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【ロック少年・青年小説集】「25歳からのバンドやろうぜ1~初めてのステージに立ってみよう⑦【人生初ステージまであと1か月1⃣】~」

「S、じゃあ、最初から4曲通しでもう一度ね」
「コグレさん、またですか?」

「あと、1時間しかないからさ…」
「休憩しましょうよ…」
「まだ1時間やってないじゃん」
「そんなに練習しなくてもいいんじゃないですか?」

「そうか…じゃあ、休憩して来いよ。気が済むまで休んだら戻ってきて通しでやれるだけやるからな」
「じゃあ、ちょっと電話してきます」

ユキオはひとりだけで初ステージの4曲を通して演奏し始めた。

1曲目 カモンエブリバディ
2曲目 ロマンチスト
3曲目 ドカドカうるさいロックンロールバンド
4曲目 サマータイムブルース

カモンエブリバディは原形はセックスピストルのロックンロールスウィンドルの中のバージョンのコピーに布袋寅泰のCDの歌詞カードに曲の構成を借りた。

ロマンチストはスターリンのコピーだが、原曲のダイナミックなレベルは到底できるわけもない。だから、なんちゃってビートパンク風だが、どこか歌謡曲のようになっている。

多分にSの資質に負うところが大きい。

ドカドカはライブのバージョンをビデオをみながらユキオがコピーした。
シンプルなロックンロールなので、そんなに難しくはない。

しかし、自宅でビデオを見ながらコピーしているとき同席していたFが腰を抜かしていた。ビデオをある程度みながら止めて再生して止めて…。
ものの10分くらいでだいたいコピーが終わったことに驚愕していた。

ユキオがチャボのように弾けるわけもない。

「Fさあ、チャボみたいには弾けないぞ。言っとくけど」
「でも、ドカドカに聞こえるから…そんな弾ける人いままであったことないから」
「おまえ、どんなバンドやってきたんだよ」

キーボードもいないし、ブラスもないから、音が薄くならないようには工夫した。まあまあ、なんちゃってRCには聞こえるレベルにはなった。満足していた。

4曲目のサマータイムブルースはもちろん、Whoのライブアットリーズを参考にコピーした。Fのドラムがなんちゃってキースムーン…ユキオももちろん、なんちゃってピートタウンゼントに決まっていた。

サマータイムブルースを終わってだいたい15分くらいだった。
短くていいかもしれない。
ど素人が長いステージをやっているのを見続けるのはしんどいものだ。

このくらいがいいだろう。
ユキオはそう感じていた。

Fは3回連続で練習をドタキャンし続けていたので、
本番までFを交えたもう練習はしないことにした。