平成ライダー三ヶ月半で全部見た 剣(ブレイド)編

 こんにちは、マグロダです。
 
 「平成ライダー三ヶ月半で全部見た」とは、平成ライダーを二ヶ月で全部見ようとルーレットを回して作品を決めていたら、結局は全部見るのに三ヶ月半かかっちゃったチャレンジのことです。本記事では、視聴した作品を一作ずつ振り返っていきます。

 視聴の順番は完全ランダム。13回目の視聴作品もルーレットで決めたところ、今回見ることになったのは「仮面ライダー剣(ブレイド)」でした。『ブレイド』は2004~2005年にかけて放送されたライダーで、平成ライダーのナンバリングでいう5作目に位置づけられます。

 『剣』は私も子供のころに少しだけ視聴した記憶があり、主人公の仮面ライダーが金色になって超かっこいいことだけは覚えていました。あとはいくつかの『剣』にまつわるインターネットミームを見聞きしたことがある程度で、肝心の物語は何にも覚えていなかったんですよね。ですので非常に新鮮な気持ちで視聴できた一作でした。
 

■目次
・どんな作品?
・登場人物ピックアップ
・注目ポイント
・個人的名シーン
・視聴のススメ

◆どんな作品?

 仮面ライダー剣は、人類の生存のために戦うライダーたちの物語です。

 主人公の剣崎一真(けんざき かずま)くんは、仮面ライダーという仕事に就いていました。雇い先は人類基盤史研究所、通称「BOARD」。なぜ人類はこんなに発展したのか? という研究をしている組織です。

 BOARDは研究の末に驚愕の真実を発見しました。なんと地球上の様々な種類の生物から一匹ずつ代表を選出してバトルロイヤルを行い、頂点に立った個体の種族が一万年の間繁栄を約束されるという「バトルファイト」が行われていたというのです。人間の代表がかつてこの戦いに勝利したために、現代において人類は繁栄しているのでした。そして前回から一万年経過したことで、また新たなバトルファイトが始まったのです。

 各種族を代表している生物は「アンデッド」と呼ばれる特別な存在で、どんな方法でも殺すことはできません。しかしアンデッドが勝利することは人間以外の種族が一万年繁栄するということであり、それは現在の人類社会が維持できなくなること、ひいては人類滅亡を意味しています。

 ここで、仮面ライダーである剣崎くんの出番がやってきます。彼の仕事はアンデッドを倒して封印すること。BOARDの開発した仮面ライダーに変身する装備とアンデッドをカードに封印する技術を使って、バトルファイトの決着がつくのを防いでいるのです。

 しかし、そのBOARDが一話で壊滅。先輩ライダーは自分たちを裏切っているかもしれず、反対に人間を守ろうとするアンデッドも現れます。こうして剣崎くんは混迷する状況に追い込まれながらも、なぜ戦うのか、誰を守るためなのかと自分を見つめなおすことになっていくのです。


◆登場人物ピックアップ

剣崎 一真(けんざき かずま) :BOARDの社員。仮面ライダーブレイドに変身する。優しい正義漢であり、加えてすさまじく責任感が強い。しかし怒りっぽい性格でもあり、いきなり苦境に陥った序盤ではむしろそちらの側面のほうが色濃く表れている。幼いころに両親と共に火災にあい、自分だけ生き残った経験を持つ。「融合係数」というアンデッドの力を利用してライダーシステムで戦うための数値が極めて高い。

橘 朔也(たちばな さくや):BOARDの社員。仮面ライダーギャレンに変身する。純朴な人物で、騙されやすく、恐怖に弱い。そのためライダーシステムが人体に与える影響を恐れ、BOARDの所長である烏丸という人物とトラブルを起こしてしまう。本来の調子が出てくるのは15話くらい経ってから。巧みな戦闘技術と百発百中の射撃センスを持つ一流の戦士。

相川 始(あいかわ はじめ):人間に擬態したアンデッド。仮面ライダーカリスに変身する。喫茶店に居候している。クールで無機質な性格だが、居候先の少女を守ることにだけは執着を見せる。また、少しずつ人間らしい感情が芽生えていく。

上城 睦月(かみじょう むつき):高校生。仮面ライダーレンゲルに変身する。彼自身は穏やかな性格をしているが、凶暴なアンデッドに精神を乗っ取られてしまう。しかも全然邪悪なアンデッドの意志に打ち勝つことができず、かなり最後のほうまで乗っ取られっぱなしのまま。レンゲルは最強の仮面ライダー

