「青春を鳴らして、何度でも。」

 ちょうど1ヶ月前のまなみのりさツアー柏公演に続いてのツーマンライブで、今度は二丁魁が主催。「まみりとの最後のツーマン」という告知に、解散を実感せざるを得ない。
 会場に向かいながらSpotifyでまみりの曲をランダム再生したら、1曲目が「かかとを鳴らして」で、会場に着くまで延々とリピートしてしまった。

 まなみのりさの3人による「ぴんぽんぱんぽーん」の影ナレがとんでもなくかわいくて無邪気で素敵だった。15年以上のキャリアでこんなにイノセントでいられるのが信じられない。

 まみりの中では割と異質でレアな曲「TOKYO」からスタート。この日にかける意気込みを感じた。
 定番曲「花びら」の後、最初のMCで二丁魁への思いや、昨日がミキティーのお誕生日だったことに触れて、ミキティーが以前から好きだと言っていた「できるなら」を披露。
 前回の柏公演はツーマンの究極形態のようなエモーショナルなライブだったけど、今回はミキティーへのお祝いも込められている分、すこし肩の力を抜いた楽しさも加わっていた。
 「かかとを鳴らして」でも曲中、3人の笑顔が見えて、でもそれがかえって胸を締め付けられて泣いてしまった。
 「Luck Song」はいつもグッズ紹介などで歌がカットされる(おサボりタイム)のだけど、ひさしぶりにフルで聴けた気がする。途中でまなみさんが青春の振りコピをしていてニコニコになった。
 まみりが「Luck Song」を歌い、二丁魁が「まるもうけ」からスタートしたこと、お互いのこの日への想いが呼応しているようだった。二組で一つの物語を作り上げるツーマン。

 「おなカマの皆さんは二丁魁のみんなとこれからも素敵な時間を過ごしてください」というMCの言葉、おなカマのひとりとしてはもちろん嬉しかったし感動したのだけど、その一方で、まみりのファンの人たちの心情を思って胸が痛くなったりもした。「栞」の歌詞もそうだけど、まみりさんは本当に優しくて不器用なんだと思う。


 「まるもうけ」から始まった二丁魁は、序盤は明るい曲が中心。まみりファンの人たちも振りコピで盛り上がってくれていた。まみりと二丁魁の出会いだけでなく、まみりファンが二丁魁に、二丁魁のファンがまみりに出会えたこと、それぞれの出会いに意味があることも嬉しい。

 中盤、「隕石に願いを」からはセトリの雰囲気が変わり、まみりのファンの人たちにこそ届いてほしい曲ばかりだった。「隕石に願いを」はミキティーからおなカマにあてたラブレターのような歌詞なのだけど、まなみのりさからまみりファンに向けたメッセージを二丁魁が代読しているようにも感じてしまった。
 「隕石に願いを」の「色褪せたTシャツもひび割れた画面も声も」のパートを聴きながら、栞の「積み重なったCD 着なくなった衣装 ズタボロになった足の裏」を思い出していた。
 アイドルに会いに来るファンが大切に抱えてきたものと、ファンの前に立つアイドルが必死に守ってきたもの。「もし消えてしまったとしても また作るから また作ろうね」

 「そっ閉じ青春」で紅さんが歌う2Bの「全てを照らしたいんだ」が本当に素晴らしかった。まっすぐで力強くて、言葉の通り全てを照らす歌声。
 そして「眩しい明日が来るから」のユニゾンもたまらなく良かった。過去最高の「眩しい明日が来るから」だった。
 二丁魁の歌は生き物なので、同じ曲・フレーズでも日によってぜんぜん異なる表現がされることがある。自分に言い聞かせるような「眩しい明日が来るから」だったり、聴く者の心に寄り添い慰めるようだったり、この場にいない人も含めた祈りのようだったり。
 この日の「眩しい明日が来るから」は「願い」だった。祈りよりももっと具体的で切迫した、どうかそうであってくれ、という願い。
 前回の柏パルーザの時も今日のライブも、まみりのファンに向けて歌っているように感じていた。でも、もしかしたらそれは間違いで、まなみのりさ3人のために歌っていたのかなと思い直した。届ける相手の顔を思い描きながらでなければ、あんな表現はできない歌い方だった。

 MCを挟んでからコラボ。
 二丁魁の「かかとを鳴らして」の間奏で、メンバーたちが両手を当てて耳をすませるところで、客席から手拍子が起きたのが忘れられない。あれが青春を鳴らす音だよ。
 そういえば、まみりの「かかとを鳴らして」では、りささんの「かかとを鳴らして⤴︎」のセリフがいつもと違い語尾を上げる言い方で、「かかとを鳴らしてほしい」という意味に聴こえた。それがこの場面につながったような気がした。

 まみりの「青春は何度でもやり直せるなんて嘘だ」は前回と違い音源もアレンジして、ピッチを上げて完コピしていた。今まで曲交換って、歌っている側のファンが主に喜ぶものだと思っていたけど、歌われる側がここまで嬉しいことも珍しいんじゃないか。まみりに歌ってもらえる曲は幸せだろうな。

 最後は二丁魁とまみりの7人で「Good As Yesterday」。この選曲はちょっとびっくりした。
 「どれだけ時間がかかるかわかんないけど 遠回りしてでも探してみようよ 一緒に そしていつか青い空の下まだ見つからない なんて言いながら 共に笑い転げよう」
 ふつうのアイドルソングだったら、「いっしょに幸せになろう」「いっしょに夢を掴もう」みたいな歌詞になりそうなところを、この曲は「ゴールが見つからなくても、見つからないゴールをずっと一緒に探そう」と歌っていて、それはもうプロポーズじゃん。それをこの場で、まなみのりさと一緒に歌うことの意味について考えてしまった。
 でもまあ、それは深読みしすぎで「昨日のことも 今日もこの先も 全部覚えて おくから」をまみりの3人に歌ってもらうことに意味があったんだろう。
 とにかく美しくてあたたかいコラボだった。これで最後だから、ではなくて、しあわせな瞬間だったから、いつまでも忘れずに覚えていたいと思えるコラボで、そんな一日で、本当によかった。

 今日のツーマンは、二丁魁からまなみのりさに贈られた餞のプレゼントのようなライブだったと思う。自分も青春を鳴らす音の一部としてその場にいることができて、とても嬉しい。

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