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武装神姫アーンヴァルのプラモは設計がすごいし塗装しないのが正しいのかもしれない

武装神姫プラモが出るまでの文脈


コトブキヤから発売された「メガミデバイス 武装神姫 天使型アーンヴァル」というプラモを作りました。

例によってあんまり塗装してないんですがこいつはそれが正しいのかもしれない。理由は後述

これは箱です。めちゃめちゃデカいのですが、横に置いてあるfigmaの箱もfigmaとしてはデカいので結果的にあまり意味のない写真になっています。とにかくデカめの箱で、すごいボリュームのプラモということが伝わってほしい。

~~以下長々と思い出話しが続くので次の見出しまで飛ばしてください~~

さてこのアーンヴァルというプラモはなかなか複雑な文脈を持つプラモでして……まず昔、コナミから『武装神姫』というアクションフィギュアシリーズが発売されていました。みんなは知らないかもしれないけど昔コナミがやたらオモチャを作っていた時期があった。みんないい奴だった。あっちじゃ友達はごまんといた。

これは当時すでにレイキャシールやエヴァマンガのおまけフィギュアなどで「こいつの作るアクションフィギュアすげ~」と高い評価を得ていた浅井真紀氏の技術と、コナミが展開していたマジェスティックなアクションフィギュア『アムドライバー』の技術が合体したすげ~遊べる楽しいオモチャで、結構な勢いでオタクに流行りました。

奇跡的に当時品の写真があった(右)。正しくはこの写真に写ってるのは「アーンヴァル トランシェ」というVer1.5的な商品なんですがまあ大体同じです……前髪改造してるかもしれない

というわけで『武装神姫』はこれまで連綿と受け継がれている『フレームアームズ・ガール』や『メガミデバイス』、『30MS』といった美少女アクションプラモのご先祖さま(武装神姫は完成品なんだけど)と言っても過言ではない、武装神姫買ってたやつらは全員上の商品買ってるだろみたいな勢いのシリーズなんですが、コスト増とかいろいろあって死にました。

2014年2月には六本木に当時あった「コナミスタイル」で最終販売会が開かれ正式に死んだ

死んだんですが2015年にコトブキヤから復活宣言が発令、武装神姫ゾンビたちは歓喜しました。

え、これ最終販売会から1年しか経ってないんだっけ!?!?
2015年……2015年!?!?!?!??! 8年前???

……とかあったんですがその後続報が途切れ、「あれどうなったんだ」となった2017年末。今度は『武装神姫』そのもののリブートが発表。

新規にデザインされた武装神姫がズラリと並び、新武装神姫「エーデルワイス」の発売、ソーシャルゲームとアーケードゲームの製作など景気のいい話が並んだんですが、これまた遅々として話は進まず2019年にようやくエーデルワイスが発売、2020年にアーケードゲーム『武装神姫バトルコンダクター』が忘れたころに稼働、ソーシャルゲーム『武装神姫R』はいまだに制作中止の報せも入らず「あれはどうなったんじゃ」と謎に包まれたまま今でも続報はないカンジで「ほんとにリブートしてんのかこのコンテンツ!!!」と霧に包まれたような展開が続いています。なんとなく死に切ってはいないところがどういう感情になればいいかわからずにいる。アーケードゲームも思っていた以上に続いている。

新メンバー・エーデルワイスは2019年に発売された(写真は改造パーツをつけてます)が、このころアーンヴァルの続報が途絶えていたため「あの企画死んだ??」と我々はお通夜っており、エーデルワイスを作りながら「これで武装神姫もいよいよ終わりかのう」とか思っていた

で、話を2017年末に戻すんだけどもこのときプラモ化が予定されていたアーンヴァルとストラーフ(アーンヴァルと対をなす悪魔モチーフの武装神姫)についてまったくアナウンスが無かったため「あの企画ポシャったん???」と我々は不安に思いました。


不安に思っている2018年11月の私。リブート宣言から1年弱が経とうとしていた


2019年6月に幻影を見る私

そしてもはや「もう武装神姫のプラモはなんとなくエーデルワイスをふわっと出して終わりで、アーンヴァルとストラ―フは出ねえんだな」と諦めきっていた2020年2月。突然「やり直します」宣言とともに再始動宣言。

「再始動宣言、3回目くらいの感覚があるけど!?!?」と思いつつようやく目処が経ったことに我々はようやく胸をなでおろしたのでした。
まあそういうわけでとにかく紆余曲折があってようやく手に入ったプラモということでございます。ストラーフも無事に発売されました。良かったね。
ところでリブート発表時にデザインが出てたニュー武装神姫たちはどうなったんでしょうか。謎です。

同じ大きさのオモチャが元ネタだから狂わざるを得ない設計

長くなりましたがようやくプラモの話をします。
待望のアーンヴァルが2022年11月に届いたのにその後半年放置しました。よくあることです。

開けてみるとなかなかソソるランナーが多いです。

スネ。穴を開けるためのいいスライド
胸部は大小2種類入ってる

とくにソソったのは胸部内部に入れるパーツです。こんな形なんだけどさ

C1ね

このランナーがさ


すごすぎてキモいランナー

こんなんなのよ
うわっ!? なにその空きスペース!?!?


