平成ライダー三ヶ月半で全部見た ゴースト編

 こんにちは、マグロダです。
 
 「平成ライダー三ヶ月半で全部見た」とは、平成ライダーを二ヶ月で全部見ようとルーレットを回して作品を決めていたら、結局は全部見るのに三ヶ月半かかっちゃったチャレンジのことです。本記事では、視聴した作品を一作ずつ振り返っていきます。

 視聴の順番は完全ランダム。とはいえ19回目の視聴作品はもう他に選択肢がないので、自動的に「仮面ライダーゴースト」となりました。『ゴースト』は2015~2016年にかけて放送されたライダーで、平成ライダーのナンバリングでいう17作目に位置づけられます。

 『ゴースト』は周囲を見ていると賛否両論……というより正直なところ否寄りの感想が多いのを見かけるな~というイメージがありました。しかし何事も百聞は一見にしかず……というより、平成ライダーはどれもこれも一見にしかずな作品ばかり。そんなわけで『ゴースト』を見て感じたいいところもお伝えできればなと思います。


■目次
・どんな作品?
・登場人物ピックアップ
・注目ポイント
・個人的名シーン
・視聴のススメ


◆どんな作品?

 仮面ライダーゴーストは、友情や家族、命の大切さなどをまっすぐに伝えてくる作品です。主人公の天空寺タケル(てんくうじ タケル)は、「大天空寺」というお寺の一人息子。彼にはゴーストハンターとして活動する父親がいたのですが、10年前に謎の死を遂げてしまいました。加えて母親も幼いころに亡くなっている天涯孤独の身です。

 けれど彼を「タケル殿」と呼んで慕うお坊さんや科学者を志す幼馴染など友人にめぐまれ、タケル殿は健やかに成長しました。そして父の死から10年たった日、なんと父の名義でタケル殿宛てに小包が届きます。その中身は「眼魂(アイコン)」と呼ばれる、人の魂を肉体から分離することができる道具でした。

 そんなことはつゆ知らず、亡き父からの届け物に驚くタケル殿。しかし同時に、眼魂を狙ってやってきた怪人「眼魔(がんま)」にタケル殿は狙われてしまいます。眼魔は幽霊のような存在であり、眼魂を持っていなければ目で見ることすらできません。もっとも見えたからといっていきなり戦えるわけでもなく、タケル殿はなすすべなく眼魔に殺害されてしまいます。

 あっさり死んでしまったタケル殿は、死後の世界のような場所で仙人を名乗る怪しい人物に出会います。彼との出会いを経て、タケル殿の魂は眼魂の中に入り肉体と分離。幽霊のように魂だけの存在になって活動できるようになります。そして仙人は、タケル殿に仮面ライダーゴーストに変身できるベルトを授け現世に送り返します。同時に「歴史上の偉人や英雄の魂が入った眼魂を15個集めればなんでも願いが叶う」という、生き返るために必要な情報も与えて。

 こうして仮面ライダーゴーストとなったタケル殿は、人々の生活を脅かす眼魔を倒すため、そして英雄眼魂を15個集めて生き返るための戦いに身を投じることになるのです。しかし眼魔というのは単なる幽霊ではありません。眼魔の世界という現世ではない場所で、眼魂を使って肉体にとらわれず存在している人々から送り出された軍隊のようなもの。タケル殿は、眼魔の世界の人々と戦うことになってしまったのでした。

◆登場人物ピックアップ

天空寺 タケル(てんくうじ タケル):仮面ライダーゴーストに変身する。ゴーストハンターだった父を尊敬している。幽霊を信じていることなどをはじめに、全体的に子供っぽい。深い優しさと純粋さをそなえており、自分より他人を優先することも多々ある。その優しさは敵対する人物たちに向けられることもしばしば。幽霊になってしまったが割とすぐに実体化を覚えた。一番困っているのは魂だけなのでご飯を食べられないこと。

深海マコト(ふかみ マコト):仮面ライダースペクターに変身する。かつて眼魔の世界に関する実験に巻き込まれ、眼魔の世界へ妹と二人で転移してしまった。その後、住人であるアラン達の一家に拾われて生き延びた。幼いころはタケルから「マコト兄ちゃん」と呼ばれ慕われていた。眼魂になってしまった妹を生き返らせるべく、15の英雄眼魂を集めるために人間界に現れタケルと敵対する。

