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「人口爆発」を考える

今回、挙げられる内容は、大学のある講義でレポート作成するにあたりまとめられたものである。この内容を私の社会科に対する学びとして、みなさんに知ってもらいたいと思い綴じてみたわけである。読んでいるみなさんが学生の時に学ぶことある「人口爆発」についてをさらに踏み込んだ教養として理解していただければ、幸いである。

はじめに
2 0世紀後半、世界の人口は「人口爆発」と称された急激な増加をみせるようになり、同時に経済も成長し、多くの人々がかつてない豊かさを手に入れた時代でもあった。しかし、一方で地域間の経済格差は拡大し、発展途上国では人口過剰と貧困という問題が出てくるようになる。特に先進国(EU)諸国間の経済格差は、よく調べてくると人口増加率や出生力の高さと関与していることが結びつけられる。実際、高い出生力は低所得国に多く見出され、国際的な貧困多産は現実の問題となっている。一方、先進国では比較的緩慢な出生力の低下を経験し、人口増加が抑えられ、経済成長の利益が国民に広く分配されることがわかった。しかし、現在は過度の少子化状態にあり、高齢化が進行し人口減少の局面を迎えている。特に日本では、超高齢化社会が進み、100歳以上の高齢者が前年(2019年)より9176人多い8万450人となり、1971年から50年連続で過去最多を更新し、初めて8万人を超えたことが明らかとなっている。(北海道新聞a、2020)また一方で1973年ごろを境に、合計特殊出生率が減少し、少子化が進んでいることも報道されている。(北海道新聞b、2020)
 私は社会科教員の免許を取るために学修するにあたり、本授業の実践において生徒自身が発展途上国と先進国それぞれが抱える人口問題を主体的に考え、新しい社会を創造する資質や能力を形成することを目的とする授業を行ったことがある。生徒と教師がともに話し合う中で、その現状や原因を理解し、解決方法を考えるという過程の中での学びが重要であったことの内容を中心に記述する。
1、「人口爆発」を考える
 国際連合の発表(UNFPA、2019)では2020年の世界人口:77億9500万人で、昨年に比べ8000万人増加している。「人口爆発」とは、人口が急激に増えることである。(広辞苑、2018)
 定義があるわけではないのですが、 100年で人口が2倍以上になれば十分に人口爆発ともいえるのでよく使われている専門用語として、社会科授業では特に多く耳に入る言葉である。では人口爆発とはどのようにして起きているのか。人口爆発をしている国は、インド、エチオピア、東南アジア諸国...と貧しい国や途上国がほとんどである。なぜこのような現状が起こったのが、それは自給自足というのが背景にある。   
 ほとんどの国は先進国の植民地だったか、現在先進国に「資源」や「換金作物」を輸出している国ということがわかっている。自給自足(人口安定)→換金作物(貨幣経済)→豊かさ(人口拡大)→生産拡大(経済発展)人口が増えるとより多くのお金が必要になり、「人口増加→経済拡大」の悪循環(下図参照)が始まり、(中略)最後には資源枯渇と環境破壊を招くことが「人口爆発の原因は貧しさです」と説明されますが、実は貧しさは人口爆発の「結果」だった(地球村、2016)ということが筆者は学修する中で、初めて理解したので記述する。

2、人口と都市を世界からみる
 世界の人口は2019年時点で77億人となり、前年よりおよそ8200万人が増えてきたそうだ。1990年から2019年にかけて人口は24億人増えたが、その95%は途上国での増加であった。今後も人口は途上国を中心にして増えていく。(中略)世界の人口は2050年には97億人を超えるとみられると(矢野、2019)は述べている。
 世界の人口の動静をもっと詳しく調べていくために様々な視聴覚教材は豊富にあるが、特に総務省統計局が発行している「世界の統計2020」には最も細かな統計が明瞭にまとめてあり、把握することができる。筆者は、その中から以下のように考察してみる。
 アジアでは、地域によって家を継ぐのが男性に限られる傾向があり、結婚に際しては女性に持参金を求めるという文化様式があるようで男児を好む傾向があったことが影響していると考え、アジア全体では1億556万人と女性を上回っていることがわかる。一人の女性が産む子どもの平均数を合計特殊出生率(以下、出生率)という。先進国では、1960年代から出生率が急速に低下していった。人口を同じ規模に保つには、先進国では出生率が2.1以上必要だが、1970年代に入ると先進国の多くで2.1を割り込み、少子化が進んだことがわかる。(矢野、2019)日本においては、少子化と意識するようになったということを考えてみると、(柳沢、2001)はわが国について見るならば、1920年(大正9年)から死亡率 と出生率がともに低下傾向を示しはじめており、大正末期には少産少死型へ移行しつつあるという見解が登場している。しかし、少子化が社会的な「問題」として広く認識されるようになったのは、合計特殊出生率が丙午の1966年を下回った1989年-いわゆる「1.57ショック」-からと言っても過言ではない。と述べている。1989年というのは私が生まれた年であることは、偶然である驚きでもあったため非常に関心を持った。

