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15歳の娘が男だと言い出した。(その3)

たかが振袖、されど振袖。。。
それからしばらくは、「着なさいよ!いや着ないから」で散々揉める日々を送った。

現在住んでいる地域から、かなり距離のある土地での結婚式。

母娘間で繰り広げられていた「着る、着ない」攻防戦は、依然と続いていたが、
飛行機の手配をしたり、家族全員、仕事や学校を調整して、結婚式に参列することは、楽しみにしていた。

結局当日は、振袖を着たSちゃんだったが、髪はバッサリショートになっていた。
着付け会場でのメイクもヘアセットも拒否し、着物だけ着て出席した。
母よりも身長が高く、見た目も実年齢より、とても大人っぽい容姿のSちゃん。
着付中は始終、仏頂面でニコリともしないだけでなく、着付け担当の美容師さんにも愛想ひとつなし。
横にいる私は、申し訳なくて、ハラハラ。
美容師さんは、態度の悪いSが、実は、まだ中学生だとわかると、一転、態度が軟化し、苦しくないかなど、始終気を遣ってくださった。それに対しては、娘も失礼のない態度で接することができていたように思う。

振り返れば、この時の私は、Sちゃんの気持ちを、思春期特有のわがままだとしか、捉えていなかった。
姪っ子の晴れの日を、反抗期Sのわがままでぶち壊したりしたら大変だと、、
いや、違うかな、親戚や参列者の手前、体裁だけを気にしていたんだ。

姉が、姪っ子の晴れ姿と同じようにSの晴れ着も楽しみにしてくれていたのは、事実だが、それをSの気が変わったから、やっぱりやーめた、なんて、言えるわけがないと思い込んでいた。
自分の保身のために、必死にSを説得しようと、違う、親の権威を使って彼女を頭ごなしに押さえつけたんだ(泣)。。。

体も大きく、非理論的な一丁前の主張をする15歳だが、とても聡明な子でもある。
彼女なりの葛藤が、もうこの時からあったに違いない。
どうして、優しく受容できなかったのだろうか、私。。。
着たくないと言う気持ちの背後にある、あの娘の思い、もしあの時に聞いてあげられていたのなら、、今の未来は変わっていたのかな。。。。。

結婚式の直後、着用していた振袖を脱がせ、たとう紙に着物を畳んでいた私の背中に向かって、彼女ははっきりと言った。
「ママ、私、もう一生振袖は着ないから。」

続く


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