アラン:仮面ライダーネクロムに変身する。眼魔の世界を統べる大帝の次男。見た目は若い男性のものだが、眼魂の力を使い魂だけで生活しているため肉体と実年齢は全然違う。英雄眼魂を集めるために人間界に侵攻する役目を授かっている。眼魔の世界を人間の世界よりも完全で平和な世界だと思っている一方、人間界の鮮やかな景色や豊かな食事などに興味をひかれる。マコトとは親友。

仙人:明らかに何か知っていそうだがぜんぜん教えてくれない怪しい人物。問い詰められると透明になって消えてしまう。眼魔の世界に仙人と同じ顔をしたイーディス将軍という人物がいるが、彼との関係性はしばらく謎のまま。なぜか眼魔の世界の内情にも詳しく、加えてタケルの父親とも面識があることがうかがえる。


◆注目ポイント

・ライダーがとにかくかっこいい

 『ゴースト』は仮面ライダーの見た目がかっこいいといいますか、全体的にセンスがいいって感じがします。ゴースト、スペクター、ネクロムといったライダーたちは基本になる肉体があり、その上から使う眼魂によって違う種類のパーカーを羽織る、という形のフォームチェンジを行います。これがまずおしゃれなんですよね。着られていないパーカーがふわふわ空中を漂う様子は幽霊のようですし、それを羽織ってフードを被るのは幽霊が乗り移ったように見えます。

 それ以前に眼魂とベルトでの変身方法もおしゃれで、ベルトに眼球を模した眼魂を入れるとまぶたの中に瞳がはいったように見えるんですよ。それで『開眼!』と音が鳴って変身が始まるんです。すごいセンスがいい。

 また、基本スーツに上から追加のパーカーを羽織る都合もあって『ゴースト』のライダーは全体的にスリムです。タケル殿の変身フォームはいくつかあるんですが、どれも人型のシルエットからあまり逸脱しません。これに対してマコト兄ちゃんは「ディープスペクター」という禁断の力っぽい強化形態になるんですが、それがもう全身から炎の吹き出したようなとげとげした形をしているんです。一発で異質さがわかるデザインになっていてその上かっこいいのがすごいんですよねえ。

・子供にやさしい

 実は私が仮面ライダーを見ていてずっと困っていたことがありまして、キャラクターの名前をなかなか覚えられないんです。特に平成初期とかはその傾向が強くて、名前が聞き取れなかったり、作中人物たちが敵対的だと名前を呼ばずにオイとかお前とかで済ませがちな所に原因があるんだと思います。あと私の記憶力が普通に悪いのと、オープニングで流れるキャラ名を確認せず映像を「かっこいいな~」とぼんやり見ているだけだったからという点もあります。

 で、ですよ。こういった問題はおそらく私だけではなくで、全国の子供たちにもある程度は発生しているケースだと思うんですよね。『ゴースト』はこれに解決策がありまして、なんと作中で初登場の人物には名前のテロップが出てくるんです! これがなんだかんだ言ってめちゃめちゃ助かるんですよ! おかげで一発で正しく覚えられます。

 さらに言うと『ゴースト』は人間の主要キャラクターも下の名前を漢字ではなくカタカナで表記する場合が多かったり、そもそも眼魔の世界のキャラクターは外国人みたいな名前だったりと、漢字を排して小さい子が覚えやすい配慮をしていると感じます。他にも英雄眼魂が出てくる回ではその英雄についてのちょっとした説明がテロップで出てきたりと、全体的に親切なんです。助かる。

・シンプルでまっすぐなテーマ

 『ゴースト』はタイトルの怪しげな雰囲気とは裏腹に、明るい作風とまっすぐすぎるとすら言えるテーマを貫いた作品でした。死んで幽霊のような存在になってしまったタケル殿ですが、それでも自分の都合よりも戦いの中で出会った友人たちを助けるために戦います。また、英雄眼魂もただ集めるだけでなく「英雄たちの心をつなげ」と友情を重んじる物語が描かれます。