3、人口問題から起こる問題点と対策を考える                原因はともあれ、日本の出生数が年々減少しており、日本に構造的な問題点をもたらしたといえるのはいくつか明らかになっている。例をあげると一番大きな問題点なのは、少子化と並んで高齢化が進み、日本といえば賦課方式で維持されてきた公的年金制度の維持運営である。私たちは、「高齢者を支える現役世代」がどんどん減少していく状況である。という話を厚生労働省のパンフレットでもよく見かける。もっとも、現役世代の数が減少していくのは、これからが本番で、安倍政権が現在取り組んでいる「全世代型社会福祉」は、まさに少子化への対応と言っていいだろうと感じる。
 この2019(令和元)年10月1日からは、幼稚園や保育園にかかる費用を無償化する「幼児教育・保育の無償化」がスタートした。住民税非課税の世帯が対象だが、認可外保育園やベビーシッターの費用にも、一定の補助金が出ることになった。(内閣府、2019)この制度が機能して出生数が上がるかどうかは、まだ始まったばかりなので議論するほどでもないと私は考えるが一つの対策として打ち出すことはとても大事であると思う。
 世界を見てみると、(縄田、2019)は70年代以降、仕事と家庭の両立のための施策や、家族給付の一層の充実に取り組んできたフランスと、90 年の「1.57 ショック」以降ようやく本格的な少子化対策に取り組み始めた日本との差があるのではないだろうか。完結出生児数の水準が高いうちに、女性の社会進出や家族の多様化(事実婚やひとり親世帯の増加)に対応した少子化対策に取り組み、「実力」に近い出生率(TFR≒ 2)を達成しつつあるフランスと、対策が遅れるうちに出生力自体が低下し、タイミング効果に加え、カンタム効果による出生率低下が生じている日本との違いがあるように思われる。と述べている。  
 つまり、フランスは日本と違って、少子化対策を前進的に取り組んでおり出生率を回復させた経験があることが分かる。日本は、フランスの取り組みを参考に出生率を回復させるための施策をこれからも考えなければ、人口問題は永久に解決できないだろう。フランスの家族政策・少子化対策は、企業、被傭者、政府が緊密に連携することにより、継続的に進められてきた。特に企業の拠出金が一貫して大きな役割を果たしてきたことは 注目される。社会的背景は異なるが、「社会全体で子どもを支える」「子をもつ家族が不利益を被らないようにする」というフランス社会の取組は、家庭、地域、個別の企業が担ってきた結婚・子育ての機能の低下が指摘される我が国にとって示唆するところが大きいのではないだろうか。という(縄田、2009)の指摘に筆者はこれから菅内閣が新しく誕生し、どのように日本の施策が動いてくるのか。注目して見ていきたいと考える。

(※ある大学の講義にて提出したレポート内容をそのまま引用したもののため、現状の内閣が交代している部分は訂正•加筆している。)

【引用文献】
公益財団法人矢野恒太記念会「世界がわかるデータブック第30版 世界国勢図会」、pp33-80
『地球村』HP、「5分でわかる環境問題」
https://chikyumura.org/2016/11/population-explosion.html
内閣府「子供が、未来をつくるから 幼児教育・保育の無償化はじまります」https://www.youhomushouka.go.jp 
北海道新聞a「100歳以上8万人突破 50年連続更新堂内は最多3867人」、2020年9月16日付記事
北海道新聞b「出生90万人割れ 未来への投資をもっと」、2020年6月14日付記事
縄田康光、『立法と調査 2009.10 No,297 』
「少子化を克服したフランス〜フランスの人口動態と家族政策〜」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2009pdf/20091001063.pdf 
柳沢哲哉「日本の人口問題:50年前の人口爆発」、2011年
http://park.saitama-u.ac.jp/~yanagisawa/students/population.html
UNFPA「世界人口白書2020」https://tokyo.unfpa.org/ja/publications/世界人口白書2020-0

【参考文献】
一般財団法人厚生労働統計協会「人口の動向−日本と世界−人口統計資料集2020」
稲垣稜「現代社会の人文地理学」、古今書院
総務省統計局「世界の統計2020」