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旅で磨こう「文化力」

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「大人の心は、いつも発見の旅を待っている」。そんな旅のヒントを、これまで体験した内外の旅を通じ伝えたい。
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2022年8月の記事一覧

心にしみる静かな盆踊り「八尾風の盆」 越中の山里に、三味線と胡弓の哀調の音色が響く

 「八尾の町では、どこにいてもこの雪流しの音が耳に入って来る。坂の町であるばかりでなく、八尾は水音の町なのだ」といった書き出しで始まる高橋治さんの『風の盆恋歌』(1987年、新潮社)。この一冊の本が、富山の小さな町を全国に知らしめ、年にたった三日間の祭りに、25万人もの人出をもたらすことになったのだ。かく言う私も、2012年までに、風の盆通いは9度目を数えている。10度目を一つの区切りにしようと2020年に予定していたが、新型コロナ感染防止のため中止となり、昨年も開かれなかっ

ヒロシマとナガサキ、そしてカンチャナブリーの旅 戦争は日常のテーマ、悲劇を風化させてはならない

 今年もヒロシマとナガサキでの原爆祈念の日、そして終戦記念日がめぐってきた。「平和ニッポン」では8月に限って、戦争のことを問い直す年中行事になってしまった感すらする。しかし21世紀に入ってもアフガニスタンやシリアで内戦が続き、ロシアのウクライナ侵攻は現在も進行中だ。その上、長期戦となり、ロシアの核使用が取りざたされる事態だ。戦争は日常のテーマである。今回の旅は、世界で初めて原爆が投下され、一瞬にして20万人もの人命が失われたヒロシマ、その3日後に再び原爆が投下され7万人以上が