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旅で磨こう「文化力」

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「大人の心は、いつも発見の旅を待っている」。そんな旅のヒントを、これまで体験した内外の旅を通じ伝えたい。
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#平山郁夫

旅で磨こう「文化力」 始めます

#旅行 #紀行 #文化力 #エッセイ  世界を席巻した新型コロナ禍で、増え続けていた海外への旅は、すっかり冷え込んでしまった。されど旅の魅力は色褪せることはない。旅は発見と感動を与え、好奇心を満たしてくれる。さらに旅によって、「文化力」を磨くことが出来る。私にとって、旅は生きていることの確認の場であった。智が満ち、歓びの原動力となる、そんな旅を、生ある限りこれからも続けたい。気障に言えば、「大人の心は、いつも発見の旅を待っている」。そんな旅のヒントを、これまで体験した内外の

「砂漠の美術館」中国の敦煌は世界の宝 窟の数は1000以上も、壁画や塑像に加え古文献

    甘州から粛州までは五百支里(編注・一里四百-四五十メートル)、約   十日間の行程である。水の涸れた川の岸に露営した翌日から、部隊は細   かい石の原へはいったが、その石の原は進むにつれて次第に沙漠の様相   を呈して 行き、終いには全くの沙漠に変わってしまった。行けども行   けども一木一草なく、沙の原だけが果てしなく続いて遠く天に連ってい   た。馬は沙中に脚を埋めないように蹄(ひづめ)に木履を履かされ、駱   駝は蹄を※牛(やく)の皮で包んでいた。  (講談社

旧ユーゴスラビア連邦の3ヵ国の旅 「アドリア海の真珠」にも内戦の痕跡

 戦火の絶えなかったアフガニスタンからアメリカ軍が撤退したと思ったら、その半年後、ウクライナへロシア軍が侵攻し、戦乱が長期化の様相だ。かつてのソ連軍が1979年にアフガニスタンに軍事介入したものの、10年後に撤退した歴史の教訓が生かされていない。長い視点で見れば、戦争に真の勝者はない。兵力による国家間の戦争の犠牲者はいつも国民だ。国家や民族の争いと言えば、オリンピックが開かれた街が破壊し尽されたサラエボの悲劇を思い起こす。14年前の2008年7月に旧ユーゴスラビア連邦の3ヵ国

未踏の地、アフガニスタンで政変〜バーミヤン大仏破壊から20年の今後は〜

 戦乱のやまないアフガニスタンでアメリカ軍の撤退に伴い、タリバンの侵攻が急テンポな展開となり、政府が崩壊した。タリバンと言えば、バーミヤンの大仏を2001年に爆破したことは記憶に生々しい。その直前、シルクロードを研究テーマにしていた私は隣国のウズベキスタンやパキスタンまで行きながら、当時の政情から足を延ばせなかった思い入れの地であった。その後、現地を何度も訪ねたことのある知人との交流や、流出した文化財の展覧会などを通じ、未踏の地ながら、その動向に関心を寄せてきた。タリバンが二