始発待ちアンダーグラウンド讃

自粛生活が始まり、ライブにも行けず、そもそもライブが行われず、このままアイドルへの興味を失いドルヲタになる以前の生活に戻るのだろうかと思っていたら、配信ライブを通じて新たに好きなアイドルができてしまった。

グループ名を始発待ちアンダーグラウンドという。
コンセプトは、渋谷で終電を逃した女の子たちが暇つぶしに結成した、らしい。
初めて見たのは、ヌュアンス、毒島大蛇とのスリーマンの無観客配信ライブだった。
音源で聴いた時はロック系のアイドルという印象だったけれど、それだけではなく昭和歌謡的ないなたいムードも漂うショーとしての完成度に驚かされた。すっごく楽しかった。

その後、配信ライブをチェックしながら、各メンバーのSNSやインタビュー記事などでそれぞれの個性を知るにつれ、どんどんハマっていった。
単純なカテゴライズを拒否するような超時代的でシブい楽曲も良いし、趣味嗜好の異なるメンバー同士がお互いを尊重しつつ自分の好きなことをやる、という理想的な関係性のように思えるところも良い。

そして、7月24日。この日は西永福JAMで、始発待ちにとって自粛期間以降はじめてとなる有観客でのイベントが行われた。

ライブ自体、とても良かった。

ナルシストを自称するムラタ・ヒナギクさんの陶酔的で圧巻のパフォーマンスと、弾けたMCのギャップ。

愛くるしいビジュアルで、鼻にかかった甘い声からドスの効いた低音まで使いこなすオクヤマ・ウイさん。

ゴスっぽいビジュアルで衣装の制作も手掛けるフカミ・アスミさんの繊細な歌声と、よくわからない「お告げ」のコーナー。

3人の個性が存分に発揮され、とても楽しかった。

そして最後の曲「くだらない世界」では、ムラタさんが涙を流していた。
何曲か前まで、声を出さずに応援する客席に「みんな声出さずにえらいねえー」と元保育士さんらしい母性を振りまき、間奏中、観客に手を上げさせそのままじゃんけんをするなど、自由にふざけていたムラタさんだけに、その涙は鮮烈で感動的だった。

目の前の観客たちを楽しませることと、たぎる感情を爆発させること。
エンターテインメントとエモーショナルのどちらも全力でやり切るアイドルだからこそ、こんなにこのグループに心を惹かれたのだろう。

別に涙を流すことだけが感情表現ではないし、泣いたから偉いわけでもない。
そもそもムラタさんの涙の理由も勝手に想像しているだけだけれど、もしそこに「ファンの前でライブができる喜び」や「ファンの前でライブができなかった(できない)悲しみ」が含まれていたのなら、始発待ちアンダーグラウンドのファンはとても幸せだと思う。

今回は配信を通じて画面越しに眺めていたけれど、早く会場で直接、幸せなライブの空気をファンのひとりとして感じたい、そうなる日が来てほしい、と心から思った。

8月7日まではアーカイブの購入もできるようなので、見逃した方はぜひ。


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