平成ライダー三ヶ月半で全部見た鎧武(がいむ)編

 こんにちは、マグロダです。
 
 「平成ライダー三ヶ月半で全部見た」とは、平成ライダーを二ヶ月で全部見ようとルーレットを回して作品を決めていたら、結局は全部見るのに三ヶ月半かかっちゃったチャレンジのことです。本記事では、視聴した作品を一作ずつ振り返っていきます。

 視聴の順番は完全ランダム。11回目の視聴作品もルーレットで決めたところ、今回見ることになったのは「仮面ライダー鎧武(がいむ)」でした。『鎧武』は2013~2014年にかけて放送されたライダーで、平成ライダーのナンバリングでいう15作目に位置づけられます。

 鎧武はなんと言っても鎧武者とフルーツが組み合わさったような姿のライダーたちがとにかく目を引く作品でした。彼らライダーたちの主義主張や目的がぶつかり合うことで、いろんな登場人物たちがグループを作ったり、解散したり、裏切ったり、また合流したりしながら戦っていくような作品です。

 

■目次
・どんな作品?
・登場人物ピックアップ
・注目ポイント
・個人的名シーン
・視聴のススメ

◆どんな作品?

 仮面ライダー鎧武は、子供たちが大人の陰謀に巻き込まれて利用される中で成長し、そして自分たちの意思を貫いていく物語です。

 物語の舞台は沢芽(ざわめ)市。特徴的なのは「ビートライダーズ」と総称される複数のダンスチームたちが,踊るためのスペースをかけて勝負をしていること。そして、「ユグドラシル」という巨大な企業が市を再開発していることです。

 ビートライダーズたちは、ダンスだけでなく「インベスゲーム」というものも行っていました。「ロックシード」というオモチャのような道具から、モンスターのような存在「インベス」を出して戦わせているのです。ビートライダーズたちの順位は、なぜかこのインベスバトルで決まっていました。なんでだよ。

 主人公の葛葉 紘汰(かずらば こうた)は、元々ダンスチーム「鎧武」のメンバーでした。しかし、姉と二人暮らしの紘汰さんはダンスばかりやっている訳にはいかないとチームを抜けてアルバイトに精を出しています。

 しかしそんなあるとき、紘汰さんの友人でチーム鎧武のリーダーだった人物が行方不明になってしまいました。彼を探しているうちに、紘汰さんは空間の亀裂から異世界のような謎の森、「ヘルヘイムの森」に迷い込みます。そして現れるインベス。ロックシードの制御下にないインベスは、なんと人を襲うのです。

 紘汰さんは、たまたま落ちていたベルトを身に着けて仮面ライダー、作中ではアーマードライダーと呼ばれる姿に変身してインベスを倒します。そしてこの行動が紘汰さんの運命を決めてしまいました。続々と現れるライダーたちに、ヘルヘイムの森。そしてそれらに深くかかわるユグドラシル。力を得てしまった紘汰さんは、彼らと戦う運命を乗り越えていくしかないのです。

◆登場人物ピックアップ

葛葉 紘汰(かずらば こうた):フリーターの兄ちゃん。姉と二人暮らし。ダンスチーム鎧武の元メンバー。仮面ライダー鎧武に変身する。明るく快活で困っている人を放っておけない性格。そのため一度は辞めたチーム鎧武を助けるために出戻りした。ライダーに変身できるようになった当初はテンションが上がって家で変身しまくったところ、変身音がうるさかったのでメッチャ怒られた。お互いの命を本気で狙いあう戦いに強い恐怖を感じても、覚悟を決めて誰かを守るために戦い続ける。

駆紋 戒斗(くもん かいと):ビートライダーズの頂点に君臨するダンスチーム、チームバロンのリーダー。仮面ライダーバロンに変身する。弱者を嫌い、自分も強者たらんとしている。紘汰さんの優しさを人と群れたがる弱さの表れだと当初は思っていたが、彼の懸命な姿を見て少しずつ自分とは違う強さを認めるようになる。

呉島 光実(くれしま みつざね):チーム鎧武のメンバーで、ユグドラシルの重役の息子。通称ミッチ。仮面ライダー龍玄(りゅうげん)に変身する。家族には内緒でチーム鎧武に所属している。紘汰さんの真っすぐさに憧れや尊敬の念を抱いているほか、「舞」というチーム鎧武の女性メンバーに片思いをしている。一方で自分自身は頭がよく現実的な損得勘定ができてしまうため、小賢しい立ち回りをしてしまう。

