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【司法試験/予備試験】点数が伸びない論文答案6選(前編)

「学ぶって、楽しすぎる。」-弁護士の岩瀬雄飛です。

本noteでは学ぶことの面白さや学習のノウハウ等を発信するとともに、自分が学んだことの記録を発信しています。

今日のテーマは「点数が伸びない論文答案6選(前編)」。

司法試験において合否を決するのは論文試験である。また、予備試験においては、短答試験と独立して論文試験が存在する。そのため、論文試験は法曹資格を得るにあたって一番の関門となる。

そこで今回と次回のnoteは、点数が伸びない答案を把握し、それを回避することによって良い評価を得ることを目的としたい。なお、司法試験を念頭において記載しているが、ほとんどは予備試験でも共通する内容である。


点数が伸びない答案①:途中答案

前提として、途中答案は点数が伸びないことは言うまでもない。書けなかった部分に振られていた得点をごっそり失うだけでなく、時間の管理ができない受験者として採点官の心証も悪い(実務において準備書面が指定の期日までに間に合わなかった、は通用しない)。

それでは、途中答案を避けるためにはどうすればよいか。最も重要な方法は時間配分である。

私がおすすめする時間配分は、「検討:30分、回答:90分」である。刑法のように回答が長くなる科目では検討を20分に短縮したり、民事訴訟法のように書く量よりも深い検討が求められている科目では検討を40分に延長したりすることは考えられる。また、手書きでなくタイピングでの回答が可能になる2026年の試験からは、より検討に時間を使えるであろう。

過去問を解く練習の段階で、「検討:30分、回答:90分」を守り、たとえ最後の問まで検討が終わっていなくても答案を書き始める練習をしておきたい。本番でも同様の動きができるようになり、途中答案を回避できるようになる。

点数が伸びない答案②:条文を指摘していない答案

次に、条文を指摘していない答案も点数は伸びない。おそらく条文の指摘にも点数は振られているであろうから、無駄な失点は避けたいものである。なお、条文の指摘の欠如は、実務に出てからもパートナー弁護士からよく指摘を受ける点であるし、自分も後輩弁護士によく指摘する点である。

条文を指摘しない答案は、「この人は問題の所在を正しく把握できているのだろうか」と採点者に疑念を抱かせて心証を悪くするだけでなく、必然的に説得力も弱くなる。

例えば、刑事訴訟法において逮捕状がない身体拘束が問題となるのは、当該拘束が「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)にあたれば法令に定めがない限りすることができない(→違法)と法律上規定されているからである。

この問題の所在を指摘せずに、単に当該拘束が強制処分か否かの検討を始める答案は、何のためにその検討をするかが読み手に伝わらない(そういう論点があることを何となく知っているから論じているだけのように思われてしまう)。法曹を目指すものとして、検討は全て条文の文言解釈から始めたい。

なお、条文を指摘する際、法令名を常に挙げるべきかという形式面に悩む人も少なくないと思われる。この点については、初出箇所において「「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書。以下「刑事訴訟法」省略)」等と省略することを記載しておけば、その後で当該法令名を省略することは許される。

点数が伸びない答案③:論理が一貫していない答案

論理の一貫性については採点実感等で頻繁に指摘されている内容である。よくある指摘は、自分が立てた規範を使わずにあてはめをしている、というものである。例えば、極端な例を挙げれば、憲法で「(ある法令について)目的が正当で、手段が合理的であれば合憲」という基準を採用したにもかかわらず、目的の検討も手段の検討も行わない答案である(この場合「表現の自由という重大な人権を侵害するから違憲」と急にあてはめや結論が雑になっていることが多い)。

このような答案が散見される理由は、過去問等の練習不足である。「目的が正当、手段が合理的」という規範があることを知っていても、実際にその規範を使った練習を繰り返さない限り、本番で使うことはできないであろう。

上記は極端な例であるため「自分はそんなことはしない」と思った読者も多かったと思うが、次の例はどうだろう。「(ある法令について)目的と手段が必要不可欠であれば違憲」という基準を立てた上で、当該法令の目的について検討した上で、手段についても検討する答案である。目的と手段について検討しており、一見すると論理が一貫しているように思えるが、実はこれも評価は低くなる。

「必要不可欠」とは、文字通り、「不可欠」なものを指す。すなわち、より侵害の程度が低い他の方法により目的が達成できるのであれば、もはや当該法令の手段は「不可欠」ではなくなる。そのため、「必要不可欠」という基準を立てた場合の主な検討対象は、「当該法令の手段」ではなく「より侵害の程度が低い他の手段によって目的の達成が可能か」という代替手段の有無となる。

他方で、最初に挙げた例のように、「(ある法令について)目的が正当で、手段が合理的であれば合憲」という基準を立てた場合は、代替手段の検討対象をしてはならない。ここで問題となるのは「その手段が合理的か」であり、代替手段の有無があってもある法令の合憲・違憲の判断に影響は生じないからである。

このように、無意識のうちに、自分の立てた基準とあてはめが合致していないことはよくある。過去問を解く練習段階から、基準とあてはめが不一致となっていないか自分の回答を批判的に検討しておきたい。

終わりに

重要なのは、今回挙げた答案の逆、すなわち「最後まで書ききった」「条文を指摘した」「論理が一貫した」答案である。このレベルの答案に到達できるよう、意識的に過去問等に取り組んでいただきたい。また、後編においても点数が伸びない答案を把握し、自分の答案を磨いていってほしい。


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