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【サッカーに関わる女性がもう一度帰ってこられるような“Casa feliz”を作りたい】interview📝

女性アスリートや、女性コーチ・トレーナーの今を考える。

僕自身、恥ずかしながらも今まで男性スポーツの中にずっと居続けた訳で、何一つ事情を把握しておらず、世界観もまったく分からない。

そんな事もあり、理学療法士の資格を持ち、トレーナー兼サッカー指導者B級ライセンス保持者コーチである、ちあきコーチに話を伺ってみたのだ。

今回が後編である。(前編はコチラ)

【女性アスリートと男性アスリートとでは、情報処理の仕方が違う】

ーーパーソナルトレーナーやサッカーコーチを務めるちあきコーチからみて、「男性アスリートと女性アスリートの違い」ってどういった所にありますか?

「私の場合、男性アスリートに対する知見は整形外科に勤めていた時に診ていた位の経験談となってしまうのですが。
女性・女の子の方が、頭で身体の動かし方を理解させ、それを体現していく。という指導を執った方がストンと落ちるアスリートが多いですね。
男性アスリートの場合はとにかくやって見せて、後はキューイングによる修正で感覚を自分で掴む選手が多い印象ですね」

ーーキューイングってなんですか?

「運動の指導時の声かけの事をキューイングと言います。『少し小指にかけてみよう!』とか」

ーーなるほど。

「一方、女性は『重心は軽く保ちながら、この感覚を大事にして、素早くやってみよう』と具体的且つ相手の反応を確かめながら行うと、上手くいく事が多かった印象です。競技レベルによっても異なるかもしれませんがね」

ーー男性アスリートと女性アスリートとでは、身体を動かすメカニズムは違うんですかね。

「もちろん、女性アスリートの中にも、やって見せるだけで感覚を得てしまう方もいますが、そういったアスリートはその感覚を既に持っているので、更に次のステップへとスムーズに進む事が出来ますね。
男性、女性アスリートにおいて、こういった現象が起こる事については、情報処理が男女で異なる点があり、脳の解剖又は生理学的な側面から来てる部分もあるかもしれません」

ーーおもしろいですね。勉強になります。だったら、コンディショニング(自身の体調のピークを試合日に持って来られるように調整する事)においても、男性、女性アスリートによってはやり方も変わってくるんですか?

「そこは大きく変わりはないと思いますよ。ただ、女性はやはりホルモン周期による身体と心のバランスがあるので、そこをコントロールしていくことは重要かと思います。
ホルモンの周期によっては、靭帯が弛緩の時期に入る事もあります。靭帯損傷が起こりやすくなったりだとか。
海外チームでは、月経周期も加味してトレーニングを組んでいるところもあるくらいですね」

【大事なのは性別ではなく、その選手自身と向き合う事】

ーーそういった知識って一般トレーナーの方も修得されているんですか?

「習うとは思いますし、男女どちらも見た事がある方なら、体感として分かって来るとは思います」

女性アスリートは果たしてどう思っているのだろう。僕は紛れもなく男性であり、女性特有の生理現象や身体の構造を頭では分かっていたとしても、体感した事は無いし、これから体感する事も出来ない。

女性アスリートは、そんな体感した事の無い男性トレーナーに対して、自分のコンディションやパフォーマンスに関する悩みを100%吐露する事が出来るのだろうか。

女性アスリートにとっては、あんまり事情を分かっていない男性トレーナーの方がかえって相談しやすい。という場合もあるのか。

もしくは、ちあきコーチのような経験豊富で知識も豊富にある女性トレーナーが付いてくれた方が安心してプレーに望めるのか。

「選手がどう思っているのかという所は図り切れないですね。私は、女性トレーナーとして少しでも助けになればと思ってます。
ただし、あんまり『女性だからこうすればいい』とか『この怪我だからこうすればいい』とかカテゴライズして当てはめるのではなく、個別性をもって、『その人』を観るようには意識してます」

