見出し画像

「行列ができるいちご農園」を特別公開。この日だけのぜいたくツアー

今年も、アウトドアレストランツアー「FoodCamp」がシーズンイン!
2021年度の第1回は、あまりのおいしさに行列ができるいちご農園です。「その魅力を現地で体験できるのはこの日だけ!」という、一流パティシエによる「スイーツフルコース」のツアーでした。

隣に広い牧場が広がる、のどかな開拓地。県道から細い道を一本入った先に、「おざわ農園」(福島県須賀川市)はあります。大きな看板もなく、周りからはいちご農園があることもわかりません。

画像1

しかし今年も1月以降のトップシーズンは、平日もにぎわいます。
スーパーや道の駅では買えず、この農園でしか手に入らない「完熟苺」を、多くの人が買い求めに訪れるからです。色つやは素晴らしく、甘みと酸味のバランスが最高です。ぜひ現地に足を運び、味わっていただきたいと思います(6月上旬まで販売)。

画像2

なぜ、そんなに人気なのか。
またなぜ、人気の農園でシェフを呼んだツアーができるのか。

その答えを、土地や「FoodCamp」の歴史から、ひも解いていきたいと思います。

由緒ある「矢吹が原」の開拓者として

このあたり「矢吹が原」は、野鳥や野性動物たちの楽園でした。明治時代、皇室がキジや野ウサギを狩る御猟場となり、外国政府の要人も訪れ、国内外の名士が猟を楽しんだといいます。

そして宮内省直営の開墾地所として開拓が始まります。オランダから最新技術を取り入れ、日本初の西欧式牧場「岩瀬牧場」が誕生しました。唱歌「牧場の朝」のモデルとしても知られています。おざわ農園の隣にある牧場です。

矢吹が原は由緒ある土地でしたが、水利が悪い課題がありました。戦後、25キロ先の羽鳥ダムからの農業用水が整備され、農業地として発展します。小沢家も先々代が開拓で入り、当初は酪農や、産地として有名なきゅうり、そしていちごなど多角的に行っていたといいます。

画像3

「おざわ農園」がいちご専業農家になるのは、今の代表・小沢充博さんになってから。子どもの頃、いちごを目当てにやってくる同級生の姿に、いちご栽培を誇らしく感じていました。

東日本大震災がおこり、ハウスに放射能汚染はなかったものの、県内全体が風評被害に直面します。小沢さんは「不耕起栽培」と呼ばれる土を細かく耕さない栽培方法に変えることを決意しました。大型トラクターで耕すと出来がちな地面の下の硬盤を防ぎ、また機械で肥料を入れすぎることも抑えられます。
こうして「完熟苺」へのこだわりを強めていきます。

最新鋭のすごい装置

農園には、いろいろなタイプのハウスがありますが、中でも「ここにしかない」ハウスがこちら。

画像4

ハウスが艶めかしい色に変身しています(写真ではややわかりにくいですが…)

これは高出力LED装置です。梅雨など太陽の光が弱い時期に、光を補います。いちごにとって光合成に適した波長が、人間の目には艶めかしく映るようです。
去年の夏から設置して、秋から本格稼働しました。オランダのメーカー製で「研究開発」目的もある最新の取り組みで、いちご農家として導入しているのは日本唯一とのこと。

画像5

LEDライト、手を近づけると、あったかいです。太陽光の代わりに、多くのエネルギーを提供しています。
「ハウスでも雨が続くと収穫量が減ります。雪や雨など天候に左右されずに安定して栽培できる」ことがメリット。秋に植え付けたいちごは4~5月までの収穫が一般的ですが、おざわ農園では6月上旬まで収穫できるため、まだ農園で買い求めることが可能です。

足元には青いチューブがいちごのそばを通っています。光合成に必要な二酸化炭素を、大気より少し濃い状態で送っています。
このように装置を駆使し、データも緻密に計算しているのが、農園の特徴です。色や味のよい、おいしいいちごになるため、光と温度、湿度、二酸化炭素濃度という4つの要素をコントロールしています。

夜も装置を動かしているのかと思ったら、小沢さん曰く「いちごには、夜の仕事がある」。夜は呼吸という成長の役割があります。
数値を管理するだけでなく、「いちごをストレスなく光合成させる」手助けをすることで、バランスがとれた「完熟苺」ができあがります。