◆注目ポイント

・シリアスなのに面白い序盤

 『剣』ですが、最初のほうの数話はかなり重苦しい展開が続きます。なぜそんなことになってしまったのかというと、剣崎くんの状況が単純にすっごく大ピンチなんですよね。所属組織のBOARDは研究所に保存していたアンデッドが暴走して壊滅しちゃうし、頼れる先輩の橘さんはなぜかアンデッドとの戦いを手助けしてくれずこちらを見ているだけ。おまけにアパートは家賃の滞納で追い出されています。

 こんな状況では精神状態も悪くなろうというもの。しかも転がり込んだ居候先の青年である小太郎くんが初対面でまあまあ失礼だったり、同じく居候の始さんが人間に擬態したアンデッドだと割と早期に発覚したり、BOARDの数少ない生存者で剣崎くんのバックアップをしてくれる女性が気が強くてあたりがキツかったりと、不和の種に事欠きません。

 そのうえ、橘さんに至っては自分をむしばむライダーシステムの幻覚に精神をさいなまれてしまい、最終的には敵に洗脳されてしまいます。このように『剣』は物語全体を通してみてみると、強敵が出てくる中盤以降はもとより戦うための基盤が破壊されてしまった序盤もかなり大ピンチなんです。とはいえ、ちゃんと活動しているBOARDって1話の最初の10分くらいしかないんですよね。初見だとこういう部分を汲み取るのは難しいので、私もやや困惑しながら視聴していた記憶があります。

 でも、なぜかそういう序盤も面白く視聴できたんですよね。どんな状況でも最終的には誰かのために戦うことを決める剣崎くんがかっこいいのも理由のひとつです。そしてもうひとつの理由がシリアスな笑いです。登場人物たちは真剣にやってるのになんでか面白い、みたいな状態がしばしば発生するんですよね。

 壊滅したBOARD基地からプァープァー鳴ってるサイレン音をBGMに物陰から微動だにせずこっちを見つめてくるギャレンとか、本当にびっくりするくらい面白いんですよ。あとはインターネットだと滑舌の悪さも有名ですよね。馬鹿にするまで行っちゃうのはよくないとは思うんですけど、個人的には緊張感のある場面でも面白がって視聴していいという許しを得たような感覚もあって、気軽に楽しく見れました。

・がんばれ睦月くん

 睦月くんがねー、もう本当にかわいそうなんですよ。この子は普通の高校生なんですけど、ある日アンデッドがBOARDの技術を応用して作った最強のベルトをなんかその辺で拾ってしまいます。『剣』のライダーシステムはトランプがモチーフになっており、各スートの1からキングまでの13枚のカードをそれぞれのライダーが扱います。必殺技を打つにも、各カードの力を利用するわけです。

 仮面ライダーに変身するには、エースに相当するアンデッドが封印されたカードをベルトにスキャンする必要があります。しかし睦月くんが手にしたレンゲルは非常に危険な状態でした。なにせクラブのエースで変身に必須のスパイダーアンデッドが、カードに封印されているにもかかわらず意志をもって暗躍しているのです!

 これにより睦月くんはスパイダーアンデッドに意識を乗っ取られたり、頑張ってベルトを捨てても勝手に家に帰ってきてしまうなど、どうにもならない状況に陥ってしまいます。このときの私は睦月くんをめちゃくちゃ応援していました。でも、その状態から睦月くんが全然覚醒しないんですよ。ずーっと意識を支配されっぱなしなんです。

 橘さんにしばらく修行をつけてもらっても肉体の操作権を奪い返せないし、チベットからやってきた優しいアンデッドが自分から睦月くんに封印されて精神を落ち着かせてもダメなんです。ぜんぜん睦月くんはスパイダーアンデッドに勝てないんです。そこはなにか強い意志の力とかそういうのでパワーアップしてくれよ……。

 そうしてしばらくしているうちに物語は佳境に入ってしまいライダーたちも生き残っているほかのアンデッドもどんどん強くなります。最初は最強のライダーとしてブイブイ言わせてたスパイダー睦月くんはケンカを吹っ掛けても適当にあしらわれるその辺のチンピラくらいにまで格が低下。ど、どうしてこんなことに……。

 そんな紆余曲折もあり、物語の最後のほうで睦月くんがようやくスパイダーアンデッドの支配から逃れ本当の仮面ライダーレンゲルとして戦えるようになったときはすごくうれしかったですね。いや、もうちょっと早くてもよかったでしょとは思ってますけど! ぜんぜん活躍できる時間が残ってないよ!
 

