平成ライダー三ヶ月半で全部見たエグゼイド編

 こんにちは、マグロダです。
 
 「平成ライダー三ヶ月半で全部見た」とは、平成ライダーを二ヶ月で全部見ようとルーレットを回して作品を決めていたら、結局は全部見るのに三ヶ月半かかっちゃったチャレンジのことです。本記事では、視聴した作品を一作ずつ振り返っていきます。

 視聴の順番は完全ランダム。12回目の視聴作品もルーレットで決めたところ、今回見ることになったのは「仮面ライダーエグゼイド」でした。『エグゼイド』は2016~2017年にかけて放送されたライダーで、平成ライダーのナンバリングでいう18作目に位置づけられます。

 エグゼイドは個人的に近年のライダーの中でもかなり突出して面白いほうだと思っています。キャラクターの味付けもすごくはっきりしているし、ストーリーもどんどん話が転がっていくし、ゲームと医療というテーマのかみ合わせもバッチリ。すごい作品です。
 

■目次
・どんな作品?
・登場人物ピックアップ
・注目ポイント
・個人的名シーン
・視聴のススメ

◆どんな作品?

 主人公の宝生永夢(ほうじょう えむ)くんは、聖都大学附属病院というところで働き始めたばかりの研修医。忙しく働くかたわらで趣味のゲームを楽しむ毎日を送っていました。

 ところがある日、不思議な病気に侵されている患者を発見します。その病気の名は「ゲーム病」、正式には「バグスターウイルス感染症」。なんとゲームをプレイすることで「バグスター」というウイルスに感染してしまい、最終的には肉体が消滅してしまう恐ろしい病気なのです。しかもバグスターウイルスは感染した人の肉体とは逆に、ゲームから現実世界に実体化します。彼らは感染元のゲームの敵キャラクターの姿と行動原理を持ち、人間社会なんて関係なく活動を初めてしまうのです。

 この不思議な病気を治療する方法はたったひとつ。現実に現れたバグスターをゲームのように攻略することだけです。そしてそのための医療器具こそが、仮面ライダーに変身するベルト。そのため聖都大学附属病院は電脳救命センター(通称CR)を設立し、仮面ライダーに変身できる医者を探しているのです。

 仮面ライダーに変身するには、微量のバグスターウイルスを摂取し抗体を作る適合手術を受ける必要がありました。しかし永夢くんはなんと適合手術なしに仮面ライダーエグゼイドに変身できたうえ、謎の天才ゲーマー「M」という人物の正体だったのです! 彼はその天才的なゲームセンスで、バグスターも次々攻略していきます。一方で、変身すると頭痛になったりと不穏な様子も。

 そんな永夢くんの前に現れるのは様々なライダーたち。バグスターとの戦いもこなす天才外科医に、過去にバグスターと戦闘となった時のいざこざで医師免許を失った闇医者。ゲーム病の謎を追う監察医や、バグスターウイルスが発症するゲームを作ってしまった会社の社長。そして、何かを企んでいる謎のバグスター。

 果たして、ゲーム病という病気との戦いに終わりは来るのでしょうか? そして、なぜ 永夢くんが適合手術を受けずにエグゼイドに変身できたのか。なぜ変身後に頭が痛むのか。様々な謎と戦いに、患者の命を守るため、医者としてライダーとして永夢くんたちが立ち向かう。それが仮面ライダーエグゼイドです。


◆登場人物ピックアップ

宝生 永夢(ほうじょう えむ):研修医。2Dアクションゲームをもとにした仮面ライダー、エグゼイドに変身する。ゲームが大好き。謎の天才ゲーマーMとして活動していたが、医者の勉強のためにここ数年の間はゲームを断っていた。かつて事故に遭い命を救われた経験が医者を目指す原動力になった。患者の病気だけでなく心も救いたいと願う優しい性格だが、ゲームを始めると豹変したように勝ち気な性格になる。決め台詞は「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」。

鏡 飛彩(かがみ ひいろ):外科医。RPGをもとにした仮面ライダー、ブレイブに変身する。聖都大学附属病院の院長の息子でさらに天才的外科医というスーパーエリート。クールで自信家な性格。患者の心には立ち入ろうとせず、手術を完壁にこなそうとするプロフェッショナル。その態度には、過去に恋人を病で喪ってしまったことがかかわっている。

花家 大我(はなや たいが):闇医者。シューティングゲームをもとにした仮面ライダー、スナイプに変身する。かつて最初の仮面ライダーとしてバグスターウイルスと戦っていたが、その時に起きた事件で医師免許をはく奪されてしまった。態度が悪く挑発的な言動をとるが、結局やっている行為はバグスターウイルスを倒すこと、つまり患者を救うことなので全然悪い人ではない。

