禍話 第一夜(2)霊能者に相談したら

あのー、霊能者に相談するのは良くないって話なんですよ。
あの…会社の方に伺った話なんですけど。

昔、ご家庭で、なーんかこう調子悪いことが続いたそうなんです。
なんか、お父さんが『風邪かな?』と思ったら肺炎だったとか。
なんか妹さんが『ホクロかな?』と思ったら、まぁ皮膚がんじゃないけど、皮膚のちょっと…切り取らなきゃいけないようなホクロだったとか。悪性の奴でとか。
で、おばあちゃんが転んだくらいなのに、なんかちょっとヒビ入っちゃって長期入院とか。

でなんか、「ツイてないなーなんでだろうなー…お祓いでも行こうかな?」って冗談で社内で言ったらしいんですよ。
言ってたら、同僚のOLさんが
「あ、部長。あの、私知り合いに霊能者がいるんですけど紹介しましょうか?」
って言われて。
『え…あ、この子、そういう子だったんだ…』って思いながらも、
タダだっていうんで、「あーじゃあお願いしようかな」っていうんで、
なんか喫茶店でね、会社の近くの。昼休みに会ってみたんですって。

そしたら、どこにでもいそうなおっさんが入ってきて。私服のおっさんが。
なんか【お父さんの日曜日】みたいな恰好の人が入ってきて、あの、
「あ、どーもどーも」なんて言って。
「ちょっと見てみましょう」なんて言って。
「ふんふん…ふんふん…」なんてなんか目を瞑ってふんふんふんふんて頷いてるんでるんですって。
あ、すごいなーなんて。わかるんだーみたいな。

で、見てたら、
ちょっと、なんかその、紙かなんかにサーっとこう…ボールペンか何かで見取り図を描くんですよ。
で、
「あなたの家のね、ここが玄関だと思うんですけど、…で、ここから…」

なんかその、要はなんか…風水的なことを言って、方角がどうとか言って今説明し始めたんですけど。

ですけど。

その間取りが。
ぜんっぜん違うんですって。

家の間取りが。
うん。違うんですよ。

で、あのー
(うわ…違うな…)なんて。

多分お父さんが思うに、
「うわ、間取りが完璧だー!説明してないのに!すごい!」みたいな流れでこう…聞いてくような状況なんですけど、
違うんですよ。間取りが。全く。
まぁ同じ一軒家なんですけど。

(うわ間取り違うな…)なんて思いながら見てたけど、
でもまぁ相手のね、男性はすごく親身にこう…
「ここがね、良くないからね…ただこれがね、そのもう、家がもう、そういう風にできちゃってるからしょうがないんで。
 ちょっとまぁ…私がね、私の力をちょっとお貸しして…」
とか、その場でなんか、なんか数珠とかを握ってなんかブツブツ言ってるんですって。

無料でここまでやってくれてるんだしね、ここで『違う』っていうのもおかしいなと思ったから、
ずっと「あ、じゃあ…はい」なんて神妙な顔でこう、聞いてたら、
15分くらいなんかずっとムニャムニャムニャムニャ言った後に

「はい!これでもう大丈夫だと思います!」

みたいな。

あとはなんかその、なんかね、「サボテンを飼え」ってしきりに言われたらしい。
「サボテンを飼ってください」みたいな。
へー…みたいな。

まぁまぁまぁまぁ。
「わかりました、ありがとうございます」
「いえいえいえ…」
つって帰っちゃって。

で、会社に戻って、
「どうでしたー?」
ってOLさんに。

「あー、まぁまぁまぁいい先生で…なんか…ねぇ…」
「そうでしょう?すごいでしょ?間取りパーって描いちゃうでしょ?当たってたでしょ?」
って言うから、
まぁその彼女にも『全然違ったよ』とは言えないでしょ。
だから、
「あー…うんうんうん…」
なんて適当にお茶濁してたんですって。

それから。

でも、偉いもんで、そのツキが戻ったというか、不幸の連鎖は断ち切れたんですよ。
それどころか、なんかその…ちょっとなんていうか、
ほんとちょっと漫画みたいな話なんですけど、
商店街でなんかあの、クジやってるから引いてみたらちょっと良いの出る。みたいな。
ちょっと良いテレビが出たみたいなので、良い事ずくめだったというか。それからしばらく。

(なんだ。あの霊能者さん、なんか間違ってたけど、そのなんかムニャムニャ言ってた呪文?とかああいうのは正しかったのかな?

なんて思って。

相談してよかった話だ、なんて思ってたら。

それから一ヶ月経たない内に、そのOLさんから
「あの霊能者さん、亡くなっちゃったんです。急に」
って。

「えっ!そうなの?!」
「なんか急な病気で、もう見つかった時は手遅れみたいな…」

働き盛りで、ねぇ…なんて話をしていて、『実は今日お通夜なんですよ』って言うから。
なんか一応、恩人は恩人じゃないですか。
「じゃあ今日特にこの後用事もないし…ちょっと俺もお通夜だけでも顔出そうかな」って。

まぁ初めてその霊能者の家に行ったら、

その間取りだったそうです。

その霊能者の家の間取りが。

『えっ…?!』ってお父さん、なったそうです。

全然わかんないんです、それ。
全然わかんないんです。

だからその、なんで「あなたの家はこうでしょ?」ってやった時に自分の家の間取りを描いたのかもわかんないし。

で、なんかきいてみると本当にガリッガリで。棺の中のご遺体の顔見たら。
え、これなんでこんな、一ヶ月でこうなるかね…って感じになってて。

ひょっとしたらなんですけど、
その時もうなんかとり憑かれているっていうか…ヤバい状況だったのかもしれないですよね。
錯乱してる状況だったのかもしれないですよね。

ただその…家の不幸が断ち切れたのは本当なんですよ。

でも…怖いですよね(笑)
そういう話がね、ありました。はい。

だから、あんまり霊能者に相談するのは良くない(笑)

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