確かにそうだ。男性だから、女性だからと、カテゴライズし、そこに当てはまる知識をそのままぶつけてしまうのはもっての他だ。

もちろん、男性と女性とでは身体の構造が明らかに違うのだから、そこに関する差異知識は蓄えていた方が良いが、それが全てではない。

ちあきコーチは、男性なのか女性なのか、が大事なのではなく、その選手自身と向き合い、その選手の個別性にあったアプローチを取る事の大切さを教えてくれた。

そのなかでも、女性トレーナーという特異性を活かす。それがちあきコーチの目指す道なのだろうか。

だとしたら、そんなちあきコーチみたいな女性トレーナーが増えるに越した事はないと思うのだが、ちあきコーチはどう思うのだろう。

「もちろん、そう思いますが、難しい面もあります」

ーーどういうことですか?

「一般的な女性キャリア問題でも語られている事だとは思うのですが、やはり女性にはライフイベントでどうしようも無く現場を抜けなければいけない瞬間があると思うんですね。結婚、出産とか。そんな時に、その時は現場を抜けたとしても、その状況を許容できる組織があればと思いますね」

【サッカーに関わる女性が帰って来れるような“Casa feliz”を作りたい】

ーー許容できる組織ですか?

「そうですね。もちろん自己都合だけを許すという訳では無く、その時々のライフイベントの際には『いってらっしゃーい!』と、そのライフイベントが終わって現場復帰をする際には『おかえり!』と迎えられる組織ですね。そういうのがあれば、女性トレーナーやコーチのキャリアが途絶えたり、一握りの人しか続けられない、という状況は少ななるのかなと思います」

ーー結婚や出産などで活動が出来ない時でも雇用状態をなんだかの形で維持出来ればいいですよね。

「私としてはその期間の保障まで考えてなかったですが、必要な事ですね。
そこが保証されてないとやりたくないですし。
雇用じゃなくても、単発でも現場に行ける状況からでもいいと思うんですよ。『どうせ少しの間休む事になってしまうから、今後も出来ません…』という方も多いので、月に一回とか、二ヶ月に一回でも、関係を維持出来るような、繋がりが切れない状態が必要かもしれません」

ーーちなみにちあきコーチはそのような現実を実現させる為にはどうすればいいと思いますか?又は既に取り組んでいる事はありますか?

「そうですね。そこに関して言うと、『女性コーチ・トレーナーのコミュニティ作り』を今はやっています。女性コーチが活躍できる場を提供出来ればなと」

ーー女性コーチが活躍できる場ですか?

「はい。例えばコーチやトレーナー業だけでは稼げない。仕事の掛け持ちは厳しい。結婚や出産で2年は抜けたい。このように色々な悩みや課題を持った女性コーチ・トレーナーの意見を聞いて、互いの悩みや課題を補完し合えるようなコミュニティを作りたいです」
「もしよければ、こちらの『note』を読んでほしいんですが、コンセプトは“Casa feliz”です。サッカーに関わる女性が一度離れたとしても、また帰って来れるような“しあわせな家”を作りたい。そう思っています」

ーー素晴らしいですね。最後に今の夢・取り組みたい事を教えてください。

「スクールやパーソナルトレーニングを有償で出来るように自分自身の価値を高めて、そこで出た利益を『女性コーチ・トレーナーの支援』に使えればと思っています。
今の私には身の回りの人を助けるくらいしか出来ませんが、そうやって少しでも助けになった人が、他の人を助けることで輪が広がればと思っています」

ーーありがとうございました。

いま、このような悩みや課題を抱えている方は是非、ちあきコーチまで、相談を飛ばして欲しいと思う。

きっと彼女自身もこの問題と真剣に向き合ってきた為、誰よりもその気持ちが分かるし、今も尚、最適解を求めているのだから、そういった人達が集まれば怖いものはないだろう。

困ったときこそ、人間は固まり、強く生きる。

僕自身も、今回のインタビューを通して、女性アスリートや女子サッカー界の現状、サッカーに関わる女性のキャリアの築き方を考察する事が出来た。

これを機に今後はより問題意識をもって、取り組んで行きたいと思う。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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