九条 貴利矢(くじょう きりや):監察医。レースゲームをもとにした仮面ライダー、レーザーに変身する。変身するとバイクに変形しちゃう。おちゃめで嘘つきで敵の裏をかくのは得意だが、うちには熱いものを秘めている。バグスターウイルスの謎を解明しようとしており、それが敵に感づかれて途中退場してしまう。メタ的に見ると、1年間放送する『エグゼイド』の予定が完全に破壊されてしまうくらいのハイペースで貴利矢は作中の謎を解明しかけていた。優秀すぎるのがアダになったのだ……。

檀 黎斗(だん くろと):バグスターウイルスが発生してしまうゲームを作っている会社、「幻夢コーポレーション」のCEO。最初は永夢くんたちCRに協力的な態度をとっているが、どんどん化けの皮がはがれていき肥大化したエゴイズムと生命倫理のズレがあらわになっていく。具体的には自分のことを神と自称したり、「人間なんてデータ取っていつでも復元できるようにすれば実質不死じゃん」みたいなことを言い出す。

パラド:謎のバグスター。パズルゲームと格闘ゲームのふたつをもとにした仮面ライダー、パラドクスに変身する。無邪気かつ好戦的な性格で、ゲームが大好き。仮面ライダーたちとの戦いもゲームとして非常に楽しんでおり、勝利よりも楽しさを重視して立ち回る。

◆注目ポイント

・安心して見れるキャラクターたち

 『エグゼイド』のいいところは、なんといってもライダー同士の争いが起きてもはらはらせずに安心して視聴できるところです。

 どういうことかといいますと、まず前提として、『エグゼイド』に出てくる怪人はバグスターウイルスっていう患者を苦しめている病原菌なんです。なので、彼らをライダーとして倒すことは基本的にめちゃくちゃいいことなんですよね。

 そこに医者としてのスタンスの違いや物語上の謎によってライダー同士の戦闘がおこることはあっても、彼らが患者を救うために変身しているという根幹の部分が変わることはありません。つまり、永夢くんたちはちょっとした部分でケンカになってるだけで一番大事な目的は一致しているのです。

 そのため『エグゼイド』のライダー同士の対立はかなり安心して視聴することができるのです。みんなめちゃくちゃいい人たちなのがわかりきっていますからね。『エグゼイド』は最初の数話で多くのライダーが出てきてかなり早い段階で複数の対立軸や乱戦の状況が生まれますし、完全にみんなが団結するのはかなり後半になってからです。

 それでもライダーたちが医者という設定があることで、ストレスを感じることなく視聴しやすいんじゃないかと思います。

・見ていて楽しい戦闘

 『エグゼイド』の戦闘は本当に見ていて楽しいです。なぜかというと本当に単純な話になるんですが、画面がカラフルでいっぱい音が鳴るからです。私は小学生一年生か?

 でもこれはなかなか馬鹿にできない良さがあります。『エグゼイド』はゲームをモチーフにしているため、そういうわかりやすい表現がしやすいのです。例えば攻撃が当たると鳴るポコポコといった効果音や、画面に出てくる「HIT!」「GREAT!」という文字なんかはそれだけで戦闘を盛り上げてくれます。さらに、強敵相手には攻撃を当ててもこれらの音や文字が出てこないため、今戦っている相手に攻撃が通用していないんだ! ということもすぐにわかるんです。

 また、ゲームをモチーフにすることで効果的なことのひとつに必殺技があっても全然変じゃないというものがあります。私もけっこうひねくれているタイプなので、意味もなく必殺技があったりすると「そういう攻撃って黙って発動した方が強くない?」みたいなことを考えちゃうんですよ。

 でも『エグゼイド』は敵も味方もゲームの力で戦っているのでそういう気持ちが全く起こらないんですよね。敵も味方も当然必殺技を持ってるし、撃つときは技名を言うしバンバン音が鳴ってピカピカ光るに決まってんじゃん、ゲームなんだから。と開き直れるわけです。

 これらとはまた違った角度からの戦闘のおもしろさに、ゲームという要素を使った様々な戦闘シチュエーションがあります。恋愛ゲームのバグスターが相手だと女性からの好感度が攻略のカギだったりするので、普通に攻撃しても全然効果がなかったりするのです。

 ほかにも、逃げた敵を追うときにレースゲームの力を「目標地点に到達するゲームなので目標を見失うことは絶対にない」という形で追跡に応用したりと、感心する戦闘描写が多くあります。やっぱりライダーって必ず戦闘シーンがあるので、そこにいろいろな遊び心や工夫があると嬉しいですよね。

