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【司法試験/予備試験】独学攻略法⑥~最難関「民事訴訟法」を攻略する

「学ぶって、楽しすぎる。」-弁護士の岩瀬雄飛です。

本noteでは学ぶことの面白さや学習のノウハウ等を発信するとともに、自分が学んだことの記録を発信しています。

今日のテーマは「民事訴訟法の勉強法(初学者)」。

前回までのnoteでは、刑法、刑事訴訟法、民法、憲法、会社法の順に独学での勉強法を紹介した(前回会社法のnoteは以下参照。その他の科目についても会社法からアクセス可能)。

今回は「六法」のうち、最後の科目である民事訴訟法である。多くの受験生が苦手としており、また、民事訴訟法が好きという人もあまり聞かない。この最難関である民事訴訟法について今回は勉強法を紹介したい。


(1)短答は予備試験受験生のみ対策する

民事訴訟法は、短答試験と(特に司法試験の)論文試験は全く別物と考えてよい。他の科目では短答の知識が少なからず論文に活きることもあるが、民事訴訟法の短答の学習はほとんど論文の学習には役立たない。民事訴訟法においては、短答は知識、論文は理解と完全に割り切って出題されているからである。

そのため、他の科目では私は「①基本書を読む→②短答の問題を解く→③基本書を読み直す」というプロセスを推奨しているが、民事訴訟法においては、短答の学習については知識の吸収と割り切って②だけをすることでもよいと考える。教材については、私は他の科目同様Wセミナーの問題集を使用していたが、好きな出版社・予備校のもの、また、択一でも肢別でも好きなものを選べばよい。

ただし、手元に六法は置いて、条文は参照するようにしたい。冒頭のとおり、民事訴訟法の短答は知識の有無を解いてくるため、単純な条文知識で点数を稼げることも少なくない。条文問題を落とさないためにも、問題を解いた後、条文を確認できるように手元に六法を置いて勉強することをお勧めする。

(2)論文は『LEGAL QUEST』を熟読する

司法試験の民事訴訟法は他の科目とは違った問われ方をされることが多い。ある判例や裁判例(※判例とは最高裁判決のこと、裁判例は下級審判決のことである)が示され、その限界や問題点、差異等を分析し、問題文の登場人物(新人弁護士や司法修習生であることが多い)が直面している事件の訴訟方針を考える、といったものである。

この問題の傾向からすると、判例をただ知っているだけでは足りず、その限界や問題点を把握・分析しておくことも求められる。この際、『LEGAL QUEST』は非常に有益である。この後紹介する内容は、民事訴訟法の内容それ自体ではなく、『LEGAL QUEST』の使い方という視点で読み進めてほしい。

例えば、平成27年司法試験では「相殺の抗弁の取扱い」が出題されており、『LEGAL QUEST』中の「最判平成18・4・14(※本訴及び反訴が係属中に、反訴請求債権を自働債権とし、本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは許されるとした事例)は、予備的反訴であれば弁論の分離ができないことなども考慮されているのだろう」の記述がまさに回答のキーポイントだった。

また、平成20年司法試験では「主体的追加的併合の適法性」が出題されており、やはり『LEGAL QUEST』の「被告側で訴訟共同の必要がある場合において、欠けている被告を追加するために主体的追加的併合を用いることの適法性については異なる解釈をする余地がある。この場合も、判例(※最判昭和62・7・17。通常共同訴訟が成立する場合について主体的追加的併合を認めない旨判事した事例)が提示する上記①②③の理由は妥当するものの、主体的追加的併合を許さないとした場合、訴えは不適法になるため、原告にとって酷に過ぎると考えることができるからである。」の記述がまさに回答のキーポイントだった。

まだまだ出題される可能性のある記述は『LEGAL QUEST』には少なくない。特に『LEGAL QUEST』のコラムである「すこし詳しく」は要注意である。東大受験の日本史においては「山川出版の注記から出題される」という説があるが、司法試験の民事訴訟法においては『LEGAL QUEST』の「すこし詳しく」がそれにあたる。

判例分析はまさに実務家よりも教授の専門分野である。そのため、予備校を利用する人にとっても、民事訴訟法については予備校テキストのみならず基本書(私のお勧めは上記のとおり『LEGAL QUEST』)を使用することをお勧めする。

なお、予備試験ではここまで分析力は求められないが、同様の勉強をしていればお釣りがくる。予備試験用に勉強するよりは、多少時間がかかっても司法試験を見据えた勉強を行う方が結果的には効率的な勉強になる。

(3)判例百選も重要

(2)が長くなってしまったので見出しを分けたが、判例の限界や問題点の学習が重要である以上、判例百選を使用した学習も非常に重要になる。判例ごとに解説者が異なるため玉石混合であることは否めないが「解説」に書かれている内容から、判例の限界、問題点、根拠等を学習することができる。

これから過去問を解く読者のためにこれ以上の内容の言及は避けるが、以下のとおり、私が受験する平成28年司法試験から過去5年分を遡って見ても、判例百選に掲載されている判例が多く題材となっており、これらの解説を読んで理解を深めていた受験者は非常に有利であったと思われる。
平成23年→最判昭和43・3・15、最判平成12・7・7 等
平成24年→最判平成14・1・22 等
平成25年→最判昭和51・9・30、最判昭和37・8・10、最判平成10・6・12 等
平成26年→最判昭和42・7・18、最判昭和45・12・15、最判昭和38・2・21 等
平成27年→最判平成3・12・17、最判平成10・6・30、最判平成18・4・14 等

もちろん民事訴訟法自体が難解であるため、『LEGAL QUEST』にせよ『判例百選』にせよ、理解するには根気と体力が必要になる。しかし、これに要したエネルギーの対価は十分なものとして返ってくることを保証する。

終わりに

民事訴訟法の学習を終えれば「六法」を制覇したことになる。学習を始めた頃とは段違いの知識と理解力が身についているはずである。このまま勉強を進めていれば司法試験・予備試験に合格できそうと自分を鼓舞しつつ、次の行政法の学習につなげていただきたい。

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自分が受験した平成28年年司法試験の全科目の再現答案を公開しています。
本note投稿日現在、憲法と刑事訴訟法は解説付きです(他の科目についても今後追加予定)。
論述の流れや事実評価の学習、合格答案のレベルの確認にお役立ていただければと思います。

・民法以外→415円 ※すべてA評価
(タリーズ水出しアイスコーヒー代にさせていただきます。)
・民法→250円  ※民法は評価がBであるため他科目よりも廉価です
(ドトールアイスコーヒー代にさせていただきます。)

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