プロンプトというソフトウェア

NewsPicksの記事の平均Picks数と言えば、体感で大体100〜200Picksぐらいが相場の中で、シュンスケ氏のプロンプト特集は4000Picks以上ものPickを集めていた。プレミアム会員のみの記事なのに凄まじいことで、いかに一般の人々が「より良い」プロンプトの蒐集に熱心かが計り知れる。

ChatGPT Pluginが一般にも利用できるようになったことで、いよいよプロンプトは何でも叶えてくれる魔法の呪文と化してきている。この前は大学生の子に「大学の学費は払うのにChatGPTのサブスクリプションをケチるんだったら、大学辞めて浮いた学費分でサブスクリプションを支払った方が良い」なんて暴言を吐いてしまったけど、結構本気でそう思っている。

「モデルが変化すれば当然プロンプトも変化するのだから、現状のプロンプト芸にこだわることに意味はない」なんて言われていた時期もあったが、Pluginとの掛け合わせでプロンプトの重要性は増すばかりで、プロンプトの蒐集に熱心になるのも頷ける。

しかし何だか面白いなぁ、と思うのは、プロンプトはどんどん複雑化していく中で、ユーザーはそれを単にコピペして、個々のニーズに合わせて少し改変して使っているところ。昔BASICマガジン（通称ベーマガ）という雑誌に載っていた、BASICという言語で書かれたゲームのプログラムコードを、ゲームをやりたいがために一生懸命にPC98で動作するN88-BASICの画面に打ち込む、なんてことをしていた想い出があるが、それと被るような気がしなくもない。

いわゆるChatGPTの講座というものでも、「これは事業計画書を出力するプロンプト」「これはキャッシュフロー分析をするプロンプト」といったように、矢継ぎ早にプロンプトを紹介しまくり、受講者は必死にそれをファイル保存していく、みたいな光景があるらしい。「講座を受けても全然ChatGPTが分からないんですが、どうしたら良いんですかね。。」と相談を受けたが、まぁそうだよねと思う。いわば自然言語で書かれたプログラムコードを紹介されて、結果だけ見せられて「はい、これを使ってください！！」などと言われているのだから、そりゃそう思うよねと感じる。

LLMから外部リソースとのアクセスが可能になった時点で、プロンプトはもはやLLMという処理系で動くインタプリタ型のプログラミング言語だ。チャットというREPLで実行するには手に余る相当に複雑なプロンプトにおいては、「#!/usr/local/gpt-4」みたいなshebangを頭につけてテキストファイルで保存して、開いたらプロンプトが即時実行されるみたいな形で提供されていても、もはや不自然さはないのではなかろうか。むしろいちいち手元のデータベースからプロンプトをコピペするようなことを考えたら、こっちの方がよっぱど自然だ。

そしてWindows Copilotのように、当たり前にLLMからローカルファイルへアクセスできるようになるし、ファイル処理にあたってはいくつか自前のプロンプトをチェインさせて望みの結果を得るなんてこともできるようになるだろう。

こうなってくるとプロンプトはもう立派なソフトウェアだ。そのプロンプトを世界中の人が研究している今は、全人類がプログラミングをする時代とも言える。

中高生にChatGPTを使わせるか否か？のような議論がたまにあって、どう思いますか？と意見を訊かれることもあるけど、プログラミング教育が必須だと言われている現代においては全くナンセンスな問いで、当たり前に限界まで使い倒さなければならないツールだと思う。

ただ、OpenAIが提供しているサービスの利用にあたっては学習データとして利用されることが前提になるので、これは本当に継続的な注意喚起が必要だ（履歴オフにすれば良いと言う話もあるけど、そんなことをしたら使い物にならないぐらい不便だ）。この仕様があってか法人向けのChatGPTサービスなどがポコポコ出回っているが、ChatGPTが与えているインパクトに対してあまりにもセコすぎる仕様なので、せめて有料ユーザーの会話データは学習データに回さないぐらいのことはして欲しい。

そんなわけで、IT人材育成みたいな相談にあたっては真っ先にChatGPTの標準知識とトレーニングを提供すべきだなと考えており、更にAI中心の業務プロセス設計が当たり前になるので、そのようなプロセス設計を可能にするための思考の土台とはどんなものなのかを説明するためのコンテンツ制作で手を動かしていると、これを生成するためのプロンプトを作れないかなーとコーディングし始めてしまう有様で、永遠にプログラマとしての在り方は変わらないんだなぁと思う今日この頃なのでした。

現場からは以上です。