日本麻雀百年史 その2

記録に残る日本人最初のプレイヤー
 

  三つ目のエピソードである。
  麻雀史に造詣の深い法政大学・江橋 崇教授によれば、日本人で最初に麻雀をした人物は、中国に留学中の松本清司だったという。

――日本人で最も古く麻雀をした記録を残しているのは、松本清司『支那百題』に収録された彼の学生時代の日記である。明治40年9月23日、雨降りで暇をもてあました松本は中国人たちと「打牌」をして勝った。

  そこで、打牌を説明して、(北支那にて麻雀と云ひ、南支那にて葉子戯と云ふ)と注記している。

  夏目漱石の『満漢ところどころ』より二年古い。

  『満漢ところどころ』の記述は、漱石自身が「打牌」したというものではなかった。それでも日本人が麻雀を最初に見た記録として、これまで断片的な日本麻雀史で度々引用されてきた。松本の場合は本人自ら麻雀をしたという記録だけに、これは江橋教授の文献的スクープであった。

  平成16年、箱根で行われた関東地区麻雀組合の総会に招かれた際、江橋教授が記念講演で発表したものである。

  これらは文献上の記録であり、その埒外のことは取り上げようがない。今後、研究が進みまた新たな事実が浮かんでくるかもしれない。

  その埒外のことを少しだけ書きおきたい。

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