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駆逐艦の戦い方(The Uboat Hunter攻略法)

実際に使われていた方法や話を資料からまとめます。
駆逐艦と書いてますが、護送駆逐艦・フリゲート艦・コルベット艦・スプール艦も同じです。

実際のゲームでも十分に使えます(というか私もゲームの攻略方法で自力で考え出したら、調べてみると実際に使われていたんですが)。

まず敵を知る事が大事ですから、潜水艦の戦い方を知りましょう。

<潜水艦視点 ①Uボート:ドイツ>
「潜航中の駆逐艦からの逃げ出し方」戦術はこの本などを熟読すれば書いてありますね。

Uボートは商船を狙い、駆逐艦を攻撃することを禁じられていました。
“効果“が少ないからです。
その一方で、駆逐艦を葬ると赤旗(商船は白旗)を挙げて帰港して
ますから良く分かりません。

1941年までは、まだ駆逐艦側の水上レーダーがイマイチでした。
通常、Uボートが船団に攻撃を仕掛けるのは夜間水上攻撃でしたから、
見つかった場合もやはり水上を走って逃げます!
 1:潜るよりも水上の方が速い。
 2:潜水艦のシルエットは小さいので、見つからない。
 3:潜ったら、必ず追いつかれる。
ギュンター・プリーン、ヨアヒム・シェプケ、オットー・クレッチマーは皆、潜水して逃げたから捕まったと聞いています。

※初期の駆逐艦側の戦術(これは商船でも同じ)は
 「全力で船首で衝突」
 です。当然、船の側も傷つきますが浮力の問題で、何とかなります。
 潜水艦側は衝突されるのを最も嫌います。

それでも捕まったら、とにかく潜ります。
当時は爆雷スイッチは100m程度でした。
Uボートがそこまで潜航できるとは分かっていなかったからです。

更に攻撃する側の駆逐艦の任務はあくまでも船団を護送することが
主任務で幾ら確実にUボートを探知しても戻らなければなりませんでした。
Uボートはしばらく逃げていれば、なんとかなりました。

1943年頃を境に、Uボートは狩られる側に回ります。
そもそもUボートは船団に近寄れません。
夜間水上攻撃はおろか、潜航していても潜望鏡やシュノーケルをcm波長の
レーダーで探知されるのです。
夜間でもリーライトで照らされ短い通信を打つとハフダフで位置を探知され
潜航していても磁気反応で探知され、FATやLUTなど特殊な自動走航をする魚雷を遠くから撃つのが精一杯です。
絶えず上空には航空機が飛び回り(誤送空母が随伴してます)、
最も脆弱な浮上中のUボートを機銃掃射します。
(外殻に傷がつけば致命傷なので、これだけでも効果は高いです)
全ての通信は傍受されイギリスのトラッキングルームでは全潜水艦の位置が
数日ごとに更新されていました。
ドイツのUボート艦隊司令室と同じレベルで。

<潜水艦視点 ②イギリス潜水艦>
主にイギリス潜水艦が活躍したのは地中海のU級潜水艦でしょうか。
狙いはロンメル北アフリカ軍団の補給線の剪断。
敵対する相手はイタリアの駆潜艇や魚雷艇です。
対潜技術は連合軍ほど優れていませんが、地中海の潜水艦にとっての最大の敵は澄んだ水面です。風が強い日に出撃するのが理想です。
無風状態では潜望鏡を上げる回数さえも最小限にして、油をひく様なトラブルは致命傷になります。

<潜水艦視点 ③アメリカ潜水艦>
3隻程度でウルフパックを組み、
SJレーダーと夜間水上走航で日本船団を追跡。
互いに無線を発して(バレようが関係が無い)
船団を餌食にしていきました。
タンカー、輸送船を攻撃し尽くして、最後は駆逐艦狩りすらも始まります。
日本護送船団は駆逐艦など着いておらず、足の遅い海防艦が数隻もしくは護送ゼロが当たり前でした。
アメリカ潜水艦は駆逐艦を狩るのに「スロート・アタック」を
生み出します。
 ①浅深度の潜望鏡で駆逐艦を見つけます。
 ②発見されても構いません、日本駆逐艦は真っ直ぐに向かってきます。
 ③潜水艦も駆逐艦に向かいますが、数10度は斜角をつけた方が良いです。
  魚雷の吃水設定は浅目にして、500mを切る前に魚雷を撃ち込みます。
  タイミング的に駆逐艦はまず逃げられないので、不発でさえなければ
  ほぼ確実に仕留める事が出来ます。


