禍話 第一夜(1) こっくりさんに訊いてはいけない話


こっくりさんとかどうでした?してましたか?

うちはね、まぁちょっと年齢ばれるんですけど81年生まれなので、
ギリギリね「しちゃいけません」とかって全校集会でやっていましてね。

まじめな女の子の優等生グループが実際にしちゃってね。
鉛筆で手の甲をぶっさしちゃった、みたいな。
シャーペンですかね、使い始めの。
その子とは僕は全然仲良くないんで知らないんですけど、まぁ同窓会で会った奴とかに聞いたら
いまだに手の甲がほら、芯っていうか、アレが残ってるんですって。
すげえぶっさしちゃったから…。

ね、ほらまぁ名前が違ってエンジェルさんとか、いろんな言い方がありますけど、結局同じじゃねぇかっていう。
結構ね、こっくりさんの話ってありますよね。

♦♦♦

あ、そうそう。これはまあ話すメインの話じゃないんですけど。
そうね。
まぁ…こっくりさんには訊いちゃいけない話があるっていう話なんですがね。

あのー、こっくりさんにですね、
「人が死ぬ時期を訊いてはいけない」というローカルルールがございます。

これを破るとどうなってしまうのか。ということなんですが。

小学生ぐらいの時に、これは知り合いの女の子の話なんですけど。

こっくりさんしてたんですって。
そしたら、小学生くらいでしょ?訊くことないんですって。
でもこっくりさん…せっかく呼んだんだし…みたいな、よくわかんない【こっくりさん持て余し】みたいな。
で、どうしたかっていうと。

確か母方だったと思うんですけど、
母方のおばあちゃんのことが嫌いだったらしいんですよ。わりと。

結構なんか…お小遣いとかも何故か自分だけくれなかったり。兄弟の中で。
なんかこう…言葉がちょっと冷たいなみたいな。自分だけ。
理由はもうわかんないらしいんですけどね。

で、おばあちゃんが入院してたんですよ。
ちょっと申し訳ないけど、危ないかもしんないとか言われながら、また復活してみたいな。
結構老人って体調の変動がすごいから。
そういえばおばあちゃん今入院してるから…ってそのおばあちゃんのフルネーム言って、
「●●さんはいつ頃死ぬんですか?」
って聞いたら。

それまではなんかもうとりあえず動いていたらしいんですよ、はい/いいえとか適当にでも、その、なに『て・を・は・む』とか全然違う感じでも、とにかく動いてたらしいんですけど、
ピタッと止まって。
「あれ?動かない」みたいな。
「ん?なんだ?」と思ったら急にこう…ツーっと10円が動いて、

『いいえ』

に止まるんですって。

ん?ん?ん?ちょ、え、答えになってないぞ?って。
これは…【死なない】…?みたいな。
おばあちゃん死なない?みたいになって、ちょっと誰かが「おばあちゃん死なないの?」みたいになって。
いやいやいやもう一回訊いてみようと。

「●●さんは、いつ頃亡くなるんですか?」
『いいえ』

もうすごい速く『いいえ』に行くんですって。

え、え、何何何何これって。

もうそこからは何訊いても
『いいえ』
『いいえ』
『いいえ』
なんですって。

え、こわいと思って。

「もうお帰りください」
『いいえ』

みたいな。

もう怖いなと思ったから、なんかね、そういうのはローカルルールで、
『いいえ』ってこっくりさんが帰るのを拒否しても、なんとかなるルールがあったんで、それで終わらせたんですって。

で、そんなこと忘れてて、
まぁちょっと…おばあちゃんがわりと危篤やでってことになって、もう病院に…これはもう明日をも知れんってことで行ったんですって。

そしたら、まぁもう自分はほら…孫とかだから近寄れないじゃないですか。
で、「お母さん!お母さん!」とか言ってんの。みんなが。
うーん…と思って見てたら、
なんか、おばあちゃん、手ェぎゅーーーーーーって握りしめてるんですって。右手を。
まぁ苦しいから、最後のアレなのかななんて思いながら、子供ながらに、うわー結構人が死ぬところってなんか残酷だな…なんて思いながら見てて。
まぁ結局ダメでそのまま亡くなったんです。
そしたらそのグーッと握っていた手が弛緩してくる。緩んでくるでしょ。

10円玉、落ちてきたんですって…。

うわっ…!ってなって、
「でもおばあちゃん、なんで10円玉なんか…」って話になって。皆はわかんないから。
家族は「えー?」って言ってたんだけど、彼女だけはゾーーーっとしたそうですよ。

だからそういうの…こっくりさんはそういうの訊いちゃいけない…。


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