「Foodcamp」との深い縁

そんな企業秘密も詰まった農園。なぜFoodcampには協力し、そしてツアー客に農園を開放するのでしょうか。

実は、フードキャンプが始まる前から、深いつながりがあります。
震災後の2013年、福島の食を応援するレストラン「福ケッチャーノ」が郡山市にオープンします。そのプロモーションツアーとして、東京などからの訪問者のため、朝におざわ農園を訪問することになりました。ホテルの朝食代わりだったので急きょの企画でしたが、提供したのが、参加者が自分で、好きなだけ「完熟苺」をはさむサンドイッチ。参加者は大満足でした。
小沢さんにとっても、普段の農園が、客の反応や喜びなどを実感できる機会となりました。

その後、Foodcampの構想が進み、ツアーのテスト企画を農園で行うなどを経て、今では毎年ツアーを実施する人気企画となっています。
小沢さんは「農園の空気が一気におしゃれに変わる」と話す、不思議な体験ができる日となっています。

へたは「バンザイ」がポイント

画像6

そんな農園の秘密を、この日だけ特別に農園に入り、直接聞くことができます。
ツアー客に限った、この日だけの「いちご狩り」もあります。

ちなみに、おいしいいちごは「へたが反り返る」のがポイント。上の写真はもう少しかもですが、へたがバンザイするいちごが頃合いだそうです。

画像7

食べ方まで伝授いただきました。
「小さいいちごを、2つまとめて食べるのがおすすめ」。
さらには、「大きい粒は、横から食べて」。

いちごは、へた周辺より、先にいくほど甘くなります。大きいいちごではかむ場所で甘さに違いが出てしまいますが、横からたて半分に割くように食べると、いつもまんべんなくおいしく味わえるとのこと。

この日の天候は、あいにくの雨……
でも小沢さんは
「あいにくの雨ですが、いちごのコンディションが良いのがわかり、このイベントはうまくいく!と確信したんですよ」と前向き。
「昨日まで晴れでしたが、日差しが強いと赤くなりすぎて、味がのりづらくなる。昨日まで光合成した糖化合物が蓄積して、今日はやんわりと『玉伸び』して、実がゆっくりおいしくふくらんでいる」と説明します。

悪天候でツアー客はちょっと残念な気持ちでしたが、新たな発見がありました。

農園でしか買えない

いちごを「最もおいしい状態で食べてほしい」ため、販売方法も工夫しています。

完熟したいちごは日持ちがしません。JA、卸業者、スーパーや飲食店という流通経路を通ると、どうしても鮮度が落ちてしまいます。
そのため、スーパーなど一般流通は行わず、農園でのみ販売しています。いわゆる「直販」に切り替えました。

果物を「消費者の手元にいち早く届ける」ため、流通を工夫したり、ネット販売を導入したりするのが一般的な考え方ですが、ここでは人々が「わざわざ農園に喜んで買い求めにくる」農園なのです。

一流シェフとの「夢のコラボ」

そんな「完熟苺」の一番価値がある農園で、「おいしい感動」を提供できるのが、今回のツアー「完熟苺 Special Sweets Lunch Food Camp」。

シェフは、フランスの三ツ星レストラン「ピエール・ガニェール」のスーシェフパティシエなどを歴任した竹内孝弘さん。東京「ピエール・ガニェール」のシェフパティシエなども経て、現在は出身の茨城県笠間市で自身のお店「栗のいえ」を準備しています。

画像8

画像13

一流シェフと農家。二人の出会いは、実は4年前にさかのぼります。

生産者とシェフ、同じ食の世界ではありますが、必ずしもいつも交流があるわけではありません。フードキャンプで大きな協力をいただいている県内唯一の調理専門学校「日本調理技術専門学校」(郡山市)での交流が、背景にありました。
竹内シェフはすでに4年前、おざわ農園を訪れていて、ついにツアーでのコラボが実現しました。

小沢さんが「今日の実現が夢でした」と冒頭であいさつすると、竹内シェフも「小沢さんのいちごでぜひやりたいと考えていた」といいます。生産者とシェフの相思相愛でのスペシャルランチが実現しました。

こうした生産者とシェフの「出会い」と新たな創造も、ツアーの醍醐味。
詳しくは、「FoodCamp」をまとめた本が発売されたので、じっくり読むことができます。下記サイトから購入可能で、福島県内では「岩瀬書店」「ジュンク堂書店」「みどり書房」でも購入できます。

この日限りの、農園での「スイーツフルコース」。
この場所でしか味わえない感動がありました。

画像9

画像10

画像11

画像12

「スイーツフルコース」ツアー、今回も人気のツアーに。
現地を訪れることで、生産者、シェフ、そして福島の大地の魅力を実感できます。

一度味わうとやみつきになるフードキャンプ。今後のツアー日程はこちらです。

感染防止対策を徹底し、県外からも参加可能です。
今から行きたい生産者やツアーの日程調整をしてみてはいかがでしょうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?