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「寝ても覚めてもずっと食べたいなって思えるほどの好物ある?」
「黒雲母」
「鉱物だよそれは。お前はイシツブテかよ」
「そこまで固執できる食べ物はないなぁ」
「戻すし。話を。俺はとうもろこし」
「それは初耳。食ってるところ見たことないけど」
「そりゃ学校じゃ両手食いみたいな派手なことはできないからね」
「あっ、大元なんだ」
「『とうもろこし味のなんたら』みたいなのは体が受け付けない」
「えっ、厄介なファンみたいだね」
「コーンポタージュまでなら許す」
「あれこそ元祖『とうもろこし味の汁』なのに」
「あれはもうとうもろこし側からOKでてるからな」
「そんな事務所みたいなところに所属してるの? だとしたらお前本当に厄介なファンだね」
「俺が許せないのはな」
「さっきから3回に1回ぐらいしか返事がこない」
「済まない。ただな、俺には一つ本当に許せないものがある」
「はい、なんでしょう」
「『うまい棒のコーンポタージュ味』な」
「なんでよあれ美味しいじゃん……って話ではないんだよな。わかってる。わかってるから睨んでくれるな」
「あれさ、とうもろこし側から特別許されてるコーンポタージュに、さらにあやかる形じゃん? なんなのあれ。もとを辿ればただのサクサクしたサクサクじゃん」
「検索していいか? サクサクしたサクサク。俺よくわからないんだ」
「スルーしてください」
「多目にみろよ、うまい棒ってあれ自分の味がないんだからそこは縋らせてやれよ」
「もしかしてお前もうまい棒にひと味食わされたことが……!?」
「ひと味どころかいっぱい食ってるし」
「やっぱ一回もろこし裁判官たる俺に顔見せしてから売り出すべきだったよな。生まれるタイミングを間違えた」
「厄介ファンから厄介司法になってしまった。手に負えないぜ」

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