強靭な末脚。その構図は2019安田記念でのアーモンドアイの末脚とよく似ており、現役屈指のスパート力を見せ付けました。また、余談となりますが、ゴールイン後の50mでは当然ガクンとピッチを落としています。「もう緩めてええで」というサインが出ればこうなるのです。

2020/02/05(坂路調教青)、2020/04/01(コース調教オレンジ)、2020/10/07(コース調教赤)での調教では、平均完歩ピッチの値がオークスより一段と速くなっています。これはレースと調教時におけるスパートまでの余力消耗度に大きな違いがあるのを表していて、これは全競走馬共通の事象。しかし、他の調教時はレース時と変わらない程度までしかピッチを上げていません。鞍上のGOサインの微妙な違いに合せてデアリングタクトが反応しており、机上的な表現ならばスパート時のスピードコントロール能力に優れている、と言えます。一瞬のキレで勝負するタイプや手応え詐欺になってしまうタイプの馬、あるいは、後半超特化型の調教ばかり行われている馬にはこのよう芸当ができません。前述のアーモンドアイの調教もデアリングタクトと同様の走りをしており、こういった95%くらいのイメージでスパートできる、正しくは高スピードを維持し続けられるというのは超A級馬の証とも言えるでしょう。本題から外れますが、あのサートゥルナーリアも2歳時やスミヨン騎手が騎乗した調教時では、このような走りができていました。それなのにレース時では超瞬発力型の走り。全ての元凶は鞍上交代だろうと私は思っています。

さて本題に戻りますが、コース調教時のラスト400mにおける、私が計測したラップを書いておきましょう。

2019/11/13:12.2-11.6
2020/04/01:11.8-11.6
2020/05/13:11.7-11.4
2020/09/30:11.8-11.7
2020/10/07:12.1-11.7

栗東CWでの馬場の速さの違いは把握しかねるので単純比較はできないものの、平均完歩ピッチの値とラップの相関関係から、良く動けた時とそうでない違いが浮かび上がってきます。もともとデアリングタクトはウッドチップ走路だとトラクションの掛かりが悪いというか、端的にスピードがでないので、他馬との比較論的に見劣りする傾向にあります。そのいい例が桜花賞1週前追い切りとなる2020/04/01(コース調教オレンジ)時。MAXまでピッチを上げているにもかかわらず併走遅れになりました。一方、単走で行われたオークス1週前となる2020/05/13(コース調教黄)時では、ピッチをさほど上げていないものの、この5回の調教の中ではダントツの上がりラップをマーク。絶好の動きを見せていました。そして今回の秋華賞への中間追い切りでは、その2020/05/13(コース調教黄)時と同じ単走で追い切られたのが秋華賞1週前となる2020/10/07(コース調教赤)時。残り200mから、よりピッチを上げるもラスト400mでのラップは2020/05/13(コース調教黄)時より大きく見劣ります。JRAレーシングビュアーに加入されている方は是非、この両日の調教映像を見比べてみてください。スピード感の違いを誰でも感じることができます。

この秋華賞1週前の動きを見ると、馬体の太目感は否めません。例え筋肉量が増えた結果であったとしても、その増えた筋肉が走りに結び付いていない印象です。オークス1週前ではシャープな馬体とスピード感あふれる走りが実にマッチしており、それを100%と見るなら秋華賞1週前はせいぜい80%程度の仕上がり。もっともオークス1週前が抜けて良い走りだったので、桜花賞1週前となる2020/04/01(コース調教オレンジ)とは大差ないとも言えます。

直前追い切りとなる2020/10/14(坂路調教黄)では、前週のハードな調教が功を奏したか、残り200mを前述のような95%で走り続けるという、ほぼイーブンなピッチでまとめました、本番に向けて何とか帳尻を合せられた印象です。一昨年のアーモンドアイのように、次走(おそらくジャパンカップでしょう)を視野に入れた仕上がり、というのはある意味当然。この状態で圧勝できれば、ジャパンカップが凄く楽しみになることでしょう。

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