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pressed flower

どうしてなんだろうね
朝、目覚めのとき
まだきみの恋人でいるような
幸せな気分に包まれるんだ
毎日のように

一瞬ののちに理解する
あの日々は去ってしまったんだと
そして髪をめちゃくちゃにするんだ
きみがその手で撫ぜてくれた髪を

いくつかの恋はしたよ
でもどれも簡単に弾けて消えた
わかってるんだ
きみに似た声
きみに似た仕草
探してしまってる 
今でも きみを

白い壁の
飾り気のない一人の部屋に
カツカツと時計の音が響く
きみとの風景には
刻まれていなかった音

世界一幸せな恋をして
それを失ってしまった
心の空洞を
埋めてくれるものが見つからない

あてもなく漂う心
やけになり、ため息をつき、可笑しくなって
さまよい行き場を探してる
出会わなければ良かったと
何度も思うたび
きみがくれた幸せは
かけがえのない宝石になって
まだ輝き続けてると気づく

もう会えはしないけど
やっぱりきみが愛しいよ
無理やりに終わらせた恋が
シルクのようにしっとりと
今も心にからみついてる

捨ててしまった
きみからの手紙
もう煙になって
空へ飛んで行っただろう
すべてがぼくを置き去りにして
行ってしまう
手の届かぬ場所へ

今度の世界では
ぼくは花になって きみに摘まれたい
きみの部屋を飾って香って
やがて厚い本に挟まれて
押し花になってきみを待つ
いつ開かれるかはわからないページで
きみに忘れられてしまっても
いつか
光さす日を夢見て
待つんだ
きみの好きな花になって 

きみの好きな
花になって


ERICA

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