見出し画像

Uボート艦内の組織学

まずはこれを熟読。もちろん、他の資料も併せ読み。

Uボートは特殊な世界であり、多くの軍規が“緩い“。
 ・酷い時期は、死傷率は80%くらい。
 ・軍服を着なくてもいい。
   2ヶ月も風呂にも入れず髭も剃れない。下着もそのまま。
   軍服は出港時と、無事に帰れた時の帰港時のみ。
 ・艦内では銃を持たない。
   艦長が管理する金庫、ロッカーに入っている。
 ・帰港すると“羽目“を外せる。
   水上艦でも似ているけど、必要な兵は憲兵から強引に取り戻す。
 ・ナチス的敬礼をしない。
 →乗組員は自らの仕事に誇りを持ち、
  周りは彼らを畏怖し、
  一般の兵士と異なることを自認している。
  これは“賤民”の特徴に極めて近い。

艦内では、(VII型の場合)
 ①前方:魚雷発射室
 ②中央:管制室
 ③後方:厨房+電動機+ディーゼルエンジン
に別れて、この中でも「セクト」が細かく存在する。
①にいるのは兵と掌帆長(いわゆる鬼軍曹)。
 任務は魚雷点検、見張り。3K職場。
②艦長、機関長、先任、副長、操舵長、電信+聴音兵(下士官)、舵手(兵)
③コック、電動機の軍曹、エンジンの軍曹、兵

面白いのはここからである。
ランクは艦長→機関長→先任→副長→少尉(候補生)→各兵科の軍曹→兵。
○艦長は海上勤務が長くなり優秀な場合は、幕僚にスカウトされる。
 幕僚は地上勤務で作戦担当となる。
 U99のオットー・クレッチマーは幕僚を断って、海へ出続けた。
○機関長はハードウェア全般及び潜航中の航行について全責任を持つ。
 艦長にはなれない。
○先任は次に別の艦で艦長になる候補だ。
 官僚というべきか。その艦の生え抜きでない事が多いであろう。
 (副長も含めてここは要調査)
○少尉は正確には少尉候補生。
 何にも知らないど素人。実質的には最も下の扱い。
 しかし、艦長になれる可能性があるのはこの“若造”なのである。
○掌帆長は鬼軍曹で、魚雷長とも呼ぶ。若い兵をまとめあげる。
 本来、下士官は下士官室で眠れるのだが
 彼は敢えて、むさ苦しい魚雷発射室で過ごす。
○操舵長は航海に関する測量・海図・港での運転などに全責任を持つ。
 技術職だが艦長にはなれない。
 幕僚で少なくとも1名以上は操舵長出身が居る。
○聴音兵、電信兵は下士官が担当する。電子機器を扱うので
 他の兵科とは一線を画している。
○兵は魚雷・舵手・電動機・ディーゼル・見張りを担当する。
 魚雷整備は常時ではないので皆がやるだろう。
 舵手も交代制だろう。
 見張り⇄電動機・エンジンは担当が違うらしく、
 機関室と居室である魚雷発射室を行き来するだけで、
 一度も太陽を見る事が無い。
 ずっと機関室でディーゼルエンジンの騒音の中で温度計を見張り
 油を足していくのだ。彼らの心情はどのようなものだろうか。
○コックは、ドイツUボートでは専門職。
 ある日突然決められた素人ではなく経験者がなり、
 対照的にアメリカ潜水艦では黒人兵がいきなり充てられる事が。
 勿論、オール電化!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?