アベンジャーズにみるこれからのアメリカについて

※最初から重大なネタバレを含みますので未視聴の方はご注意下さい。

アベンジャーズシリーズをエンドゲームまで完走しました。数年ぶりに一気に観た。その為に中古1500円のDVDプレイヤーも買った(近所のツタヤが旧作2週間100円、準新作も月一回派土日100円)。特にエンドゲームは凄く面白かったし、最後の最後まで美しかった。

アイアンマンに始まりアイアンマンに終わるそれは、まさにアメリカの現代史における、希望(或いは願望)の物語だと思う。

アイアンマンの主人公トニースタークは武器会社の社長兼技術者だった。彼の作った武器が、紛争地域で弱者を虐げる、そんな姿を目の当たりに、彼はヒーローになることを、決意する。

これは、所謂パレスチナ問題だ。簡単に説明すると、パレスチナ地方に住んでいる人々と、そこにあるエルサレムという聖地を巡る民族紛争だ。第二次大戦後、世界に散らばっていたユダヤ人達が、自らの国の建国を望みパレスチナ地方へ集まり、遂にエルサレムを建国。当然当該地方に住むパレスチナ人達は反発し戦争が勃発。アメリカはユダヤ人が多い為に、エルサレムを支持し武器を大量に輸出。こうして、第一次中東戦争から、第四次中東戦争まで、アメリカの近代兵器を持ったエルサレムは勝ち続ける(ざっくり言えば)。その結果、報復処置の結果としてオイルショックが生じることになる。

これを背景にアイアンマンを観ると、アメリカの負の歴史をヒーローへと昇華した物語だということがわかる。そして、アベンジャーズシリーズはここから始まる。

途中から色んなヒーローが出過ぎて名前と顔が一致しない状況に苦しむこともあったけど、フェーズ1の主人公はやはりアメリカそのものだ。具体的には、トニースタークはアメリカの軍事、ハルクは化学、ソーは宗教、そしてキャプテンアメリカはアメリカの正義だ。この中で最も非力にも関わらず誰も勝てないのは、キャプテンアメリカがアメリカの正義の象徴故である。

アベンジャーズ2エイジオブウルトロンは、トニースタークの軍事力を奪われる物語であり、この時期はIS即ちテロとの戦いの時期だったと思う。アメリカの武器がISに奪われ、欧州でのテロの危険性が増していた時期と重なる。

キャプテンアメリカシビルウォーではアベンジャーズは分裂する。即ち、国連派と自立行動派に。IS対応に関して言えば、現実でも国連ではなく、アメリカ先頭に立ち、NATOを動かしていたんじゃあなかったっけか。アメリカが(キャプテンアメリカが)国連を無視して有志と戦う物語だったように思う(この辺り史実も映画もうろ覚えですが)。

アベンジャーズ3インフィニティウォーでは、遂に黒幕が姿を現わす。崇高な理念を持って、各国を滅し、支配する宇宙人はまさしくテロリスト。

そしてエンドゲームを迎える。誰にとってのエンドゲームか。これは、アメリカの軍事を象徴するトニースタークだと僕は思う。つまり、テロとの戦いにある程度の終止符を打ったアメリカのトランプ政権だ。

トランプ政権の基本骨子はご存知の通り「アメリカファースト」。その真意はつまるところ、アメリカは世界の警察を辞めますよ、という所にある。見返りとしてのメリットよりもデメリットの方が多いからだ。つまり、世界の警察はお金がかかるしその見返りは少ない。だから覇権国家から降り、多極化の世界を作っていこうということだ。経営者らしい発想だ。

アメリカという国は世界に類を見ない程の軍事国家で、具体的にはアメリカのその全ての州に軍事基地が存在する。だからこそ、トランプの側近が解雇されたりするのは、与党の中にも軍産に依存したい輩はいくらでもいるからだ。基地は地方経済とセットだし、当然選挙ともセットだから。

世界の警察をやめるということは、自分の国の問題は自分でなんとかしろ、という事でもある。トランプ氏が日米安保に消極的なのも理解できるし、北朝鮮がミサイルを打ってもそれがアメリカに届くようなミサイルでなければ「静観する」となるし、安倍首相は「直接金正恩と対話しなければならない」と言うのである。安全保障に関して言えば戦後アメリカに依存しきっていた日本にとって、今凄く舵取りの難しい局面だ。

余談はさておき、そうなると、軍事力の象徴としてのトニースタークは、やはり死ななければならなかったのだと思う。これが、今のアメリカのこれから向かいたい、希望だからだ。彼の死には意味があり、だから映画の最後としても美しいと思った。

それ以外にも、キャプテンアメリカが盾を黒人に渡す、という所や、キャプテンマーベルというチートが女性である事などなど、ポリコレ特盛り感も凄かった。

と、色々考えちゃうけど、やっぱり最後のクライマックスのカタルシスの為に頑張って見続けて良かったなというのが素直な感想です。ドクター・ストレンジの役回りも最高でした。指を立てて、それを見て自分の運命を理解するスターク。あの場面は良かったなあ。

#アベンジャーズ #エンドゲーム #考察