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藤浪投手は、酒を飲むか、脳を焼くかだ!

自転車で歩道の人混みの中に入ってしまったような時は、スピードを落としつつ、微妙なハンドルさばきを強いられます。
なかなかバランスを保つのが難しくなります。
そんな時はブレーキをかけながら力強く自転車を漕ぐという進み方をすれば、不思議とバランスが取りやすくなります。アクセルとブレーキを同時に踏むような感じです。こうすると、歩くよりずっと遅い速度でも、ふらつくことなく、歩行者をうまくかわしながら進むことができます。

細かい微妙な運動の制御をしたい時は、大きな力を拮抗させる中でバランスを取った方がうまくいくのです。

水温を1度未満の高精度で恒温制御するような設備を扱ったことがあるのですが、常にギンギンに冷やしながら加熱するような制御をしていました。
狙いの温度を下回れば冷却は止めて加熱し、上回れば加熱は止めて冷却するといったようなチマチマした制御ではなく、冷却は常にフルパワー、一方で加熱を上げたり下げたりといった制御でした。
なぜそういった制御を採用しているのか、その工学的説明は割愛しますが、とにかく微妙な制御ほど、力の拮抗を利用したほうがいいのです。

実は筋肉が微妙な動作をする時は、常に力を拮抗させています。
上へ動く動作の中には、下へ動く力も加わっているのです。
そんな力の拮抗が一番わかりやすいのが、ゆっくり静止させる動作です。
お箸で豆などをつまんで持ち上げて止めるような映像を見れば、たいがい箸先が震えています。
あれが力の拮抗ですね。複数の動きの力を拮抗させているのです。
その時に起こる微妙な震えを「振戦」と言います。震え=振え、つまり振動との戦いです。人間はこの震えを完全に止めることができません。

ボクはその震えが人一倍大きいのが悩みの種でした。
特に人が見ていると緊張して余計に震えがひどくなります。
結婚式で受付の記名で字が書けなかったり、食事の席でスープがうまく飲めなかったり、お酒がうまく注げなかったり、タッチパネルを間違って押したり、ずいぶん苦しみました。
年々それがひどくなっていくので調べると、「本態性振戦」などという恐ろしげな病名が付けられているのを発見したのです。
本態性とは原因不明という意味だそうです。原因不明なので治しようがないとのことです。
病気というより体質に近いものだから原因不明なのだとも言われています。
それでも緩和する薬が保険適用で手に入ることがわかり、今は定期的に心療内科に通って処方してもらっております。

おそらくそのせいかボクは手先が不器用です。
工作や製図などの細かい作業が苦手でした。仕事でガラス器具やら工具を扱っていましたが、生傷が絶えませんでした。
習字を長く習っていましたが、人より上達が遅いと感じていました。小さい字(左に書く署名など)が特に苦手でした。
そして中学バスケ部時代、ボクはフリースローが超苦手でした。
セットプレーの緊張の中、指先がわずかな振戦を起こして微妙に狂うのでしょう。
なぜかランニングスローは逆に得意中の得意でしたが。
不器用さは振戦と大きく関係していると感じています。手先・指先の力の拮抗がうまくできないのです。

前の会社で手先がすこぶる器用な後輩がいました。実験器具の細かい取り扱いが芸術的だったのです。細かな字を綺麗に書いていました。
試しに箸を持たせると、箸先をぴたっと止めることができました。
彼も元バスケ部だったので聞いてみると、案の定フリースローは超得意だったとのことでした。

本態性振戦は飲酒によっても震えが収まるようです。
飲む前は震えていても、飲んでいるうちに震えが収まるって、まるでアル中患者のようです。
ボクの場合、そもそもの習慣としてアル中予備軍の先頭集団にいるので区別しにくい話なのですが。

最近、服用している薬が効きにくくなってきたので調べてみると、本態性振戦を治療する方法がいろいろと開発され、保険適用されつつあることがわかりました。
なんと脳の一部を焼くのだそうです。
以前は開頭して焼いていたのですが、開頭せずに遠隔でも焼けるようになったのだとか。
なんでも超音波を集束させるのだそうです。
今よりひどくなったら試してみようかと思っています。

さてタイトルの「藤浪晋太郎」選手。
元阪神タイガースのピッチャーで、今はメジャーリーグ挑戦中です。
しかしコントロールが定まらず、登板のたびに炎上を繰り返しています。
プロ入り3年目くらいまでは、同学年でプロ同期の大谷選手に負けない活躍を見せていたのに。(同級生という表現が散見されるけど、クラスメイトではないです)
タイガースファンとして、大谷選手の大活躍とはあまりにも対照的なので心が痛みます。

そう、言いたいのは、彼の不調の根本原因は「本態性振戦」なのではないかと。
本態性振戦になる人は早くて20歳くらいから顕著に症状が現れるそうです。
彼がコントロールに苦しみ、調子を落としていったのは23-24歳の頃です。
巷で言われる原因はイップスとか、身体のメカニクスとかいろいろ言われています。
ただ彼もそれらに対して取り組んできたでしょう。しかし効果がありませんでした。
本態性振戦はコントロール系のスポーツ(ゴルフ、アーチェリー、射撃など)と極めて関係が深いと思っています。
ボクは自分がその病気だからそうじゃないかと思っているのです。

だから藤浪選手よ、登板前に一杯ひっかけるのだ。
違うか。
いちど脳を焼いてみたら、という話でした。それではまた。


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