・命の価値 医療とゲーム

 なぜ『エグゼイド』が医療とゲームという一見接点のなさそうな要素を一緒に扱っているのか。これはどうやら、命の扱いという点ですごく密接につながっているかららしいんですよね。

 しかしそれは、ひとつしかない命を守っていく医療といくらでもコンティニューできるゲームという単純な二項対立ではありません。そもそも主人公である永夢くんが医者かつゲーマーですからね。それに、ゲームはコンティニューできるからプレイすると現実の命を軽視するようになる、なんて論はいったい何年前の俗説だよって感じです。

 永夢くんは「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」って言葉が示す通り、ゲームと医療を橋渡しする『エグゼイド』を象徴するような存在です。それと対になるような存在が、ゲーム制作会社である幻夢コーポレーションのCEO、檀黎斗。彼は人間そのものをデータ化し、バグスターと同じような存在にすることで実質的な不老不死を実現できると考えています。しかも自分の体でそれを本当に実行してしまうのです!

 こうなった檀黎斗は本当に実質的な不老不死です。死ぬような攻撃を受けても復活します。ゲームのように予備の命、残機があるからです。本人が「檀黎斗神(だんくろとしん)」を自称する通り、まさに神様のような所業です。

 けれど医者の永夢くんをはじめとした登場人物たちは、檀黎斗の明らかに数歩先を行ってしまった生命倫理に共感することができません。彼らは目の前の命を必死に救っている人たちだからです。それに「別に死んでも電子生命体として復活できるから全然問題ないよ」みたいなことが本当に真実だとしてです。その考えに順応できたり忌避感を持たずにいられるかは人によってかなり分かれるのではないでしょうか。

 物語の中で明確な結論は出ていないとはいえ、『エグゼイド』は非常に考えがいのある議題を私たち視聴者に投げかけていると思います。百年後の視聴者とかは、このあたりの話に今の視聴者とは全然違う感想を抱くのかも知れませんね。


◆個人的名シーン

 私が一番好きなのは17話です。「バガモン」というハンバーガーの頭をしたバグスターがあらわれる回ですね。完全にネタバレになっちゃうので、もし未視聴の方がいたらご注意ください。

 バガモンはハンバーガーを作るゲーム、「ジュージューバーガー」から発生したバグスター。しかも感染しているのはゲームを作った開発者の方です。彼はわが子と言ってもいいバガモンに並々ならぬ愛着を持っており、ゲーム攻略のためにバガモンを攻撃するとストレスで容態が悪化してしまうのです。まあ、もし自分が何かを創作していて作品内のマスコットキャラクターが実体化したら絶対うれしいだろうしなぁ。仕方ないことなんですけど、これでは治療も八方ふさがり。

 加えて、バガモンも自分の感染元にしてゲームを作ってくれた開発者にたいそう懐いていました。二人はお互いを思いやる関係だったのです。けれどバガモンは、自分というウイルスに感染していることで開発者の体調を悪化させていることに気づいてしまいます。悲しい真実に気づいてしまったバガモンは、置きピクルスを残し失踪してしまいました。

 本当にバガモンを倒すしかないのか? そう悩んだところで永夢くんが気づきます。実はバガモンを攻撃する必要なんてもともとなかったのです。なぜならジュージューバーガーはハンバーガーを作ってバガモンにデリバリーするゲーム。つまり、それと同じようにバガモンにハンバーガーを提供すればゲームはクリアとなります。彼を倒さなくても病気は治るのです。

 こうしてバガモンは消滅せずに済んだのでいや~ベタだけどいい話だったな~と思ってたら脇から乱入してきた別の敵に攻撃されて消滅しちゃうんですよね、バガモン。悲しすぎる……なぜ……? つらい……。

◆視聴のススメ

 『エグゼイド』はライダーの見た目が特徴的過ぎて気分がノらなかったり、なんとなく『エグゼイド』見てみたけどあんま自分には合わないな~と感じるタイプの人以外は、どんな視聴の仕方でも楽しく盛り上がれると思います。

 なぜかというと、必ず各話ごとにきっちり盛り上がりどころや興味を引く終わりを用意してくれているからです。30分で限界まで楽しませるぞ! という意識がすごく高い作品のひとつではないでしょうか。


 以上、今回は仮面ライダーエグゼイドについてお話ししました。見た目が平成ライダー全体を通してみても最上位クラスでライダーっぽくないこととゲーム知識が少し必要なこと以外は、人を選ばずお勧めできる作品だと思います。

 次回は仮面ライダー剣(ブレイド)についてお話しします。お楽しみに!

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