しゅうかつシリーズ~「せめて、もう一回食べてから…美味過去記憶反芻対談」〈②だるま堂という伝説のダブルカツ丼690円、もう5年以上前に閉店したんだけど…天神橋筋商店街にあったのよ ほか〉
模話1「せめてもう一度食べてから…死のうって話の2回目だね」
模話2「実質的1回目だから、いつも観念的になりがちなんで、もう一度行きたい店をとりあげようか?」
模話1「であるか」
模話2「信長か」
模話1「だるま堂というとんかつやが、もう5年以上前に閉店したんだけど…天神橋筋商店街にあったのよ」
模話2「きみは当時は金曜日が外食デーで予算は1000円から1500円だったね」
模話1「そうなのよ。1週間にたった1回だから、選びに選んで行くわけさ」
模話2「当時によく利用したのがそこのとんかつやさんなのね」
模話1「伝説のダブルカツ丼690円、値上がり前はなんと630円だよお立ち会い」
模話2「量はどうだったのよさ?」
模話1「そこは小が490円かな?中が580円?小はふつうの蕎麦屋のカツ丼くらいで、味噌汁に確か冷奴に漬け物つき」
模話2「安いね。昔のどんどんのカツ丼なみだね」
模話1「中が結構分厚いかつでさ、破格値。大カツ丼と呼ばれていた二枚カツ丼はかつは薄い。でもご飯は大盛り。迷うが結局いつも大カツ丼だったね。8のつく日はメンチカツ1個サービス」
模話2「1000円の予算でもお釣りきてコーヒー飲めるくらいだね」
模話1「おおよ。セブンコーヒなら3倍飲めたわけさ」
模話2「飲まなかったでしょそんなに(笑)」
模話1「おなかいっぱいで、それを数年間続けたら気づいたら太ってたわけよ」
模話2「わけよって、それくらいおいしかったわけね?」
模話1「わたくしには至福の時間でしたね。問題がない店ではなかったんだけどね。鰻の寝床みたいに奥は広いんだけど、おばさんがきっちり詰めて座らせるわけ」
模話2「もわくんは一人だからいいんじゃない?」
模話1「それで喧嘩にはならなかったけど、やっぱり客ががらがらで相席とかカウンター座らせるわけ。食券を返して金もらって出ていくお客さんもいたよ」
模話2「繁盛してたんでしょ?」
模話1「最初はね。でもあるときからサービスなくなったり、値上がりでそれまでよりは客が入らなくなってきてた。事情はわからないけどね。ついにダブルカツ丼とのお別れの日が来ました…ある日、中カツ丼頼んだわけ、大盛りで」
模話2「うんうん」
模話1「出てきたのが小カツ丼だったのよ。おばさんがこれは中だって言い張るし、大盛りになってないって言ったら、少し大盛りねとか話にならないから、長年通ったけどもう来ないって文句言って出てった。これは小カツ丼だって(笑)」
模話2「食べないで出たわけ?もったいないな」
模話1「腹立ったから、たぶん御膳か玉出でなんか買って食べたよ。合計1000円以内で(笑)」
模話2「その店どうなったの?」
模話1「すぐつぶれたよ」
模話2「もわくんの怒りで潰れたか?」
模話1「いや、たぶんなんか評判落ちてたのかも。そのあと天満宮近くにある同じ系列のうどん屋があってさ、時々カツ丼弁当売ってたけど買わなかった。店内にはソースカツ丼しかなくてさ、あのカツ丼は二度と食べられなくなった」
模話2「閉店後はどうなったの?」
模話1「次々に違う店になるけど、潰れてった。覚えてるのは唐揚げ食べ放題の店。安かったけど、一度入って、揚げ置きで冷めてたり、補充がちゃんとしてなかったりで、あまりお得な感じがしなかったら、しばらくして潰れた」
模話2「その後、もわくんは吉兵衛とかさんちかのカツ丼とか大阪第○ビルとかカツ丼を求めて探したわけよね。だるま堂以上のものはありましたか?」
模話1「なかったのよ。美味しいのはあったけど値段がね。あんな安いバランスいいカツ丼はなかったのよ。おにいさんはまあまあいい腕で、関西風の半熟卵とじで、だしはインスタントかもしれないけどね、ご飯もおいしかったし。とはいえもう一度食べたいかというと…気がすんだ感じかな。もめたけどあんなにワクワクした安いダブルカツ丼はなかったね。感謝申し上げます」
模話2「タイミングってあるよね。その会社で仕事していて、金曜日だけ食べるダブルカツ丼だからおいしかったし、満足できたってことね」
模話1「そうだね。いまのねんれいじゃああんまり食べたいってならないだろうし」
模話2「その人間固有の好みがあって、その年齢やタイミングでの幸せな食べ物って千差万別だよね」
模話1「色川武大先生のエッセイにも人それぞれで他人の食べてるものが美味しそうだという話があったよね。なも糖尿病の人がいつか好きなだけ食べたいって思いながらその店でいちばんカロリーが少ない軽い麺のメニューを食べる話をしている女性作家のその麺を想像して、なんていとおしくてそのがまんして食べる麺が美味しそうなんだと感じる話みたいにさ…その人にとってたまらない瞬間ははた目にはわからないかもしれないしね」
模話2「次回は、いろいろ列挙しようか?続く~」
【続く】
©2023 tomas mowa