呉島 貴虎(くれしま たかとら):ユグドラシルの重役の息子で、ミッチの兄。沢芽市やヘルヘイムの森に関するプロジェクトのリーダー。仮面ライダー斬月(ざんげつ)に変身する。非常に責任感のある性格をしており、巨大企業ユグドラシルで重大プロジェクトを預かっている身として、本人なりに最善の道を進もうとしている。

戦極 凌馬(せんごく りょうま):ユグドラシルの科学者。仮面ライダーデュークに変身する。自分の研究さえ上手くいけばそれでいいタイプの、いわゆるマッドサイエンティスト。作中のよくない出来事は半分くらいこいつのせい。変身ベルトである「戦極ドライバー」は彼が作ったからこの名前になった。また、ベルトを起動して変身する時に鳴る音なども彼の趣味である。

◆注目ポイント

・様々な思惑が入り乱れるバトル

 『鎧武』はいろんなキャラクターたちが意志を通すために、クルクルと立場や陣営を変えながら戦っていくのが特徴的です。彼らをそうさせる理由のひとつは謎の異界であるヘルヘイムの森。そこの植物は別世界にも空間の裂け目から飛び出して繁殖してしまいます。つまり、何の対策もしなかったら地球はヘルヘイムの森の植物に巻き込まれ滅亡してしまうのです。ユグドラシルは、それを回避するために色々と研究していたのでした。

 最初はただインベスゲームで有利になるために仮面ライダーの力を使っていた紘汰さん、戒斗さん、ミッチ。しかしユグドラシルにとって沢芽市は巨大な実験場であり、自分たちのやっていたインベスゲームやライダーへの変身は勝手に実験体にされていたようなものだと知ります。

 紘汰さんはとにかく困っている人は全員救いたい。そのため根本的な解決にはならないと分かっていてもインベスをとにかく倒したり、ユグドラシルとも納得できない部分では戦い、共に町を守るためなら協力します。

 ミッチはそんな夢物語は実現できると思えず、チーム鎧武のみんなや片思いをしている舞さんなど、とにかく一部の大切な人の安全を保証したい。そのため貴虎兄さんの弟であるという自らの身分を生かしてユグドラシルに入り、成果を上げて特権を得ることで大事なものを守ろうとします。仲間を最終的に守るため、むしろ彼らを裏切る道を選んでしまうのです。そうして彼はだんだんチーム鎧武のみんなに顔向けできなくなり、表面上は今までのままなのに内心で孤立していきます。

 そして戒斗さんは、圧倒的な力であるヘルヘイムの森そのものを超えるためより強い力を求めます。彼にとっては、脅威に対策を取らなければならない時点で弱者。どんな思惑が裏にあろうと、弱者と認定したならばユグドラシルすら眼中にありません。なんなら地球滅亡も弱者がみんな消えるなら都合がいい、と止める気もありません。しかし、自分の苛烈な強さとは別種の強さを持つ紘汰さんを「邪魔ではあるが敵ではない」と認め、お互いの道は別々ながら信頼しあうようになっていきます。

 一方でユグドラシルも一枚岩ではありません。ミッチの兄である貴虎兄さんはどれだけ犠牲を出してしまっても、世界のかじ取りをするプロジェクトの責任者として必ず地球の滅亡を回避するつもりでした。本当は紘汰さんのように全てを救いたくても、それが無理だと分かっていたから、苦渋の決断を下して出来る限りの手段を講じていたのです。

 ところが戦極凌馬は違いました。地球がピンチなのをいいことに好き勝手研究をしていましたし、全然人類を救う気もありません。最強の変身ベルトを作って人類を超越したいとこの男は考えていたのです。そのため、貴虎兄さんが人類を救うつもりだと気づいた戦極凌馬は完全に彼を裏切る方向に動き出し、出し抜こうとします。彼の部下たちもぜんぜん貴虎兄さんに従う気がありません。

 こうして『鎧武』では敵味方が入り乱れたバトルが展開されていきます。大いなる脅威が迫る中で、人はどんな行動をとるのか。どれほど自分の意思を貫き通すことができるのか。そんなことを問われ続けながら、『鎧武』の登場人物たちは戦い続けているのです

