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五條の町を歩く

昔のバイク時代も、それからこの4,5年前にわけありでちょこちょこ五條に通ってた時もそうだった、街の裏通りに入って行きたいなぁと思いながら、その余裕がなくて、やっとゆっくりあちこち見て歩くことができた。
いつものように橿原へ野菜の買い出しに走って、時間があったから、最近歩いた五新線の残り、つまり五條の市街地部分を探索しようと五條に行ったのだ。
雨は降ってはなかったけど天気がイマイチで、コーヒーとかの用意もせずに行ったから、牧野の直売所でいつものビルケのサンドイッチを買って、吉野川にかかるR168の橋の下の駐車場に車を駐めた。コーヒーもなくサンドイッチだけをぱくついて歩き出した。
歩き始めてすぐに、ん?ここって、いわゆる昭和という感じの喫茶店があって、シャカシャカと表の写真を撮って、そうだ、ここでコーヒー飲んで行けばいいんだと入っていった。
客はボクより少し上くらいのおっちゃんだけで、ママとおっちゃんが話しかけてくる。五新線を歩いてんだって、ひとしきり五新線の話になった。あ、そうそう、井戸水で沸かしてる風呂屋はどこにあるん?と聞いたら、その喫茶店のママと風呂屋のかあさんは仲いいらしくて
「あんたタオル持ってるのか」って
風呂なら一度帰ってからでいいやと出たものだから、いつもの温泉行きのお風呂セットも持ってなくて、その銭湯に行くのなら、そこらのコンビニでタオルを買おうと考えがてた。
「ちょっと待ちや。もろたタオルようけあるからあげるわ」って。

そうして、タオルポケットに突っ込んで、3時間ほど歩きがてら写真を撮りまくった。五新線を追いかけて五條にやってきたけれど、五條って町は特に北側は吉野川の河岸段丘に成り立っていて、JRの五条の駅(なぜか市は五條だが、駅名は五条)は段丘の上にある。つまりは坂道が多くて、坂の多いところはおもしろいという定説通りにおもしろい。五新線を追いかけているのに、ついついちょこちょこ脇道にそれたりでなかなか前に進まない。そんなわけで、ようやっと和歌山線との分岐を発見したときには1時間かかっていた。
五新線の話はおいといて、やっとこさ、五條病院の前のコンビニ裏の土堤に到着。ここから先は先日から歩いたので、とりあえずは第一の目的は達成したので、R168を跨ぐ遺構のところから引きかえしていく。
いつも十津川のほうから戻ってきてコンビニで休憩するのだが、その前がȲ字になっている。前から右へ行くとどうなってんだろうと気になってはいたが入って行ったことはなかった。歩き進むと古い町並みにちょこちょこ店舗がある。半分くらいはもうすでに閉めてしまっているのだが。そうした町並みが小さな丘を越えて続く。と、あのマネキンのある洋品店の角でR168に戻った。なるほど、この道がかつての街道、国道だったのだろうと想像する。
R24を北側に越え、先にも書いた河岸段丘の坂を上がっていく。このあたり道がくねり、自分的にはかなり興味深い。上がりきったところが、かつての五條のメインストリートなのだろう。右に進むと五条駅。そして左に進むと目指す栄湯がある。ほどなく古びた煙突が見えた。あそこだなと歩くと、あれ?消えた? 通り過ぎてしまっていた。注意深く戻っていくと通りから少し奥まったところに風呂屋の暖簾が見えた。

を〜を〜っ。
番台におかあさんが座っている。ポーチひとつだけぶら下げたボクを見て、タオルは?と聞く。タオルは、なんだっけ橋の近くのかあさんにもらった、ほれ、とポケットからタオルを取り出した。あぁアスモね、あそこのママは友だちなんだよ、私がひとつ下なのと。
石鹸は? ちょっと待ってやと、ごそごそ何やら入ってるところから小さな石鹸を取り出してくれた。シャンプーは? いや、さらっと入るだけのつもりだったのにと思っていると、番台から下りてきて、忘れ物のシャンプーがあるからと、またシャンプーも取り出してきてくれたのだ。
うちの湯は熱いよ。熱かったら水をうめりゃいいから、井戸水だからそのまま飲めるよ。
2m四方の湯船が2つ、重なるようにある。手前は浅く、奥が深い。その向こうに泡ぶくの浴槽がある。深い方に身体を沈めるとちょい熱めの湯が歩いてきた足にじんじんしみた。
あぁ、きょうもいい日だった。

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