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「応接室って入ったことある?」
「あぁ、問題児が親と一緒に収容されるとこ?」
「まず檻じゃねぇ。表現に淀みがありすぎる。まぁ確かにそんな印象はあるけども」
「ドラマで応接室が出るシーンなんて生徒が問題起こした時か問題抱えた親が直談判しにくる時かの二択でしょ。そうなりたいの? やめとけば?」
「怒られてる?」
「グレるのかと思って」
「グレる勇気はない。けど応接室には入ってみたい」
「詰みじゃん。問題起こさないとフラグが立ちません」
「もー最後までドラマの話じゃん。ほら、めっちゃとっさに人助けた時とかに感謝状を応接室で受け取ってるイメージない?」
「あー、確かに」
「ああなりたい」
「とっさに人助けるメンタルある〜? へたれでしょ」
「今日の風当たり強いな〜! そんなに無謀な話をしているんかいな俺は」
「グレるよりかは現実味ありそうだけどそんなほいほい命の危機に瀕した人転がってないでしょ」
「そこなんだよな〜。状況がないわけ。じゃあ作るしかないじゃん」
「おいお前まさか」
「ちょっとお前不良に絡んでちょっとした危機に瀕してくんない?」
「サイコサイコ! 俺とお前って友達じゃなかったのか!?」
「友達の願いを叶えるのは……」
「友達の特権だけどそのために身を捧げるのはそれほぼ奴隷か信者だな」
「そうかぁ。俺はただ不良に真っ当な逆ギレをして欲しいだけだったんだけど」
「真っ当な逆ギレはこの世に存在しない。多分そうなった場合俺の親が許さないから学校に呼び出されちまうな」
「あっじゃあ俺もお前も応接室チャレンジ成功じゃん」
「もうお前が逆ギレすれば済む話じゃんって言おうと思ったけどお前は『痛いのがやだ』って言うだろうからこの話は終わりです詰みだらけ」
「痛いのがやだ」
「言うし」

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