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「あのマンガ、もう一回だけ読ましてくれ…」4〈アングラやふしぎマンガ編①   ~「つげ義春さんは自分なりにみつけたマンガ世界だったんだね」「予備校のときに高円寺の貸本屋で必殺するめ固めを借りてから、とまらなくなってさ…ガロ的な世界に近づくわけね」「つげ義春さんは一時期はほぼ読めるものは読んだんだよね?」「うん、つげ忠男さんのも手に入るのは全部集めたよ。まあまあお金かかったけどね」~ほか〉

模話1「アングラマンガについてだね」

模話2「うん、敬して遠ざかるようにしてたやつね」

模話1「しかしさ、いろいろ書いたり対談してみると…避けて通れないものがでてきちゃうよな」

模話2「ラーメンだと家系とかね(笑)」

模話1「カレーチェーンだとシーアンドシー桜上水とかカレーの王様とかな(笑)」

模話2「それでマンガのマニアックな話ってことね」

模話1「うん。うちは兄弟で少年マガジンをとっていたのよ」

模話2「昔は本屋さんに毎週取り置きしてもらったり、届けてもらったりしていたんだよね」

模話1「床屋さんとか飲食店さんでお客さん向けにマンガや雑誌を定期講読してるのは普通だったからね。うちは少年マガジンだったけど、同じ町内のうち間でジャンプやサンデー、チャンピオン、キングや月刊含めて交換したりしてたんだよね」

模話2「行きつけの床屋さんにチャンピオンとサンデーがあって、かかさず読んでたね」

模話1「あぶさんもあったかな?とにかくチャンピオンはがきデカにドカベンにブラックジャックにマカロニほうれん荘とかあってさ…読まないわけにはいかなかったからね(笑)」

模話2「コミックス派でもあったから、一時期はわざと読まないとかしたこともあったね」

模話1「でも友達間の話題を考えるとやはり読んでないと、話が合わないってなるから(笑)」

模話2「そういう割と普通のマンガ少年だったのが、マニアックにシフトした理由は?」

模話1「兄の影響はあったね。でも彼はいつの間にか俺とは相容れない方向になっちゃったけどね」

模話2「ざっくりいうとガロ系とコム系みたいな感じだね?」

模話1「ただ、初めは兄の影響は大きかった。永井豪も藤子不二雄も手塚治虫も諸星大二郎もコンタロウも全部兄からの影響だったし、その後も吾妻ひでおのエスエフ作品も読んだし…奇想天外やマンガ少年までは同じように進んだかな?」

模話2「分かれたのはどのへん?」

模話1「要するにアニオタみたいなアウトとか宮崎駿とか特撮とか円谷プロなんかに興味なくなったんだよね。つまらないなって」

模話2「吾妻ひでおがスタンダールでは現実に勝てないってのが自伝的マンガに載ってたね」

模話1「うん。そこが分岐点かな? 俺はスタンダールのほうが勝てると思ったんだよな(笑)。SFよりは文学のほうが戦えるってさ。アニメ音楽なんかより、ロックのほうが現実でたたかえるってさ…思わない? おれがおかしいのかわかんないけど…だから、アングラのほうが、現実で対抗できる手段じゃないかってさ。シュールな吾妻ひでお作品は大好きだったけど…兄は現実に勝てない→特撮やエスエフやアニメやその同好の世界の住人に自ら入っていったけど…おれはまったく興味なかったし…現実に勝てなきゃ、勝てるジャンルで表現してくのが当然で、要するにその手の仲良しな感じのうちわ完結の乗りがいやだったのさ」

模話2「音楽の趣味に姿勢や意識が出るよね」

模話1「うん。ヘビメタじゃあ現実に風穴はあかないと思い始めた時期で、パンクやメッセージ性の強い音楽や芸術に興味がうつったこともある。半面、より積極的な逃避として、反社会的な文化芸術に興味がうつったんだよね」

模話2「他人軸ロックとはいえ(笑)、他人に学ぼうとした時期ってことなんだろうね」

模話1「それで、兄からの影響を逃れていく大きな存在がつげ義春だったわけね」

模話2「いつ知ったの?」

模話1「高校時代にいつも立ち読みしてた書店で小学舘文庫のねじ式と赤い花を読んだのが最初」

模話2「ショックを受けた?」

模話1「いや、ただ読んだことのないマンガだという異質な軽い悪夢を見たあとに…なんかもう一度見たいな、あの夢って感じかな?(笑)」

模話2「買ったの?」

模話1「それが何回も立ち読みしただけ(笑)。予備校から集めだしたんだよ。結局最初に買ったのは立ち読みした2冊だった(笑)。まんだらけで漂流教室全巻買ったり、予備校生のくせして(笑)」

模話2「音楽の趣味にも変化があったんだよね確か高校のその頃?」

模話1「うん、AC/DCのバックインブラックをレンタルで借りて録音してすごく好きになった。続いてギター殺人事件のライブをレンタルで借りてきて録音して、ヘビメタに急激に冷め始めた(笑)。とにかくAC/DCのライブで、ディストーション中毒から解放されたのよ。ロックンロールのたのしさを初めて体で理解できたわけ。高校3年の卒業までの半年でって、森田こういちとトップギャラン(笑)?。ほんとに夢から覚めたような感じだったな、その頃は。メタル呪縛からの解放(笑)。おかげでその後、クラッシュやストーンズやロキシーミュージックとかをききだすっていう変化がやってきた。少なくともマンガも音楽もより現実に口を出す存在のもの…世の中にショックを与えるものと自分が自分なりに感じるものに好みがかわったんだよね

模話2「つげ義春さんは自分なりにみつけたマンガ世界だったんだね」

模話1「予備校のときに高円寺の貸本屋で必殺するめ固めを借りてから、とまらなくなってさ…ガロ的な世界に近づくわけね。蛭子さんとか根本さんとかね」

模話2「つげ義春さんは一時期はほぼ読めるものは読んだんだよね?」

模話1「うん、つげ忠男さんのも手に入るのは全部集めたよ。まあまあお金かかったけどね」

模話2「一時期のガロ関係はリアルタイム体験したんだね」

模話1「うん。同時に古い劇画とかも読んだかな。辰巳よしひろ先生の本とかも、コミックドンによくいってたけどどうにも恥ずかしくて声をかけられず、サインしてもらえばよかったな(笑)」

模話2「ここでは書かないこと含めて夢のような時間だったわけだね」

模話1「うん。くれともふさ先生が〈夢の島〉みたいに言ってたけど…そのとおりだったかもしれない。でも当時は夢中でした。霧中でもあったか(笑)」

模話2「続く~」