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【ロック少年・青年・中年・老年小説集】「中年からのバンドやろうぜ1…〈肥満とブルーズ、減量とロック⑫〉~ばんどやろうぜ、再び1~」

ハーモニカ教室はたのしかった。

いままで自己流のために、
うまくいかなかったことも、
ずいぶんと矯正された。

1音半は厳密にいうと、1音と3分の1くらいから半分の間とか、
安定しない音だったが、
勢いで下がってるくらいには聞こえるようになった。

臨時の先生から、
吸っているうちに、からだというか、
喉が震えるようになって、
自然にビブラートがかかるようにもなった。

ハーモニカ教室では、ユキオだけができたので、
少し自慢であった。

オーバフローベンドは勢いでなんちゃって感は
いなめないが、それっぽくはできるようになった。

2穴、3穴の1音ベンドは安定し、
リトルウォルターはなんちゃってのなんちゃって
くらいしかできなかったが、
ロバートプラントの俺の罪はなんとか、
それらしくきこえるようになった。


ある日のこと、教室にギターを持った女性が、
授業の前に入ってきた。
見慣れない顔だった。

カーリーヘアのめがねの女子と話をしている。
カーリーヘアの女性は知っている。
彼女も楽器のようなものをもっていた。
キーボードのようだった。

先生が教室に入ってきた。
カーリーヘアが先生のもとに行って、
ギターの女子を紹介しているようだった。

その後、ユキオは今日のハープの課題の楽譜を見始めて、
意識が外れた。
気が付いたら、授業が始まっていた。

きょうから、アメイジンググレイス。
なんと3つの違うパターンを1つのハーモニカで吹き分けるのだ。
しびれる。
これをマスターしたら…考えるだけで興奮する。

まず、中間のポジション。
いかにもアメイジンググレイスという、
素朴な感じ。
ポイントのベンドはあるが、
そこまでたいへんではない。

2つ目は高いポジション。
フェイクが入る。
ベンドはないが、
高いポジションなので、
きれいな音をだせるかがポイント。

3つ目は低いポジション。
これはブルーズっぽい。
ベンドも多く、吸うことが他のポジションよりも多い。
肺活量がいる。

ユキオはかなり苦戦したが、
先生にはベンドの音程をほめられた。
喉でちゃんと下げているということのようであった。

今日もプールで泳いだような疲れ。
しかし、充実感があった。
帰ろうとしたとき、
着信履歴があった。
メールが来ていて確認すると…
Fからだった。

メールには、
「コグレさん、いま暇ですか?
iくんとセッションするんですけど…
スタジオに来ませんが…
経〇のタッド〇ウルに18時から個人練習入れてます。
コグレさんがきてくれるなら3人でスタジオ練習に切り替えますんで。
連絡ください。F」

相変わらず、突然の連絡だが、
まだ、15時半だった。
メールでスタジオに行くことを承諾した。

何年ぶりか…スタジオへ入るのは…

中年からのバンドやろうぜ…
やってやろうじゃあないの…

ユキオは興奮を抑えられなかった。


ユキオは楽器屋でアニーボールの弦を買ったあと、
急いで自宅に向かった。