 またタケル殿は眼魂を一度すべて集めるのですが、友人のために自分の蘇生ではなく別の願いを叶えてしまいます。もう生き返る方法はないと思ったその時。死してなおタケル殿の身を案じる父親に、父親本人の眼魂を託されることで状況を打破したりもしました。最終決戦では敵と戦う中で、タケル殿は母親に愛されていた幼いころの記憶を思い出します。すごくわかりやすいといいますか、陳腐だとか、親と問題を抱える子供に寄り添えていないと感じる人がいても仕方のないまっすぐすぎる家族愛の表現です。

 けれど私は、『ゴースト』はこれでよかったんだと思っています。あまりにも直截な友情や家族愛の描き方は、小さいころに両親を亡くしても心優しく成長したタケル殿が言うからこそ嫌味に感じず受け入れることができます。また、ここまで書いてきたように『ゴースト』は平成ライダーの中でも特に子供を意識した作品だと思っているので、誤解のなさや配慮よりもわかりやすさを重視していても良いのかなというのが私の考えです。

 まあ……だからと言って他の良くないところがなくなるわけではないので、そこは良さと悪さを足し引きして「やっぱ無理!」となる人がいるのもしょうがないかなとも思ってはいます。ギャグのノリが合わなかったりだとか、偉人の扱いとか、英雄眼魂集めを話がダレてると感じてしまったりとかは人によって多かれ少なかれあると思うので……。

◆個人的名シーン

 私が好きなのは33話、タケル殿が「ムゲン魂」という最強フォームに変身した回です。この時すでにタケル殿は「グレイトフル魂」という、15の英雄眼魂すべてと力を合わせて変身するフォームになることが可能でした。それでも新たに現れた強敵にはかなわず、敗北してしまいます。それはタケル殿の魂がはいった眼魂を砕かれてしまうという、完全な死という形でもたらされてしまうのです。

 タケル殿と一緒に戦ってきた仲間たちは悲しみにくれます。しかし、タケル殿がいればそうしていたはず、というように精力的に一人一人が自分のできることに邁進します。それがタケル殿が仲間たちに残した意志であり、その仲間たち自体もまた、タケル殿の作り上げたつながりが死してなお残っていることの証明でした。

 そうして仲間たちは懸命に戦うのですが、それでも敵には及びません。しかしそのとき、まさしく奇跡が起こります。完全に死んだはずのタケル殿が、生き返ったのです。これは魂に関する眼魔の世界での科学に長けた仙人でも全く解析のできない、本当の奇跡です。

 そうして生き返ったタケル殿が手にした力こそが、ムゲン魂なのです。私はこれを、タケル殿が他の英雄眼魂と同じように一人の英雄になった瞬間なんじゃないかなと思っています。15の英雄と力を合わせるところからさらに先のステージですからね。

 しかもこのムゲン魂での戦闘がすごくかっこいいんですよ。まず、33話のうちは神々しく光っててムゲン魂の姿がハッキリ見えないんですよ。せっかく華々しく初登場したのに見えないというのが、むしろ特別な感じがしてすごく好きです。

◆視聴のススメ

 『ゴースト』はおそらく明確に一気に見たほうがいいライダーだと思われます。まとめて見ちゃったほうが作品全体のテーマ性といった大事な部分が薄れたりしませんので。

 あとはその……。序盤にいきなり出てくる、現代社会で生活してるのにロビンフッドにあこがれて義賊行動をとりたがる女子アナとか。機械的に戦うから全然倒しがいのない敵ばっかりになるところとか。終盤になってマコト兄ちゃんがタケル殿や本筋のストーリーと全然関係ない相手と何話もかけて何度も戦闘するところとか。気になる人はどうしても気になってしまう点がいくつかあるのは否定しようがないのが『ゴースト』なんですが、それでもすごく愛着の湧く作品なのでぜひ一度チャレンジしてほしいです。

 以上、今回は仮面ライダーゴーストについてお話ししました。『ゴースト』は陳腐に感じるけれど重要なテーマをまっすぐに伝えてくる不器用なところが好きです。あと、リアルタイムで見てた子供たちはどう思ったのかがすごく気になります。

 次回はいよいよ最終回、仮面ライダージオウについてお話しします。お楽しみに!

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