家族を殺され、毒を盛られたTS幼女は、スキル『デスゲーム』で復讐する 第6話 第二回デスゲーム 絶望

「さあさあ、楽しい楽しいデスゲームの時間だよ? もっと楽しんでいこうぜ?」

「……」

 さっきまで、ここがダンジョンだという事も忘れ、魔物への攻撃を、まるで遊びのように暴れていたコイツらは、デスゲームが始まった途端、急に黙り込んじまった。

 全く、仲間だったのに、疑い合うまではいいが、このまま動かないんじゃあ盛り上がらないというもの。

:力はどう料理するか。今回はとてもいい
:だが、同じ事の繰り返しでは響かなくなるぞ
:まだまだ始まったばかりだ。ここからが見もの

 ま、そうだな。神の言う通り。

 俺はあくまで参加者じゃなく、司会進行みたいなもんだ。

 参加者を動かしてなんぼだが、ここはひとまず、様子見でも問題なさそうだな。

 確か、副リーダーとか言われていた、カノンが近づいてきた。

「ねえ、生き残ればいいんでしょ?」

「ああ。生き残り方は問わない」

「それに、殺しを当てるって言うなら、目の前で自ら死ねば、判定は無しってことでいいでしょ? いちいち面倒じゃない」

「そうだな。もしそんな事になれば、それでいい」

「わかったわ」

 カノンは何を思ったのか、それだけ聞くと、ニヤリと笑って仲間の男達の方を向いた。

「ね。みんな。アタシのために死んでくれない?」

「は? おい、カノン。いったい何を言い出してるんだ?」

「何って、当然のことでしょ? 少なくとも、リーダーとコウシロウくんはアタシの彼氏でしょ? 彼氏なら、彼女を守るために、率先して身を投げ打つ覚悟が必要だと思うの」

「ははっ! そうきたか! いいな! クズだな!」

 突然の言葉に、仲間達は信じられない事を聞いたように、ただ呆然としている。

 どうやら、誰か一人のために、自己を犠牲にするような、忠誠心は持ち合わせていないらしい。

「ねえ、リーダー。いつもみたいにアタシを守ってよ」

「い、嫌だ。俺は絶対に嫌だからな。恋人のためでも死ねない!」

「リーダー……。カノンさんと付き合ってたのかよ……」

「うるせえ! お前らには関係ねーだろ」

「そんなことない。パーティ内で恋愛はしないって、パーティを組む時に言ってたじゃないか!」

「……」

「だんまりかよ! なあ、コウシロウ! お前はどうなんだよ!」

「俺は死ぬよ」

「は? 逃げる気か?」

「いいや。俺はカノンさんのために死ぬ」

「えっ……」

 怒り散らす仲間を前に、コウシロウは何の躊躇もなく命を絶った。

「すっげー」

 まさか、カノンの狙い通りに一人死ぬことになるなんてな。

 やるなぁ。

 でも、生き残った方は修羅場みたいだけど。

「リーダーはコウシロウより意気地なしなのね」

「カノン、俺は絶対に嫌だからな」

 リーダーは、すでに仲間達から距離を取り、周囲を警戒しているらしい。

 パーティとは思えない程に、全身全霊を持って反撃しようという意思が伺える。

「どうやら、男らしい感じのリーダーの方が、よっぽど自分の事が可愛いらしいな」

「お前は黙れ! 完全に部外者だろ! 口出しするな! 俺はリーダーなんだよ。チームとして協力するためには、俺の力が必要なんだ」

「そうかもな。だが、そんなバラバラな状態で、協力なんて本当にできるのか?」

 疑心暗鬼は加速している。

 互いの距離が徐々に離れ。

 自分の身を案じて、お互いが警戒を強め始めた。

 疑いつつも、まだ仲間意識のあった感じは、カノンの一手ですっかり消えたな。

「カノンさん。見損なったよ」

「うっさいわね。アンタたちこそ見損なったわよ。女は大事にするものでしょ。わかったらさっさと、へ……?」

 演説していたカノンが急に動きを止めた。

 流石の仲間達も、これには驚いたらしい。

「へへへ。お前らが言い争いしてるんなら、今がチャンスだろうがよ」

 不意をつく形で、トバオが後ろから刺したらしい。

 彼らが驚くのは当然だろう。今回のルールは前回と違う。ルールを理解していないトバオの行動に、驚く事しかできないのだ。

 だが、そんなことを気にする様子もなく、トバオはカノンから剣を抜くと、満足気に周りの男達を睨み付け出した。

「さて、覚悟しとけよ。俺は負ける気は無い」

「それじゃあ、投票に移るか。まあ、つまんないことしてくれちゃったけど」

「へ。投票?」

「待って。アタシは、まだ、死んでな……」

「おい。投票ってなんだよ。聞いてねぇぞ!」

「言ったよ」

「何の投票だよ!」

「今回、誰が殺したかの投票だよ。まあ、もうバレバレだけどさ」

「は……?」

 すっかり聞き逃してたらしいな。

「もったいないことしたよなぁ。バレないようにやれば、また生き残る事だってできたかもしんないのにさぁ」

「待て。待ってくれよ。俺じゃない。俺はやってない」

「血のついた刃物を持った奴が、俺じゃないって言って信用されるのって、ないだろ。言ったよな。話は最後まで聞けって。さ、今回の犯人を当てようのコーナーに行ってみようか。明らかすぎてつまんないけど、一応ね」

「ちょっと待て。待て待て待て。さっきまだ生きてるって言っただろ。ほら」

「……」

 息の止まったカノンを無理やり起こすトバオ。

「嘘、だろ? なあ。俺はお前の言う通りやったんじゃないのかよ! これはデスゲームだろ!」

「ルールはしっかり理解しような?」

 俺がポンポンと、優しく肩を叩いてやると、懇願してきていたトバオの顔が青ざめた。

 投票を前に、犯行が確定的な状況に、トバオは茫然自失な様子だ。



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