初期のゲーム「Silent Hunter」のマニュアルには載ってました。
「変温層」を利用するというのもある様ですね。
水温が変わる層というのが海中にはあって、そこを超えて沈めばソナー音は反射されてしまうのです。しかし、この事が書いてある資料が意外な程に少なくてどうなんでしょうね。確か、「トムクランシーの原潜解剖」で読んだ記憶がありますが曖昧。
ジブラルタル海峡は地中海に入る水と出る水の2層になってる話も読んだ事がありますが、これも小学生の学研の本でしたからね。。。
後は浅瀬で海底がボコボコしてるとソナーが乱反射するとか。
ソナーも初期の頃は方向は分かっても深度が分かりません。


当時のソナー技術についての本があります。
持っているんですが、そういえば中身を覚えていません。。。
久し振りに見ましたが回路図やハードウェアの説明。
おそらくはパッシブソナーだと思いますが参考に。

爆雷についても専門書があります。

機雷の掃海はこれを。


<駆逐艦視点 イギリス軍、カナダ軍、アメリカ軍>
開戦当初は戦っているのイギリス軍のみで、
艦数も少なくソナーも不十分です。
じきにカナダ軍とアメリカ軍が参加する様になると、1943年以降は護送船団をぐるりと取り囲める様になり、しかも護送線の護衛とは独立してUボート狩を行えるハンター・キラー部隊が設立されます。

武器は当初は爆雷だけでした。(第一次世界大戦では爆雷すら無し)
爆雷には以下の欠点があります。
 1)設定深度に達して爆発するので、深度が合わないとならない。
  ※当時のソナーは深度まで正確に測定できませんでした。
 2)艦尾から落とすので、すぐに逃げないと自艦尾がやられる。
 3)沈下速度が遅いので、その間にUボートに逃げられてしまう。
 4)爆雷が爆発すると海中が乱れるので、ソナーが使えなくなる。
ソナーには以下の欠点があります。
 1)自艦の移動速度が速いと、自らのノイズで効かなくなる。
 2)アクティブソナーは反射波を拾うので、
   パッシブソナーで拾える到達距離はずっと長い。

この欠点を賄うのがヘッジフォッグとスキッドです。
 ヘッジフォッグは
  ・艦首前方にハート型で複数のヘッジフォッグを撃ち込みます。
  ・ヘッジフォッグは沈下速度の速い接触型爆弾です。
  ・一発も触接しないと、爆発しないのでソナー画面を乱しません。
 スキッドは
  ・爆雷の沈下速度を速くした改良型です。
  ・U333のペーター・クレーマーは
   スキッドのことを「我々を潰す拳」と表現してました。
 このヘッジフォッグを武器に4隻ほどの駆逐艦でチームを組み、
 1隻がソナー担当に徹する事で3隻がUボートを常に追い込む事が
 出来ます。
 この戦法を「クリーピング・アタック」と言います。

最近翻訳が新訳になった「駆逐艦キーリング」や古典「非情の海」は、
チームは組んでいるものの有効なクリーピング・アタックはまだ行っていなかったと思います。
彼らは「ハンター・キラー」ではありませんでしたから。

最後に、潜水艦は3次元を使って逃げられますが、駆逐艦の方が必ず速度は勝ちます。そこで発展したのが「捜索理論」です。


<第一次世界大戦と第二次世界大戦末期>
この頃、潜水艦が荒し回ったのは地中海です。
駆逐艦側には爆雷も無し、ソナーも無し。
その代わりに潜水艦側もほぼ潜れず、魚雷も貧弱です。

そこで潜水艦は浮上して砲を撃って、爆弾を仕掛ける。
駆逐艦にはパラベーンという機器を曳航して潜水艦を
引っ掛けようとしました。

このパラベーン、第二次世界大戦では駆逐艦が音響魚雷を避けるために
音の出るフォクサーなるものを引っ張っていました。
そこで音響魚雷は一度音源を探知すると接近したらマイクを一度切って
再度入れ直すという戦いを。。。 本当に人間は不毛ですね。


<現代>
この駆逐艦の戦い方を、数学的に突き詰めると現代ではこうなります。
潜水艦vs潜水艦、対潜ヘリvs潜水艦など、全てに適用可能です。


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