『逃げ上手の若君』風間玄蕃の成長記録!②若様と玄蕃

こちらの続きです。単行本12巻未収録台詞を含みます。若様と玄蕃くんは出会えて良かったね😭という話


 6巻47話で天狗に忍の技で負けた上に侮辱されて悔しい玄蕃くん。49話の近江関所越えで、吹雪くんに教えを請います。そこで提案されたのが「威力を高めて凄みを出す」(吹雪)つまり「殺傷力の高い武器を隠し持つことでハッタリを効かせる」(玄蕃)ことです。ここの吹雪くんの言葉を玄蕃くんが即座に自分なりに解釈するのが賢くてとっても好きなんですよね。吹雪くんの「まさしく」が嬉しすぎる。


 確かにこれまでの玄蕃くんの技は基本的に殺傷能力が低めなんですよね。変化の面、火焔玉、煙玉、弓の弦を切るetc。クナイと足剣は武器ですが、人を殺せる程ではなさそうですし余程のことがない限り使っていません。

 他人を傷つけずに出し抜く技の数々は、若様の優しさにも通じる気がします。そう思うと若様が2巻綸旨編で玄蕃に「君と一緒に逃げるのが楽しいからだ」「強い鬼からも君の数々の技があれば逃げられる。そう考えるとわくわくして止まらないんだ」と言ったのも、武士の世界にあって自分と同じ優しさを持つ技に初めて出会えた嬉しさがあるからかもしれません。

 その言葉はきっと玄蕃くんにとっても嬉しいものだったのでしょうね。なんといっても最新115話玄蕃くんの「坊の逃げがなお一層面白くなる」という台詞は2巻上記台詞を大切にしているからこそ生まれたように思います。玄蕃くんの技はそれまで「武士に無用の卑劣な技」と罵られていて、玄蕃くんも自分の技を誇りつつも汚いものだと認識せざるを得なかったのだと思います。そこに若様から「君の技でもっと逃げられる、わくわくする」なんて言われたら、きっと世界の色がいきなり塗り替えられてしまったことでしょう。自分の技は卑劣なのではなくワクワクする。


 6巻で吹雪くんから「凄みが必要」と言われて新たなステージに進むわけですが、そこでも他人を傷つける方向ではなく、隠し持つことで威圧感を持たせるという考え方なのが吹雪くんと玄蕃くんの優しさを感じさせます。

 ただ、玄蕃くんに関してはただ優しいというよりかは、ポリシーとしてなるべく他人を傷つけないで勝とうとしているように感じます。それはきっと追放された武士の世界に対してのアンチテーゼとして、自分の技が武士にあるべき正々堂々の美徳を欠いているのなら、逆に武士がもつ「他人を傷つけ殺す」非道さを否定した上に技を成り立たせたい、という思いからではないでしょうか。

 そのポリシーを破ったのが6巻で自身が天狗に殺されそうになった時と、4巻で若様が保科に太刀を突きつけられた2回なのだと思うとアツいですね……。


まだ続く!

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