・すごいぞ戒斗さん

 チームバロンのリーダー、戒斗さんがすっごい特徴的なキャラなんですよね。強さを絶対視している人物で、とにかく頂点に立とうとする。

 その原体験は、親が経営していた街工場が再開発を進めるユグドラシルに地上げされてしまったというもの。強いものは弱いものを踏みにじることができる。ならば自分が彼らよりもっと強くなって、他の弱者にそうしたように、強者を踏みつけてやる。それが戒斗さんのスピリッツなのです。

 だから彼は踏みにじられる存在でいることに甘んじている弱者に厳しいのです。そしてだからこそ、弱者たちにも分け隔てなく優しくすることができるという強さを持つ紘汰さんのことを、誰よりも強いと認めるようになっていきます。

 まあそんな性格なので、なんで戒斗さんがダンスやってるのかぜんぜん分かんないんですよね……。 どう考えてもそんなに趣味じゃないでしょ! 作中でも「俺ら、ダンスやりたくてチームバロン入ったんで……」って言われてメンバーに抜けられたりしてますし。

 私は、戒斗さんって実はあんまりダンス自体に興味なかったんじゃないかと思っています。彼はきっと沢芽市の若者の中で流行っているものの中で、なにか戦って頂点に立てるものを探していた。それがダンスだったのではないでしょうか。

◆個人的名シーン

 私がお勧めしたい名シーンは4~5話の紘汰さんが殺されかけてライダーをやめようとする場面です。

 何度目かのヘルヘイムの森を、鎧武を身に着けて探索する紘汰さん。すると不思議な集団を発見します。当時の彼は気づきませんでしたが、それはユグドラシルの研究チーム。その様子をうっかり目にしてしまった紘汰さんは、彼らの護衛をしていた見知らぬライダー、すなわち貴虎兄さんに襲い掛かられボコボコにやられてしまいます。

 命からがら逃げ帰った紘汰さんは気づくのです。「このアーマードライダーってシステム、実はめっちゃヤバイなにかに踏み込んじゃってるんじゃないか…!?」と。

 そうだよ! どう考えても滅茶苦茶ヤバいだろ!! それ以前にきみたちが遊んでるインベスゲームもちょっとミスするとインベスが周囲の人間を襲い始めるんだぞ!? ヤバいことだらけだよその街は!! と視聴していて思ったんですが、それ以上にこの、戦ったり死んだりするのは怖いという感情をすごく直接的に表現していたのが当時の私には新鮮でした。ここまで等身大のライダーってあんまり多くないですからね。

 そもそも紘汰さんは、リーダーがいなくなったチーム鎧武の臨時の助っ人のようなもの。別に無理して戦う理由もありませんでした。だから本当は、ここで脱落してもよかったのです。けれど彼は再起します。それは、仮面ライダー龍玄に変身して戦うミッチの姿を見たからです。彼がボロボロになりながら戦う姿を見て、それを助けたいと思う一心で恐怖心に勝って再びライダーになるのです。

 紘汰さんはこのあともどんどん変わっていく状況に巻き込まれながら、それでも最後は誰かを守りたいという気持ちを貫き通し続けます。そんな紘汰さんの一貫性は、最序盤の4~5話時点で示されていたのです。

◆視聴のススメ

 『鎧武』は一気に見るのもゆっくり見るのもおすすめです。『鎧武』は前後二話の構成ではなくて、基本的に一話でしっかり話がまとまりつつ次回へのヒキがあります。なので興味を持ったらグイグイ視聴しまくってどんどん物語にのめりこんでいけますし、満足したらキリのいいところで休憩もできると思います。


 以上、今回は仮面ライダー鎧武についてお話ししました。あと鎧武でスゲェ面白いな~って思ったポイントがあります。それはDJサガラというビートライダーズたちの活躍を実況してるだけと思われたキャラ(俳優はぐっさん)がぜんぜんフェードアウトせず、ずっと物語で重要人物の立場を占め続けていたところです。すごく陽気なキャラなのもあって、どんどん過酷になっていく戦いには関係ないと勝手に思ってしまっていました……。

 次回は仮面ライダーエグゼイドについてお話しします。お楽しみに!

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