小説『コロネーン大逆襲』

世界でコロネーンが流行ってからはや一年。
よくわからぬウイルスのせいで、
アンナは高校を卒業してから
就職しようと思った駅前にあるメガネ屋さんが潰れたため就職出来ず、
ハローワークに通いながら次の就職先を探しているうちに七ヶ月目となる。
しかしアンナは思う。

なんの前触れもなく本音を言えば、
正直、コロネーンに終わってほしくない。

コロネーンが終われば、自分は、コロネーンを言い訳に就職開始を先延ばしにすることができなくなる。
というぐらい、就職活動に本気になれずにいたままコロネーンがどこかの潮から到来した。
就職したら、ど田舎で真冬にスタックしながら雪道を通勤したり、将来についていますぐ選択をするなり社会で戦うという。
コロネーン。なんなんだコロネーン。
コロネーンのせいで外に出れない窮屈さを感じる一方、まだ顔すら見る余地もないがミライノいやな上司に飲み会に誘われて密でもマスクなり風邪を理由に行かぬことだって出来るかもしれない、

アンナは始まってもいない社会人生活が先延ばしになることで考える時間が増えたのだ。
それは、予想外でありながら、どこか嬉しい自分がいた。
『コロネーンが明日からワクチン誕生により落ち着きます』
といった類いのニュースが流れたらどこかでがっかりしてしまう自分がいるなと薄々気づいてしまっていた。

だからこそ、アンナは思う。

【いつ、コロネーンは落ち着くんだ?
仮に三ヶ月後だとしたら、まだ心の準備ができてないけど、
二年とか先だったら、社会人生活スタートが延びすぎてそれはそれで、、、
大好きなライブにも行けないし。】

KORONE NO OWARI

が来たら、

わたしは就職なんてしたくない。


出来れば、その頃には東京に行く準備ができてて、

19になって半年ぐらいのときで、

そのときに、上京したい。

だとしたら‥あと一年。

あと一年で、まず、自分がなにをしたいのか?

考えて、

そして、

いろんな本を読もう。

あと一年あれば、
就職できなかった分と、高校卒業してから半年、ハローワーク通いで終わったぶんを取り戻せるかも。



アンナは本気を出すことに決めた。


結局、

アンナがその半年後、19歳になった瞬間にコロネーンはさらに盛り上がり、地元でコロネーンが流行ることになった。

コロネーンは世界中で流行っていたが他人事のように思っていたので予想外だったが、

アンナはコロネーンにかからないように必死で家に引きこもり、なにをしたかというと、

若く就職できてなくなにもせずなぜか楽しんでる娘に親が買い与えた車で、県内を旅することにした。

アンナの住む富山県内を旅しながら、それをひたすら生配信や、ブログなどで発信しまくることにしたのだ。

それなら、ひとりでやるので、感染のリスクも少なかった。

県内で就職難民の若者として地元をアップしていくアンナは、テレビでも取り上げられるようになり、少しずつタレント業が増えていった。


その活動をしているうちに出会ったテレビディレクターの38才の男性と仲良くなり、次第に好きになってきた。

これから彼とどうなるかはわからないが、

アンナは思う。

あのとき、コロネーンを完全に敵とみなし、
自分の人生を諦めなくてよかった。

上京の夢は叶うこともなく、
現実は厳しくコロネーンとはまだまだ付き合っていかないといけなかったが、
軽四の激安の愛車だし、地元ではコロネーン流行でやばいけど、

コロネーンの終わりがいつか来るという焦りから、
一歩踏み出すことで、
自分は、就職とは違うけど、夢見てた未来とも違うけど、夢みたいな現実を手に入れていた。
コロネーンとはどうやら長い付き合いになるらしい。
就職が破棄になったときの焦りや不安はたしかにあった。
いまも未来が不安なことには変わらない。

しかし、自分の幸せを諦めないことにした。

時代はかわり、人生も変わった。

ニュースではコロネーンが取り上げられるが、自分もニュースに取り上げられるようになった。

同世代の遠くにいる女の子からファンレターをもらうようにもなった。



明日は、愛車のなかを改造して、手作り空間づくりを配信でアップしよう、などと妄想しながら、布団に入ってうたた寝している間に、明日にほんのすこし期待しながら、眠った。

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