こんなスライドになっている。すげえ。
ここは胸部内部、つまり首とか肩とか背中とかいろんなものを支える根幹なわけで、これを前後分割にすると強度が心配になってしまう。だから1パーツで抜くためにこんな成型にしたんでしょうが

すごいな~

それでこのランナー!?
この空きスペースすごいよ。つまりこの空いたスペースで金型がウイーンとスライドすることでこの成型を可能にしているわけですが、そのぶんこの面積ぶんパーツが配置できないわけで……つまりコストがかかる。高い。でもやっちゃお! というこの設計が贅沢ですごいしえらいなと思えるのうれしいわけですね。

このプラモ、ようは15年前に発売されたオモチャをプラモデルで再現する……つまり「オモチャの模型」という冷静に考えるとかなり倒錯したプラモであるわけで……。

例えば『トランスフォーマー』ってオモチャだけど、オプティマスプライムのプラモとかたまにあるじゃないですか。でもオプティマスプライムのプラモって、オモチャと違って「映像作品を再現した形状」だったりするわけですよ。当時のオモチャを再現したプラモとかは無いわけ。でもこのプラモはやってる。すげー変な商品だと思う。
それだけでも変なのに「すげえ再現もするし、アップデートもする」みたいなことを頑張っており、大変に設計に好感が持てるプラモになっています。

例えば当時品はこんなカンジなんだけど……


当時のアーンヴァル。先述したとおりVer.1.5的なアイテムの「トランシェ」であることだけご了承ください

もうこんなのね、基本的にカラーリングが「塗装とタンポ印刷」なんですよ。羽根の付け根とかさ。大型ランチャーの差し色とかさ。各部のマーキングとかね。

でもこのプラモデルはさっきも言った通り
「すげえ再現もするし、アップデートもする」をやるので

こんな分割をして


極力パーツ分けだけでなんとかしようとする

しかしそれだけではタンポ印刷は再現できないので

「デカールは渡しとくからお前らで頑張れ」と急激な突き放しをも行ってくる。おい!!!

見ての通りでこのデカール、ぜんぜん目印とかアタリになるものが不足してるところに貼らされるんですよ。難しい!!!
そのうえコーションデカールみたいなものではなくラインデカールだから、ちょっとでも垂直水平がズレるとすげえ悪目立ちする。正直言って貼るのが難しい。でもこのプラモデルは「がんばって、貼れ」ということをマスター(武装神姫を買った人の呼称)に要求してくる。なぜか。なぜなんだ。それは設計思想が「すげえ再現もするし、アップデートもする」だからです。

これも「トランシェ」の写真
これは今回作ったプラモの写真

武装神姫は元が塗装済み完成品なので「できたぜ」と思った段階でまるで塗装済み完成品みたいな色分けが再現されてないといけない。だからそれをプラモデルとして成立するようにパーツ分けで再現しないとできたときに「なんか違うな」と思われてしまうのでめちゃめちゃ色分けをがんばっている。大きさも同じだし。
なんかこれってガンプラの色分けめちゃめちゃ頑張ってるのとはまた意味が違ってておもしれえなってなる。なりませんか? 私はなりますが……。

背部のプロペラントタンクも、当時品は2パーツ唐竹割りだったのになんか節ごとに分かれてて超コストかかってる。なんでこんなことする? 多分「せっかくだから良くしておこうぜ」みたいに思ってる。

そのうえ当時品の武装神姫とパーツ換装が楽しめるように当時品の武装神姫と接続できるパーツ(脚のスネまるまるとか)がたくさんオマケで入ってて怖い。この熱量はなに? 
多分「買ったヤツらにナメられたら終わる。なぜならオレのほうが武装神姫が好きだからだ タイマンするぞ」みたいな気持ちで設計してる。

ネイルシールを買え

果たして組み立てるとこんな感じになる。完璧ではある。
だが設計者からタイマンを挑まれたのでもうちょっとがんばろうと思い、ネイルシールを買ってきました。

こういうやつ


これを関節部の○モールドに貼ると元オモチャのピン打ち部っぽくなるのです。めちゃめちゃそれっぽくなるのでおすすめなのです。

あと顔には


ガンダムマーカーで頬に///をくわえました。かわいいから。

というわけで今回も基本的に塗装はほぼせず整面とスミ入れ、デカール、クリアーコートで仕上げています。

でもこいつに関しては「これがいちばん正しい」のかもしれない。

模型の作り方の究極のかたちのひとつに「本物になるべく近づけるようにがんばる」というのがあるわけですが 
それは例えばガンダムみたいな架空のものであっても「こいつが本当にあったらどうなってるべきなんだ」というのを考えながらやることでできたりするわけですが、武装神姫については1/1のオモチャが実際にあるわけで、それになるたけ近づけよう、再現しようとすると「全塗装よりも成型色のほうが正しい」という結論になるわけでそれもなんかこのプラモのおもしろいところだと思う。

あとは完成写真を見てください

言いたいことは言ったのであとは写真を貼ります

阿澄佳奈の声が聞こえてくる!!!

武装状態

クリアーコートは相変わらず水性プレミアムトップコートを使用。
素体部分はつや消し、武装パーツには半光沢を吹いています。

翼のフチの、スペースシャトルとかゼータプラスみたいになってる黒いとこの光沢具合がお気に入り


一部武装はシルバーの成型色なんですがこいつらについてはメタリック色の宿命かウェルドラインが目立つので塗装してもよかったかもしれない。でもそんなめんどくさいことはしたくない

このアーンヴァル、唯一の難点というか元ネタ再現というか、素体状態の前髪の造形がちょっと重く。眉毛が見えづらいのがちょっと気になるんだけど武装状態にするとヘルメットで瞳が隠れてロックマンみたいなカッコよさが現れて気にならなくなるのがいいですね。

リペイント版はとてもかわいい前髪があってかわいいのでほしい。これがアンタらのやり方か!!

さようなら

おわりです
割と余ってるので買いましょう


ストラーフも届いちゃったよ

読んだ人は気が向いたら「100円くらいの価値はあったな」「この1000円で昼飯でも食いな」てきにおひねりをくれるとよろこびます