・剣崎くんと始さんの友情

 剣崎くんは本当に責任感の強い人物です。どれくらいかというと、子供の頃に一家で火災に遭って自分一人だけ生存したときに両親に対して「助けられなくてごめん」と思うほど。ほとんど不可抗力のような悲劇に対しても、自分の力が及ばなかったことを悔やむ人物なのです。そして彼は成長し、BOARDに就職して仮面ライダーとなり、世界中の人々を助けるために戦うようになりました。

 対して始さんはアンデッドです。しかし、彼は以前倒したヒューマンアンデッドを封印しカードとして所持していました。そこから働きかけを受け、また人間と暮らして生活をすることで、少しずつ人としての感情を得ていきます。アンデッドでありながら少しずつ人間に近づいているのです。

 剣崎くんは始さんと何度か衝突を繰り返しながらも、アンデッドである始さんと友情をはぐくみました。そうしているうちに、始さんは剣崎くんにとって守るべき人間と同じ存在になってしまったのです。しかしバトルファイトを終わらせるためには始さんも封印しなければなりません。というか、人間の代表であるヒューマンアンデッドがすでに敗北しているので、このままではそもそも人類滅亡です。

 果たして人類滅亡を回避する策はあるのか。あったとして、始さんは最後にどうなってしまうのか。『剣』の物語はそこに終着していくのです。


◆個人的名シーン

 私がお勧めしたいのは19話、ギャレンに変身した橘さんとレンゲルに変身した桐生という人物の戦いです。

 スパイダーアンデッドは睦月くんのほかにも自分が利用できる人間を探していました。それが桐生さんです。彼もまたBOARDの一員だったのですが、ライダーシステム第一号であるギャレンの変身者を決める試験で重傷を負ってしまったのです。合格したのは橘さん。彼に正義のために戦うという夢を託し、桐生さんはBOARDを去りました。

 しかし時がたち、桐生さんは自分の体を機械化してまで私的に悪人を裁く存在になってしまいました。そしてスパイダーアンデッドからの影響で精神が不安定な睦月くんの隙を突き、仮面ライダーレンゲルのベルトを奪い取ってしまいます。対して橘さんはアンデッドの洗脳からは立ち直ったものの、自分に仮面ライダーとして戦う資格があるのかと意気消沈。ギャレンのベルトを返上して仮面ライダーをほとんど引退してしまいます。

 これに桐生さんはますます激昂。おまけにスパイダーアンデッドの精神支配が桐生さんにも発動してしまい、自分は力が欲しかっただけで正義などどうでもよかったと断言するまでになってしまいます。橘さんは彼の変貌ぶりを見て、再び戦うことを決意します。かつて桐生さんから託された願いのために。

 そこからの橘さんが、もう本当に強いんです。橘さんの変身するギャレンは銃のライダーなんですけど、橘さんは銃とかそれ以前に近距離戦闘がめちゃくちゃ強いんですよね。長い棒で戦う桐生レンゲル相手に格闘で互角以上の立ち回りをします。

 そのうえ橘さんは銃の腕前も信じられないくらい良いです。どれだけゼロ距離で格闘をしようが銃撃を放てば百発百中。相手の攻撃をバク中回避しながら、空中での射撃も全弾必中させます。しかも桐生レンゲルが大技を打とうと腰のカード入れに手を伸ばせば、その手に向けて精密に連続射撃を命中させて相手に全く行動させません。

 こうして橘さんは勝利します。序盤は洗脳されたり恐怖で本来の実力を出せなかった橘さんが本来の実力を発揮できたらここまで強いのかと驚いた回でした。また、橘さんと桐生さんのやり取りもいいんですよね……ぜひ見てもらいたいです。

◆視聴のススメ

 『剣』は序盤こそやや重苦しい部分が強い展開ではあります。しかし少しずつ登場人物たちの関係が改善されてくると、どんどんキャラ同士の掛け合いやドラマの展開も盛り上がっていきます。なのでちょっと最初のほうがつらいと感じるタイプの方もゆっくり視聴を続けていただけると、どこかで『剣』を楽しめるタイミングが訪れるのではないかと思います。

 まあ、私は1話から突っ込みどころに爆笑しながら見まくるというあまり褒められたものでない視聴スタイルだったんですが……。でも話の根幹自体はすごくシリアスなのはひしひしと伝わっていたので、なんでこんなに二重の意味で面白くなってしまうんだ…? と首をひねりながら見ていました。


 以上、今回は仮面ライダー剣についてお話ししました。『剣』は話題にされがちなおもしろ場面だけでなく物語の展開なども個人的にはたいへん楽しめたので、一粒で二度おいしかったなって印象です。

 次回は仮面ライダークウガについてお話しします。お楽しみに!

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