【アルバム紹介】memorabilia / ユジー
初めまして。まかと申します。
好きなアルバムを紹介させていただこうと思います。
最初に取り上げたいのは、
ユジーさんのアルバム「memorabilia」。Vocalは、1枚通して初音ミクです。
2015年末のC89で発売されました。
ユジーさんの代表曲「ミルククラウン・オン・ソーネチカ」を含む、これまでの投稿作品など10曲が収録されています。
「memorabilia」は、「記憶に値する事柄」とのこと。大切な思い出、といった意味でしょうか。作者コメントは「記憶たちの行き先」。
1.ブラックアウト
御伽噺の世界に誘うオルゴールのようなイントロから始まります。
「投げ売った不浄の清純を買い戻して
恋い焦がれること赦してはくれますか?」
という女性がモチーフ。
「蜜と一緒に持っていけ」。最後には「羽 千切って サヨナラ」と暗転して物語は閉じます。
いわゆる……には、様々な隠語がありますが、「宵の煉瓦通りの夜蝶市」という歌い出しにある「夜蝶」という言葉は魅惑的で、それに準えられたお洒落な曲です。
2.ミルククラウン・オン・ソーネチカ
「わたしの、ちっちゃな戴冠式」。
跳ねるような軽快なリズムに載せられた、色も塗ってくれなかった女の子の歌。
あまりにも名曲なのでタイトルの意味を少し。ミルククラウンとは、牛乳の水面にひとしずく落とした時に、王冠状になる現象のことです。
「膝を折って耐えていたって助けてもくれなかった
あんまりじゃないですが一人ずれてないですかそうですか
持たざる者が懺悔したって知らんぷりですか」
という女の子が、世界に許しを請うのを辞めて、自分のことは自分で決めるお姫様になる、という物語を、反発から生まれた真っ白な王冠というモチーフで例えていると思います。
3.フローリシュコロール
英語にすれば、「Flourish Koror」。フローリシュは、繁栄する、花開く。コロールとは、東南アジアのパラオの都市です。
今にも花開こうとしている街の情景が浮かんでくる曲です。
「また色を失くした時
魔法みたいなその指先で
駆け上がる階段の上
色づき待つキャンバスで待ち合わせ」
色を失くした、とは前曲のソーネチカなのでしょうか。欲しかったものを掴んだ彼女の様子にほっこりとします。
冒頭から、「黒」「白」と来た結果、この曲がより華やかなものに感じられます。
4.ハーテッド・ドール
「それでも、生きていいの。」
ハーテッドとは「hurted(文法的には?)」、もしくは「hearted」でしょうか。「壊れかけのオモチャ」、であるとともに「心を持たされた人形」と自嘲する掛詞なのかもしれません。
5.メロウバースデー・イブ
「だからその前夜にね。」
誕生日という特別な日の前夜。明日は、私をどんな私の知らない私にしてくれるだろう、というたゆたう気持ちを描いた曲。子供のころ、というか今もですが、底知れない夜の世界に対する憧憬を思い起こさせてくれます。
6.エキソダス
「error達の革命」
エキソダスは英語で「exodus」で、「脱出」といった意味でしょうか。
ちょっと不思議な雰囲気の曲です。
「今日より明日がもっと ずっと最低だったとして
きっとこうやって笑う事 選んだんだって
初めての呼吸をした ちょっと灰の匂いがした」
自分の意思で選ぶ事こそが、自分の革命であり、生きている実感(灰の匂い)がした。そんな日に鳴り響く鐘はどんな音色なのでしょうか。
7.メモリアフラワートーチ
「浮遊するきみの生命」
綺麗な曲です。花束は、いつか枯れ落ちる。だから花束自体が儚さを飾り立てている。
8.シンセリティパルス
「禁じられた恋人たち」
このアルバムで一番好きな曲です。ミクの調声も最も美しい。
「禁じられた恋 残酷な時が連れ去り行く「私」の証明
終わらせないでずっと、止め置いてください今日の日を」
生命を持たないものが、あなたがいなければ私の証明ができない、消えないでと願い求める姿が切ないです。応答を求めるパルスはいつまでも発され続けるのでしょう。
9.0番停車場前「碧の庭」
これまでの物語たちに運ばれてきた先のエピローグになっています。
「またおやすみ」
10.ミルククラウン・オン・ソーネチカ jazz arrange (Instrumental)
ニコニコ動画に投稿されているGUMI歌唱アレンジ版のインストとなっています。
ユジーさんと初音ミク(Append)の魅力が詰まったとても素敵なアルバムとなっています。ぜひ聴いていただきたい一枚です。
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